ロバート・ケネディ・ジュニアが出馬表明

野口 修司

「おお、この新情報には驚きました。自分は少し“ドモリ”を抱えているが、ゆっくりお会いして話を聞かせて下さい」と、ロバート・ケネディ・ジュニア(RFKJr.) は、筆者に明るく闊達な声をかけた。

立て板に水。30分近く、私が一方的に話し続けた直後だった。それからしばらくして、私は彼のビバリーヒルズの豪邸に数回通った。

彼の父親はロバート・ケネディ元司法長官。その兄で彼の伯父であるジョン・F・ケネディ(JFK)元大統領の「暗殺事件」について、興味深い話を3時間以上にわたって話してくれた。

ロバート・ケネディ・ジュニア(右)
筆者提供

私が彼に説明した新情報に関して、彼なりに追加情報、参考情報もくれた。目から鱗もあった。最後に彼は「人生で初めて、あの忌まわしい事件について深い話をした」と、私に言った(事件当時少女だったキャロライン・ケネディ。健気な彼女の姿が世界の涙を誘った。彼女は駐日大使も経験した。暗殺事件に関して永遠に話をしないといわれる)。

1962年の「キューバ危機」。人類は地球滅亡の一歩手前までいった。兄のJFKと共にその平和的な対応で知られるRFK、ロバート・ケネディ元司法長官。

米国が誇る民主主義の勢力圏を破壊すると思われたキューバのカストロ。互いに言い分があるが、ケネデイ兄弟は命を賭けて戦った。しかし、時が過ぎて、RFKJr.は秘密裡にカストロに会っていた。当時は、JFK暗殺にカストロが関係したという陰謀説もあったので、「時間が経過すると、、」いう意味を再考する。以下の画像は秘蔵のもので、今回特別に写真が撮れた。(無断使用・掲載禁止)

秘密裡にカストロと会っていたRFKJr.
(無断使用・掲載禁止)

RFK父子は民主党系・歴代大統領の中でもトップクラスの人気を誇るJFKと共に、著名な政治家を輩出しているケネディ家の重鎮だ。

RFKJr.のベッドルーム。いまだに父と伯父は英雄だ。
筆者撮影

伯父のJFKに渡した子供時代の彼のメモ。いまだに宝物だという。
筆者提供

JFKはダラスで狙撃され亡くなった。父親であるRFKも、ロスのホテルで銃撃されて死亡。未だに謎が多い暗殺事件に巻き込まれた。悲劇のケネディ一家だ。

筆者がRFKJr.に持ち込んだJFK暗殺事件に関する新情報。通い慣れたハーバード大学ベルファイセンターの上席研究員であるラルフ・ラーセン氏との出会いから始まった。ラルフは元CIAの剛腕工作員。JFKを狙撃したオズワルドを利用したのは、保守タカ派CIA工作員4人という仮説を彼から学んだ。

ラルフ・ラーセン氏(左)
筆者提供

工作員4人のJFK暗殺の動機は、ソ連との核競争で先制攻撃をすれば勝てる唯一の機会を、常識外れの平和思考で「弱腰」なJFKが、逃しそうになったというもの。その後は核戦力が均衡して、同士討ちになるが、あの時はタイミングよく先制攻撃すれば、米国はソ連に勝てたという論だ。

このCIA工作員は名前も出ている。調べると、なんと統一教会との関係も浮かび上がった。

先の戦争末期、日本帝国陸軍との戦いが激化した。その時、戦略情報局OSSは特務機関として、中国大陸やアジア地域で活動した。その機会は決して多くなかったが、実際に武器を持って撃ち合うこともある。パラシュートで中国領土内の日本軍占領地域に降下して地下活動をすることもあった。その時の責任者がジャック・シングローブ将軍だった。

日本の降伏後、50-60年代はOSSはCIAとして発展的に変身。同将軍はCIAの産みの親の1人とも言われる。日本軍事政権の代わりに、今度は「共産主義」との戦いに専念した。米諜報にとって、ナチス、日本軍国主義、共産主義、そしていまは中国共産党政権という敵を抱えてきた。

保守タカ派のシングローブ将軍は、似たような価値観をもつ統一教会とも関係をもち、「国際勝共連合」の会長として君臨した。

筆者は彼との2ショット写真と共に、その詳細をこのアゴラにも書いている。

安倍元首相襲撃事件と統一教会
「もちろんだ。共産主義と極左は世界を悪くする。どんな手段を使っても阻止しないといけない」 穏やかな言い方だが、口調には命をかけた過去数十年に渡る決意が滲み出ていた。 ジョン・シングローブ将軍。友人はみな、ジャックという。筆者...

その当時からのOSS,CIAメンバーだった4人の戦友同士が、“捨て駒“オズワルドを利用してJFKを暗殺したという。ラルフとは当時の話で花が咲いた。

JFK暗殺以外でも、RFKJr.とは「コロナ」について交信、情報のやり取りをした。彼は環境問題や小児医療を扱う敏腕の弁護士。政治家の道は歩まず、NYのハドソン川汚染問題などで、辣腕を振るい、有名になった。

”海賊”シーシェパード。理念はある程度理解できるかもしれない。だが行動は違法も含み、あまりにも過激過ぎるため、日本では悪名高いあの組織の弁護士としても活躍した。

コロナに関しても、かなり早い時期から強い関心を持っていた。

筆者は日本で騒ぎになる前からCIAから「今回の感染症は半端でなく、異常なレベルで深刻だ」と聞いていた。世界中の専門家に直接取材をした。昔、カザフスタンの旧ソ連の世界最大の炭そ菌製造工場を訪問取材するなど「生物兵器」取材の経験も役立った。発祥が中国雲南省のコウモリ洞窟、生物兵器も一部視野に入れた研究目的で捕獲したキクガラシ・コウモリから、セイザンコウなどの哺乳類を経由してヒトが感染するようになった。米国も共同研究のために、資金援助もしていた研究所から事故で漏れ出た。それが数百キロは離れた武漢にまで広がり、最初のクラスターが海鮮市場だった。だが中国政府の情報統制の動きは速かった。医師やジャーナリストの口が封じられた。筆者は気が遠くなるくらいの時間を使ったが、良い結果を得られなかった。情報交換していた友人の米人ジャーナリストは、洞窟取材する時に村人に攻撃された。中国側の蛮行に、夜も眠れない日が続いた。

中国は、その後の香港をみても分かるように、独裁政権体制を利用し報道規制、言論の自由を奪った。

筆者は世界中で直接取材を重ねた。そして中国政府が全力を上げて生データを破棄、改ざんしたことが分かった。

コロナは世界中で猛威を振るった。その結果、米国は100万人とも言われる死者を出した。その数はこれまでの2つの大戦とベトナム戦争を足したものを上回った。トランプが「中国のウイルス」と憎しみを込めて言った理由だ。報道の自由、言論の自由がない中国は、感染症対策だけではない。これからなにをするか分からない。同じようなことを平気でやりそうだ。

十分過ぎる犠牲者を出した米国にさらなる死者が出るかもしれない。その恐怖と恐れから、これまでの警戒態勢から、露骨な「敵視」政策に中国をみる目が変わった。

元朝日新聞の田岡と子分といえる烏賀陽とか言うのが、最近の米中関係は80年代からの日米摩擦に似ていると言った。本当になにも分かっていない最悪の無知。伝聞と思い込みではなく、最近の5年くらいのワシントンを直接取材しろと言いたい。日米摩擦とは別次元だ。いまの中国の経済力、基礎技術開発力、一般的な潜在的能力、人口、国土面積などなど当時の日本とは全く比較にならないことを知らない。

米は戦争をやる気はないが、中国の独裁体制を許せない。プーチンよりも敵視している。

筆者はそれらの取材の流れで、ワクチン開発の詳細も知った。

本来は中国が発祥に関する生データを公開して、世界中の研究者が協力してワクチン治療薬開発に全力を尽くす。だが共産党体制がなによりも大切な中国はデータを破棄。米国が軍人五輪で中国に持ち込んだという嘘出鱈目を公表した。

筆者は軍人五輪参加者ほぼ全員を直接取材。もちろん米軍陸軍感染症医学研究所にも、多分日本人ジャーナリストとして唯一訪問取材した。ここから以前事故でウイルスが漏洩したこともあり、中国はそれを利用した形だ。だが中国の米国が中国に持ち込んだというのは100%嘘と断言できた。

米中対立は決定的になった。

米国はどこにも頼らず、ワクチン開発に全力を挙げて信じられない速度で完成した。あまりに早かったので、その効能に疑問を持つ者も登場した。

RFKJr.はその1人。各論は少し違うが、反対派の人々はいう。ワクチンそのものは基本的には反対ではない。だが安全ではないので反対。最初から最後まで“安全ではない“ワクチンに反対するのが重要という。

もともと彼は大企業の悪事を暴く正義の味方だと自負している。彼によれば、ワクチンは子供を中心とした人々に悪影響を与える。今回のコロナでは、若い人々が重症化することはないので、安全性が証明されていないワクチンは不要と主張。

さらに追跡用のチップが、ワクチン接種の時に体内に埋め込まれるという珍説まで登場した。人種問題まで絡めて、黒人層には、ワクチン接種を思いとどまらせるようなドキュメンタリー動画まで制作した。消毒薬を飲めば治ると豪語したトランプとの共通点がある。

また、感染症研究において世界有数のCDCファウチ博士を攻撃し続けた部分もトランプと同じ意見だ。筆者はジョージア州のCDCも訪問取材したが、あらゆる意味で信頼できる。しかし、RFKJr. のワクチンやファウチに対する不信感は非常に強いものがある。

以前、トランプの側近、ロジャー・ストーンが言ったことがある。RFKJr. は共和党に鞍替えして、トランプが大統領、彼が副大統領になるべきだ。筆者はストーンと以前、電話で20分くらい話したことがある。ロシア疑惑とJFK暗殺陰謀説だ。彼はまずはオフレコなら話をすると言った。しかし、その3日後、FBIが彼の自宅を夜明け前に急襲、逮捕した。彼はそのままロシア疑惑で訴追された。

もう3年くらい前になるか、TV、ラジオでワクチン攻撃論が多数聞かれた。著名な映画俳優ロバート・デニーロと並び、RFKJr.も、有名な17人の論客の1人だった。

一方、ワクチン促進派のビル・ゲイツ。マイクロソフトで大成功、世界でも有数の大富豪になった。残る時間と資産を人類のために使う決意をして大活躍をしている。

筆者はかなり前のことだが、4回にわたって長時間のインタビューをした。彼は10数年前からパンデミックの可能性を指摘、警告をしてきた。ワクチンは絶対ではないが、必要なもので、健康上の問題でもない限り、やるべきというスタンス。

“安全が証明されない”ワクチンは絶対反対のRFKJr. とは好対照だ。筆者は両者から興味深い賛否両論を聞いた。

客観的に分析すると、やはりワクチンは医学的に必要ということができる。RFKJr. の主張にはどうも科学的には無理がある。特に追跡用のチップが埋め込まれるという仮説。とても事実とは思えない。一部にはお金儲けのために、反対論を展開しているという指摘も出た。その結果、SNSによるRFKJr.の情報発信を禁じるべきという動きもあった。だがそれは実現しなかった。さらに反対論に火がついた。

RFKJr. は、全く聞く耳を持たない。

そして、RFKJr. は今回、ケネデイ家地盤のマサチューセッツ州で、大統領選・民主党指名争い参加の表明をした。

政治経験はなく、もうすぐ70歳ということは明らかに不利。さらにワクチン反対という一定の知的層には受けない。民主党なのに、多くの共和党員と似たようなスタンスをとっている。

彼が民主党員として、またケネディ家としても少し異端な存在であることは否めない。

来週には民主党としては一番の有力候補バイデンも、指名争いに参加表明する予定だ。

一方の共和党は、いまだにトランプが健在だ。寺島実郎氏のような現在のワシントンをあまり知らない日本人は、少し前に「トランプは静かに退場する」と言った。違う。トランプ支持者の異常さが分かっていない。予定よりは少し遅れたが、起訴された時、トランプに対する支持は一気に上がった。無知な同情や反バイデン感情も高まり、現時点では指名争いで、2位以下を引き離してトップを走り続ける。20-30%の岩盤支持層はいまだに元気一杯だ。(筆者は最後には、トランプは失速すると思っている)。だが現時点ではトランプと互角以上に戦えるのはバイデンと思われる。老害があり、筆者は他の若者を支持したいが、民主党候補として安心できるのがバイデンだろう。

上記により、RFKJr. が民主党候補になり、最後に次期大統領になれる可能性は極めて小さい。

しかし、彼は「前進するのみ」と、明るい声で言った。