企業年金の資産運用が企業価値を高める

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「コーポレートガバナンス・コード」第二章の六番目の原則には、

上場会社は、企業年金の積立金の運用が、従業員の安定的な資産形成に加えて自らの財政状態にも影響を与えることを踏まえ、企業年金が運用(運用機関に対するモニタリングなどのスチュワードシップ活動を含む)の専門性を高めてアセットオーナーとして期待される機能を発揮できるよう、運用に当たる適切な資質を持った人材の計画的な登用・配置などの人事面や運営面における取組みを行うとともに、そうした取組みの内容を開示すべきである。その際、上場会社は、企業年金の受益者と会社との間に生じ得る利益相反が適切に管理されるようにすべきである。

と書かれている。

この原則は、金融庁の推進する資産運用の高度化に連動していて、企業年金は、株式市場における主要な株主として、適正な行動をとることによって、企業のガバナンス改革を促すべきだとするものである。

しかし、子細にみれば、「企業年金の積立金の運用が、従業員の安定的な資産形成に加えて自らの財政状態にも影響を与えることを踏まえ」とあって、「スチュワードシップ活動を含む」の「含む」という表現と併せて考えるとき、この原則の中核は、「スチュワードシップ活動」にあるわけではなく、それを重要な要素として含みつつ、企業年金の資産運用が「従業員の安定的な資産形成」と「自らの財政状態にも影響を与えること」に対して、経営者の意識改革を求めた点にあるわけだ。

逆に、企業経営者が企業年金の資産運用の重要性を認識し、その管理の適正化と高度化に努めれば、自然な流れとして「スチュワードシップ活動」の活性化が期待されるのである。なぜなら、「スチュワードシップ活動」の究極の目的は、投資先企業の価値の向上なのであって、それが企業年金の資産運用における中長期的な投資収益の向上につながるはずだからである。

そして、企業年金の資産運用が企業経営にとって重要であるからこそ、「コーポレートガバナンス・コード」は、具体的な行動として、そこに経営資源、即ち専門的能力を有する人材を投入すべきだとしているのである。いうまでもなく、ここには、経営資源を投じることで企業価値が上がる、即ち、その費用よりも創造される付加価値のほうが大きいという前提があるのだ。

森本 紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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