医薬品産業の今後を占う報告書がとりまとまった
6月に骨太の方針や新しい資本主義実行計画も閣議決定され、国会も閉会しました。表向きは政策の動きは一息のタイミングです。この隙にこれまでに公開された様々な情報や公開資料を整理して今後に備えましょう。
医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会(総合対策検討会といいます)の報告書が6月12日に公表されました。
この総合対策検討会の議論が6月にまでもつれ込んだ結果、中医協での議論が後ろ倒しになっている感がありますが、今後2024年の薬価改定に向け、政策の意思決定の動きも活発になります。また8月末には来年度の各省庁の予算案が明らかになる概算要求もありますし、来年1月から始まる通常国会ではいくつかの制度改正も行われるでしょう。
特に医薬品関係の政策の動きについては、この総合対策検討会の報告書の中身が一定程度反映されることが予想されます。この報告書の中身を解像度高く理解すれば、未来の政策実現につながるはずです。
総合対策検討会の位置づけ
政府の会議と一言に行ってもその位置づけは様々です。直近の政策に強い影響を与えるものもあれば、中長期的な政策の方向性を検討するものもあるので、その会議の位置づけを理解することは、その政策の方向性構成員の陣容はその会議の意思決定の重みに大きな影響があります。
政策を議論する検討会を開催する際の構成員のパターンは大きく2つにわかれます。
(1)大学教授など専門家を集める大所高所で検討を進めるパターンと、
(2)その政策変更に利害がある関係者を広く集めるパターンです。
政策を実現する前には、利害関係者との調整が不可欠なので、その会議に該当する政策により影響を受ける関係者の参加があればあるほど、直近の政策につながる可能性が高くなります。「(2)その政策変更に利害がある関係者を広く集めるパターン」がそれに該当します。
多くの場合、法律に規定のある審議会の下に設置される部会などの形式で実施されます。こちらはいわば厚生労働省としての意思決定として報告書が取りまとめられたと考えてよいので、審議会の下に設置されていないその他の会議と比べると政策決定への影響力がより強いといえます。
「(1)大学教授など専門家を集める大所高所で検討を進めるパターン」の場合は、より自由にあるべき姿を議論する形です。こうすべき、という理想を描くために有益な手法ですが、政策実現のためには、報告書のとりまとめ後に利害関係者との調整のプロセスがさらに必要となることがあります。こちらの場合は、法定の審議会の下に必ずしも設置されないことが多いです。
総合対策検討会は法定の審議会の下に設置されている会議ではありません。
(参考)総合対策検討会の開催要綱
また、委員の構成について検討してみると、以下のとおり、大学教授が8割近くを占め、若干の民間の投資家や経営コンサルタントが入っています。
(参考)総合対策検討会の構成員名簿
以上のように、総合対策検討会は(1)のパターンに該当します。となると、一見報告書もあるべき姿を語るもので、政策へのインパクト(実現可能性)は大きくないようにも見えてしまいますが、今回の報告書は政策へのインパクトが小さいとは決していえません。
(執筆:西川貴清、監修:千正康裕)
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編集部より:この記事は元厚生労働省、千正康裕氏(株式会社千正組代表取締役)のnote 2023年7月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。