「昭和の教育に戻れ」と叫ぶ毎日新聞の論評は間違っている

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7月6日、毎日新聞「医療プレミア」に「子どもは3密で育つ!?~コロナ時代の学校から」という岡崎勝氏の論評が掲載された。そもそも、この論評が「健康を楽しくするカラダに効くサイト」になぜ出たのか理解できないが、岡崎氏の意見はおよそ次のとおりである。

  • コロナ禍で、人と人とがリアルに身体性を保ちながら交流することが忌避され、デジタルが正統化された。便乗して、タブレット「1人1台」のGIGAスクール構想が問答無用に推進された。
  • 「新しい個別最適化された学習ができる」などの触れ込みがあったが、現場で行われているのは「新たな一斉授業」である。デジタル教科書では解法のための図や絵が順序よく映し出され、最後に計算や答えが示される。こうしたプログラムされた答えに向けての思考の順序は、思いつきや、子どもたちの間違いから学ぶという方向性を摘み取っている。

昭和時代には子どもたちは間違いから学ぶことができていたという主張は納得できない。教員の指示に沿って学習するのが善で、大量生産に従事する工員を育てるのが教育最大の目的だったのではないか。多様性は度外視され、指示から外れた子どもたちは捨て置かれたのではないか。

岡崎氏はきっと知らないだろうが、デジタル教科書には多様な子どもたちの学習を助ける機能が入っている。文字を拡大する、文字と背景の白黒を反転する、ルビを付ける、読み上げる。そんな機能を利用することで多様な子どもたちが普通教室で一緒に学べるようになり始めている。

海外はさらに先を進む。女の子が持つタブレットでは、「d」にはブルー、「p」にはピンクの背景色が付いている。文字だけでなく背景色にも注意することで、「deep(深い)」を「peed(オシッコした)といった読み間違いが減る。読字障害(ディスレキシア)の子どもに役立つ支援機能である。

僕もお手伝いしているフランスの新興企業FACIL‘itiが開発したアプリで、スマートフォンで撮影した画像から文字を抽出して背景色を加えている。GIGAスクールのタブレットにこのアプリを搭載し、デジタル教科書から自動的に文字情報を引き渡すようにすれば、いっそう便利になる。そして、わが国でも「たな」を「なた」と読むような間違いが減っていく。

昭和の教育に戻れば、文字を拡大する、文字と背景の白黒を反転する、ルビを付ける、読み上げる、あるいは紹介したアプリのような支援機能は使えない。読字障害を含め、普通教室に在籍する10人に一人は多様な障害を持つ子どもといわれているが、昭和の教育では対応できない。この壁を突破した教育のデジタル化には価値がある。