日本の働く人の労働条件が悪い理由を日本人は何も知らない

私の最新書籍である「世界のニュースを日本人は何も知らない4 – 前代未聞の事態に揺らぐ価値観」 でも指摘しましたが、日本人はひどい就労環境でもなぜか上司や会社に反撃しません。(参照:なぜ日本人は上司を襲撃しないのか?

日本の働く人の条件の悪さに驚く外国人が多いわけですが、日本人の賃金が上がらず待遇が悪いのは、働く人が要求しないからというだけではなく、構造的な問題もあるということが長い間指摘されています。

これは海外の人は日本人よりもはっきりと分かっています。

ところが、日本の業界はこれを長く放置していて全く改善しようとしないのです。また政府も何故か目を瞑ったままです。

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例えば物流業界に関するアクセンチュアの研究でもこれは指摘されています。

日本の「多重中抜き」を認めるルールが、トラック運転手の労働条件を悪化させているのです。多重下請けが禁止されている米国型の制度への移行により環境が良好になるとの指摘がされており、解決策ははっきりしています。

物流業界だけではなく他の業界も多重下請けが生産性を下げ、労働環境が悪化している原因です。建設業界だけではなく、ITやメディア、ありとあらゆる業界で日本はこういう構造が放置されているのです。

こんなに「中抜き」が幅を利かせる先進国は恐らく日本だけでしょう。

他の国では多重下請けや孫受けが禁止されている業界もかなりあります。管理ができませんし、中抜きが酷くなることで品質が下がったり不正が起こりやすくなりますし、末端の人の賃金が下がり、労働環境が悪化するので事故が起こりやすくなります。

それは医療費や福祉のコストとして国に跳ね返ってきますので、規制する動機があるのです。生産性も下がります。まるで途上国や独裁国の様なアンフェア(不公平)な状態が放置されているのです。

しかしこういった調査の結果は日本ではなぜか大きく報道されず、興味を持つ人も多くはないのです。

現場に目をつぶってしまい、解決策が分かっているのに無視している日本人というのは、海外の人からすると大変不思議な存在です。

日本人は目の前の不合理や不正義に目をつぶり、自分達でなにかを変えようとしない。変えないのでいつまでも悲惨な労働環境なのです。何事も他人任せで、自発性がないのです。そしてどうしたら変えられるか? という創造性や突破心がない。柔軟性もない。

日本が変わるには一人ひとりが問題を自分事として考えねばなりません。