「科学コミュニケーション」ができない日本学術会議

日本学術会議
NHKより

日本学術会議に設置された委員会にオブザーバ参加しないかとの案内が来た。委員会の名称は「細胞-身体可塑基盤からの自分を知り育てる科学知見創出に資する可視化小委員会」。

何じゃ? 名称ではさっぱりわからない。学術会議サイトで委員会の設置提案書を探して読んだが、ますます理解できない。

設置目的:本小委員会はICT時代における25期からの新規の委員会の提案である。24期の「心と脳等−新しい領域委員会」での議論を引き継ぎ深化させ、心や脳を生み出す生命の単位「細胞」の創発性に由来する人間の可塑性の科学的知見の創出に資する可視化を目指す。さらにそれらの知見を人間が「自分を知り育てる」研究と教育の科学的知見の創出に発展させる可視化を目指す。19世紀の産業革命以前まであった古代ギリシャ以来の「汝をしれ」、即ち人間である自分に関する理工学的な問いに対して可視化により答えを出す。子どもから高齢者まで、「生きている自身を創る細胞の大きな可能性」を知り、自らの活動で引き出す健康寿命延伸に活かす科学や教育の芽を、身心一如や知行合一といった日本古来の考え方と対比&可視化し、研究と教育、文と理、身体と心/脳を一体化するための可視化にも取り組む。

「国民の理解」は、税金を投入して進める科学技術研究開発の大前提である。税金で運営されているにもかかわらず、こんな設置目的を認める学術会議には「科学コミュニケーション」が欠落していると言わざるを得ない。

科学コミュニケーション、英語ではScience Communicationは、国民一般、つまり科学の非専門家に科学について伝えるコミュニケーション技法である。米国連邦政府で科学技術研究開発費の配分を担当するNational Science Foundation(NSF)は、科学コミュニケーションの意義について次のように説明している。

誰もが研究者と視点を共有しているわけではない。ビジネスマンや女性、アーティスト、政治家、作家、弁護士、投資家などは皆、世界を異なる視点で見ている。国民の健康・繁栄・福祉・国防等のために科学の進歩を促進するというNSFの使命の下で、研究者が多くの時間と労力を費やしていることについて理解を増進するのが科学コミュニケーションである。

科学に関するプレインランゲージ・ガイドラインを作成しようという提案がISO TC 37(言語及び専門用語)に出ている。プレインランゲージは科学コミュニケーションに資する。

日本学術会議もプレインランゲージによる科学コミュニケーションについて学んで欲しいものだ。