10月1日午前0時まであと3時間のところ、山が動きました。
米政府機関閉鎖へまっしぐらかと思いきや、瀬戸際でマッカーシー下院議長が決断したのです。共和党内の保守強硬派ではなく、大幅な歳出削減要求を取り下げ民主党の支持を取り付ける方向へ転換。これが奏功し335対91で可決、反対票は大半が共和党で90人、民主党からは1名のみでした。
その後、米上院へ送付され88対9と共和党保守派が反対した程度で難なく通過。バイデン大統領が署名し政府機関の閉鎖回避にこぎ着けました。
つなぎ予算の主なポイントは、以下の通りです。
・10月1日から45日間、11月17日までのつなぎ予算
・5月のバイデン大統領ーマッカーシー下院議長の合意に基づき、裁量的支出は2023会計年度の水準が上限
・共和党議員の多くが反対するウクライナへの追加支援を見送り
・年末までの連邦航空局(FAA)向け予算、全米洪水保険プログラムの延長を決定
・バイデン大統領率いる民主党が求めた緊急連邦災害援助を160億ドルへ増額(+40億ドル)
バイデン大統領は、声明で「上下両院・超党派の多数派は、政府機関の維持に埋め賛成し、何百万人もの勤勉なアメリカ国民に無用な苦痛を与えることになる不必要な危機を防いだ」と歓迎の意を表明。その上で「米連邦政府職員の給与が引き続き支払われ、旅行者は空港の遅延を免れ、何百万人もの女性と子供達は、重要な栄養補助を引き続き利用できる」との見解を寄せました。
つなぎ予算が成立したものの、マッカーシー下院議長に見捨てられたフリーダム・コーカスなど下院の保守強硬派が解任動議を提出する可能性があります。早速、フリーダム・コーカスの前会長あるアンディ・ビッグス議員(アリゾナ州)が旧ツイッターのXにて、マッカーシー氏に対し「下院議長にとどまるべきか」と問う有様です。
振り返れば1月、下院議長選が4日にわたり15回に及んだ当時、水面下でマッカーシー氏と造反した保守強硬派との間で下院の歳出議事運営などをめぐり、妥結に至っていました。下院議長をめぐっては「下院議長の解任動議をめぐる提出要件を引き下げ」で合意。下院議長の解任動議の提出要件については、2019年に民主党下院が変更した「党議または会議の指示によって提出された場合」から、保守強硬派の要求を呑み1人へ戻すことが盛り込まれました。
しかし、下院議長が罷免されるには「過半数の可決」が必要です。今回、下院がつなぎ予算案を超党派で通過させ共和党の反対票が90票にとどまったように、マッカーシー氏が解任されるとは限りません。だからこそ、マッカーシー氏も「罷免したいのであれば、やってみればいい…私にとっては国の方が重要だ」と発言する余裕があったのでしょう。また、マッカーシー氏は下院共和党として、歳出削減や国境の警備強化などを盛り込んだ別の法案を提出する構えをみせ、保守強硬派にも一定の配慮を示すことも忘れません。
下院民主党にしてみても、11月17日につなぎ予算が切れるなか、再度チキンレースさながらの交渉が予想されるため、マッカーシー氏の解任を望むとは考えづらい。共和党陣寧にしても、下院は2年ごとに改選を迎えるほか米大統領選を予定するだけに、失点を免れたいはずで、現実的に行動するのではないでしょうか。
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2023年10月1日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。