日本では「経済安全保障」対策が実施されつつあるが、どうも「経済安全保障」と「国家安全保障」は別物のようだ。私のような凡人は、「国家安全保障」が成り立ってこその「経済安全保障」だと思うのだが、どうも定義があいまいだ。医薬品開発、特に、感染症ワクチン開発には、霊長類(サル)が重要だと思うのだが、「経済安全保障」の枠内で霊長類確保の重要性を訴えても、どこにも声が届かない。
抗生物質確保は「経済安全保障上」重要な課題とされ、施策が実行されているが、霊長類は含まれない。同じように、薬用植物の確保も、「経済安全保障」には含まれない。漢方薬は今や医療現場で活用されているだけでなく、一般のドラッグストアでも広く販売されているが、その原材料の約90%は輸入に頼っている。台湾有事になれば、この原材料の供給が断たれるリスクがある。抗生物質は経済安全保障上重要だが、薬用植物はそうでないという線引きが曖昧だ。欠かすことのできない薬用植物が輸入されなくなる事態は想定されていないようだ。
話を戻すと、霊長類確保は、医薬品開発だけでなく、生物テロ対策上も極めて重要だ。生物テロなど、目立たない形で持ち込まれたウイルスや細菌がばらまかれれば、日本はパニックになる。それでも、ゲノム解析を通して速やかなワクチン開発ができれば被害を抑え込むことができる。日本だけにばらまかれた生物兵器に他国が優先的に対策を立ててくれると思うのは幻想だ。
米国のウクライナへの支援も政治次第であることは、最近の米国議会でのゴタゴタを見ればよくわかる。負担が大きくなればなるほど、米国内では支援疲れが見えてくる。残念ながら、大きな理念を掲げていても、政治的な道具にされると何が起こるかわからない。また、コロナ感染症拡大時のマスクやワクチンの騒ぎからも、政治家にとっては自国優先が選挙対策として最優先だ。崇高な理念よりも、自分の当否が大切なのは政治家の性だ。
ウクライナの現状を見ていれば、欧米の支援なくしては生き残ることができないのは明白だ。辺野古基地についても、日本はグチャグチャだ。普天間基地は危険だと立案された辺野古移転は無責任な民主党政権で大混乱となった。少なくとも「県外移転」と言った宇宙人総理は、今でも、日本の総理大臣だったとは思えない宇宙人だ。日本はどうするのだ。
沖縄県知事は、基地問題で最高裁の判決に従うことができないようだ。三権分立を行政が認めなければ、国そのものの法治が立ち行かないはずだが、評論家と称する人は最高裁の判決はおかしいとテレビの前で平然と宣う。私も裁判所は信じないが、信じなくても従ってこそ法治が成り立つ。メディアも自らの責任も顧みず、ジャニーズ問題で視聴率稼ぎに必死だ。G7で一人当たりの所得が最低になったというのに、こんな日本に誰がしたのだ!
編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2023年10月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。