先日、「柔軟な働き方を認めている企業はそうでない企業より業績が4倍伸びている」との調査結果が話題となりました。
【参考リンク】 柔軟な働き方、出社型企業より業績伸び4倍 米民間調査
以前から労働組合などが実施するアンケートで「従業員の満足度、効率共に向上した」といった調査はありましたが、企業横断的にこうした結果が出されるのは珍しいですね。
【参考リンク】ヤフー、“無制限リモートワーク”で新しい働き方へ
なぜ柔軟な働き方が業績向上につながるのか。そもそも柔軟な働き方とはどういったものなのか。いい機会なのでまとめておきましょう。
柔軟な働き方に必要な土台とは
そもそも柔軟な働き方の定義とは何でしょうか。「フレックス勤務や裁量労働が導入されている会社のことだ」という人もいるでしょう。
でもフレックスや裁量労働があるにはあるけどほとんど誰も利用していなかったり、“暗黙の出社時間”が決まっていて強い同調圧力があるような会社は(とくに日本企業には)いっぱいありますよね(苦笑)
少なくともフレックスや裁量労働が導入されているだけでは十分とは言えないでしょう。
では、柔軟な働き方とはなにか。筆者なら少なくとも以下の2点が土台としてきっちり整備されているかどうかで判断するでしょう。
・業務範囲の明確化
まず、自身が上司となって部下にリモートワークを指示するシチュエーションを想像してみてください。
なにはともあれ必要なことは「各人の業務範囲をきっちり明確化すること」なのは明らかでしょう。
大部屋で机を並べ同じ時間に仕事をするから、業務範囲は曖昧で済んでいるんです。
でも別な場所で時間帯もそれぞれ切り離して仕事することを認めるのなら、当然あらかじめ仕事内容を切り分け、ミッションを明らかにしておく必要があります。
・裁量の委譲
業務範囲を明確に切り分けても、働きぶりから仕事の進め方まですべて会社が管理していれば柔軟な働き方とは言えません。
「フレックスで出勤時間ずらす時は要事前申請」
とか
「在宅勤務は一週間前までに上司に申請すべし」
とかやってる会社は、柔軟な働き方とはとても言えないでしょう。
仕事する場所、時間、そして業務プロセスまで個人が自由に設定できるからこそ柔軟な働き方であるわけで、裁量を個人に委譲することも不可欠となります。
上記2点がしっかり土台として機能していれば、とりあえず緊急事態宣言のようなフルリモートにもそつなく対応できるはずです。
ただし、柔軟な働き方として長期的に業績の向上にまでつなげるのであれば、あともう一点ほしいものがあります。
・きちんとした成果評価制度
担当業務が明確化されても、リモート勤務が認められても、それだけでは個人の働き方が真に柔軟になるわけではありません。
たとえば上司であるあなたが「やっぱり実際の働きぶりを見て評価したい」とか「自分はいっぱい残業してくれる人間が好きだ」とか言ったとします。
部下たちはあなたの顔色をうかがいだし、上記制度は徐々に形骸化し、1年もたつと以前の「なんとなく職場にいないといけない同調圧力」が復活していることでしょう。
働きぶりとか残業時間といったアナログな要素ではなく、業務範囲を明確化し、それに対する成果評価をきっちり機能させる。
そこまでやって柔軟な働き方は本当の意味で実現するというのが筆者のスタンスですね。
逆に言うと「リモートワークやってみたけどかえって効率が悪くなっただけだったよ」と言ってる会社って上記のポイントにまったく手を付けてない会社とみてほぼ間違いないです。
従業員をオンラインで監視するようなソフトを導入して、場所こそ違えど同じ時間で働けるオンラインのオフィスみたいなものをこしらえて、今まで通りの働き方を維持してるだけなんですね。
そんなアホな“リモートワークごっこ”にリソース突っ込むんだったら普通に出社したほうがまだマシでしょう(苦笑)
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以降、
サルでもわかる、柔軟な働き方で業績が向上する理由
日本人に今もっとも足りないものとは
Q:「ドイツを再逆転するには日本は何をすべき?」
→A:「日本人の賃金を上げるにはズバリこれでしょう」
Q:「「みなし残業代」のある会社への転職は危険?」
→A:「一般にみなし残業の方がメリットは多いです」
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