マイナンバーの呪いを解く

ICPFシンポジウムで、どうしたらマイナンバーの呪いが解けるか議論した。

マイナンバーの起源は「消えた年金記録問題」である。2007年に持ち主不明の年金記録が約5千万件あると判明した。国民年金や厚生年金に加入し、毎月保険料を納めていたのに記録が見当たらない。このため老後に受け取る年金額が減額された。

国民の怒りが爆発して誕生した民主党政権は、国民一人ひとりに固有の番号を与え、それで年金を管理することにした。マイナンバー制度はこうしてスタートした。

医療機関は月ごとに診療報酬明細書(レセプト)を審査支払機関に提出して、保険者負担分(7割)の支払いを求める。社会保険診療報酬支払基金は、2022年度に約8億5千万件のレセプトを審査し、このうち228万件を再審査に回したそうだ。レセプトに記載された氏名の誤りや資格喪失後の受診などが理由である。

紙の保険証の情報をレセプトに転記する際に氏名が誤記される。レセプトは受診月の翌月10日までの提出が原則だが、遅れる場合もある。この「空白期間」の間に資格喪失後の人が受診する恐れがある。

レセプト処理の誤りを防ぎ、資格喪失後の利用や、他人になりすます不正受診を予防する。これがマイナンバーカードと保険証を統合する理由で、国民皆保険を人口減少時代に維持していくための制度化である。その先には、誕生以来の個人健康記録を基に治療する、個々人に適応した医療が展望できる。しかし国民の理解は進んでいない。

災害から着の身着のまま逃げた人は、どうしたら「私は私である」と証明できるだろうか。地元の避難所なら知り合いがいるかもしれないが、旅先で自らを証明するのはむずかしい。しかし、マイナンバーを覚えていれば、それを鍵に行政が自らの情報を集めて適切に対応してくれるかもしれない。

地震や豪雨が頻発するわが国で、緊急時に自己を証明する手段としてマイナンバーが利用できないか。こんな利用方法も国民の理解を得るのに役立つだろう。

利用シーンを提示して、マイナンバーの利用を進めていく。年金問題の解決がそうだったように、国民皆保険の維持でも災害対策でも、きちんと説明すれば国民の理解は得られるだろう。

緊急時に自己を証明する手段にするのであれば、覚えられないランダムな12桁ではなく、「19641010の5374」のようにマイナンバーは生年月日プラス4桁にすべきだ。「マイナンバーは秘密」からは大きな方向転換だが、国民は支持する可能性がある。

そのうえで、国民が行政に手続きする際にはマイナンバーを必須とする。こうして利用機会が増えていけば、マイナンバーの呪いは解けていく可能性がある。