「一般の障害年金」と「コロナワクチン救済制度の障害年金」との相違点

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今回は、「一般の障害年金」と「コロナワクチン救済制度(予防接種健康被害救済制度)の障害年金」との相違点について考えてみます。

まず、一般の障害年金は65歳以上は申請できないという年齢制限があります。正確に言いますと、障害が生じて病院を初めて受診した時点が65歳以上では申請ができません。救済制度の障害年金ではそのような制限がありません。

救済制度の障害年金は70代が最も多く認定されています。70代は一般の障害年金を申請することはできないため、救済制度の障害年金で積極的に認定しているのかもしれません。

2番目の相違点は支給金額が大きく異なるという点です。

救済制度の障害年金は、障害基礎年金の約5倍とかなり高額に設定されています。ちなみに2級で414万円、3級で310万円です。なお、一般の障害基礎年金には3級はありません。

救済制度の障害年金は審査までに非常に長い時間を要するため、先に一般の障害年金を申請する人もいるようです。重複して申請することも可能です。救済制度の障害年金が後から認定された場合には、障害基礎年金を引いた額が支給されます。

2024年1月26日の時点の障害年金の認定状況を見てみます。

39件が認定されています。平均年齢は62.1歳、性比は70でした。

その内訳は、ギラン・バレー症候群7件、急性散在性脳脊髄炎3件、他の脊髄炎・神経炎5件、脳梗塞・脳塞栓症9件、上肢トラブル(筋力低下、しびれなど)8件、その他7件でした。

ギランバレー症候群と急性散在性脳脊髄炎のみで集計してみました。

50歳未満の認定者は1人のみです。

障害年金の2級と3級の障害の程度は次のように解説されています。

【2級】
必ずしも他人の助けを借りる必要はなくても、日常生活は極めて困難で、労働によって収入を得ることができないほどの障害です。例えば、家庭内で軽食をつくるなどの軽い活動はできても、それ以上重い活動はできない方(または行うことを制限されている方)、入院や在宅で、活動の範囲が病院内・家屋内に限られるような方が2級に相当します。

【3級】
労働が著しい制限を受ける、または、労働に著しい制限を加えることを必要とするような状態です。日常生活にはほとんど支障はないが、労働については制限がある方が3級に相当します。

ギラン・バレー症候群や急性散在性脳脊髄炎と診断された人であれば、2級や3級に該当する人が多いのではないかと考えられます。これらの疾患の有害事象報告例の年齢の中央値は40代にあります。現時点で、これらの疾患の50歳未満の認定者が1人のみというのは少々奇妙です。

何故、50歳未満の認定者は1人のみなのか?

理由の一つは、障害年金が高額に設定されていることではないかと私は推測します。仮に30歳で2級に認定され80歳まで障害が続いたとしますと、支給された障害年金の総額は約2億円という超高額となってしまいます。3級でも約1.6億円です。超高額の支給を避けるために意図的に50歳未満の認定者を少なくしている可能性があるわけです。

以前の論考で指摘したように救済制度の認定は政治的色彩を帯びています。したがって、政治家の介入により認定プロセスが歪められていたとしても不思議ではありません。政治家の思惑により、如何様にも認定基準は恣意的に変更可能なのです。しかも、認定者の医学的データの詳細は開示されていないため、第三者の専門家が検証することができません。

審議会で専門家が審査しているから恣意的な審査ではないという反論もあるかもしれません。しかし、恣意的ではないと主張するのであれば、第三者が検証できるように認定事例や非認定事例の詳細データを開示するべきです。開示をせずに恣意的ではないと反論しても、何の説得力もありません。

もっと科学的に認定すればよいのではないか?

科学的に認定することが望ましいのは確かです。しかし、科学的に認定しようとすると、以前の論考で指摘したように、ほとんどの事例は認定されなくなってしまう可能性があります。これでは救済制度の趣旨に反してしまいます。したがって、政治家の介入を許す恣意的な認定となってしまうことは仕方がないのかもしれません。

今後のこれらの障害年金の認定者数の推移が注目されます。