咳を聞きわけて病気を診断するAI

3月21日号のNatureのNews欄に「Google AI could soon use a person’s cough to diagnose disease」という記事が掲載されている。数百万もの咳を機械学習することによってコロナ感染症や結核の可能性を聞きわけるという。

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Google社の開発したHealth Acoustic Representations (HeAR)と呼ばれる人工知能は咳の音を聞きわけて病名を推測できるようになったそうだ。現時点では、臨床応用可能かどうかの評価はまだできていないようだが、オンライン診療で音を聞きわけて、医療機関の受診を勧めるような形で利用されるかもしれない。

蓄積された(利用される)データの正確さが、導き出される答えの正確さに影響を及ぼすので、日本で均質なデータを収集すれば、これくらいのことは簡単にできると思うのだが?

今や、大半の人がスマートフォンを持っており、録音して医療機関に送るだけで診断できれば(医療機関の受診の是非を判断できれば)、医療機関へのアクセスが難しい人でも利用可能だ。地域の基幹病院とクリニックの連携にこれらのシステムを合わせれば、医療の質はあがるだろう。

おそらく、重症者をできる限り見逃さ(聞き逃がし?)ないように、初めは基準値を下げて医療機関受診を勧めるようにする。そうすると、ボーダーラインの情報を含めて幅広い形で情報収集が可能となり、人工知能はさらに学習して、より精度(正確さ)を高めていくことが可能となる。

人間の診断基準に幅があれば、人工知能もそれらの基準に基づいて学習するので100%精度に至ることはない。いろいろな種類の人工知能が開発されているが、その優劣は集められた(集めれれる)情報の質の高さに左右される。一つの医療機関やその数少ない共同研究者がデータを集めても、世界で競う情報量にはならない。

国家戦略として医療の膨大なデータを収集することやそれを上手に利用することに1兆円くらいかけても、医療の質の向上、医療のDX化、医療の個別化ができれば、毎年数兆円の医療費削減につながるはずだか、いつまでたっても、「遅れた情報で、間違った方向に、そして、できそうもない予算をつけて」すべて水泡に化す。失われた30年、この繰り返しが続いている。


編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2024年3月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。