大谷翔平選手の税金関係とアメリカの世論を日本人は何も知らない

ドジャースの大谷翔平選手の通訳である水原一平氏が、自身のギャンブル依存により大谷選手の資金を使い込んでしまった件が大きなニュースとなっています。

大谷翔平投手のスキャンダルと送金
ドジャース大谷翔平投手の通訳である水原一平氏が自身のギャンブル依存により大谷投手の金を使い込んだ件が大ニュースになっています。 まだこの事件の詳細は不明ですが、日本人があまり注目していない点がいくつかあります。 2023年12月...

私の新刊書『世界のニュースを日本人は何も知らない5』(2023年12月8日発売)でも、この件について解説していますが、海外では様々な事情が日本と異なるため、こういったニュースに関して日本人と海外の人では注目する部分が異なります。

まずAP通信によれば水原と賭博の胴元であるマシュー・ボウヤーを内国歳入庁(IRS)が調査している点です。内国歳入庁(IRS)は連邦政府機関で、日本の国税庁に当たります。

大谷翔平選手 Wikipediaより

まだこの事件の詳細は不明ですが、日本人があまり注目していない点に、大谷選手の税金に関するアメリカでのここ最近の世論があります。

この件は日本ではなぜかほとんど報道されていないのですが、アメリカでは実は大谷に対する金絡みのイメージはどんどん低下しているのです。

これは大谷選手がロサンゼルス・ドジャースと結んだ7億ドルの大幅な「延期型契約」の件です。

大谷は1シーズン7000万ドルでドジャースと10年契約を結ぶことにしたのだが、日本でも少し話題になったように、これは一括で支払われる形式にはなっていません。

報酬は分割払いで、97%以上があと払いです。

2024年から33年までの間は1シーズン200万ドルずつ払われる形式になっています。

契約形態に関して日本では大谷選手が無駄遣いをしないためだとか、少しずつもらいたいだけだという的外れなコメントが出回っているがその本質は違います。

基本的に報酬を後払いにしてもらえば、後払いの分の報酬を得る際にカリフォルニア州の外に住んでいれば、州税の支払いを節約できるからです。

大谷選手が節約すると見積もられている州税は9,000万ドルから1億ドル。

これはアメリカの連邦政府の定めた法律によるものです。

1996年のアメリカの連邦法では

10年以上にわたって『実質的に等しい定期的』な額で支払われる場合、州は州外の住民の退職所得を課税することを禁止

となっています。

これはちょっと分かりにくいのですが、どういうことかというと、要するに年金生活者向けの法律なのです。

アメリカは引退すると生活費や税金がもっと安い週に引っ越す人が少なくないのですが、働いていた州は引っ越した人々の年金から州税を徴収できないという仕組みです。

これを日本で説明すると、中央区で働いていた人が、退職後に網走市に引っ越した場合、網走市の住民税を払うが、中央区の住民税は払わなくてよいという仕組みです。

1996年以前は年金の元になっている報酬を得た州が州税を徴収していたのですが、税金が高い州で働いていたが、その後引っ越して別の州住んでいる人はこれは困るということで、制度が変わったのです。

また通勤は基本的に居住実態があるところの所得税や地方税を払うのが基本になっているので、欧州に足並みを合わせたような形になります。

アメリカは国が大きいので各州が独自の国のような形になっています。だから本来は日本の感覚だと地方税である州税の割合が全く異なっているのです。産業や人口が少ない州や気候が悪い州は、州税を安くすることで他の地域からの移住を促進することもあります。

つまり欧州のように規模が小さな様々な国が一つの国にたくさんあるようなイメージです。

欧州の場合も特に北部のイギリスやオランダドイツといった国の人々が引退するとスペインやポルトガルに住むという例が少なくありません。

気候が良く生活費が安くて税金が安いからです。

もっと税金を節約したい人は、年金生活者への様々な控除があるマルタやカリブ海の租税回避地に住むこともあります。

日本と違って地元への愛着というのはあまりないので自分のお金が増えるのであれば住む場所をバンバン変えるのが北米や欧州北部の感覚なのです。

NoDerog/iStock

現在のカリフォルニアの税率は13%を超えており、来年1月1日には14%を超える見込みですが、これは実はアメリカで最も高いのです。州によってはゼロのところもあるし、5%とか6%の州も多いのです。

What Is the Most Taxed State?

つまり大谷選手は収入の支払いを先延ばしにすることによってこの高額な修繕の支払いを避けることができるのです。

しかしそのカリフォルニア州には大谷選手が払うはずの高額な所得税が一気に入りません。

さらにこの法律はもともと退職した普通の年金生活者を対象としたものであって富裕層のために作ったものではありません。

ある意味長年頑張って働いてきた高齢者へのねぎらいの意味がある仕組みです。

所得税が安い州に引っ越す人の多くは、長年サラリーマンや零細自営業、公務員、教員、医療関係者などとして働いて、せっせと年金を積み上げてきたごく普通の人々で、決して裕福ではありません。

したがって、アメリカの一般の人々は大谷選手のような超富裕層がこの法律を使って税金の支払いを避けることに対して大変な反感を覚えているのです。