今回は、ちまたに出回っているいわゆる速読術を検証していきます。
速読術に関する歴史は古くからありますが実態はどうなのでしょうか。前回に引き続き検証していきます。
(前回:速読術の科学的真実?フォトリーディングと遺伝子の関係とは)
読書力をアップさせるのはスキミング力
この研究は、2000年にオハイオ州立大学が実施したものです。まず、135人の遺伝子が同じの双子の一卵性双生児と、179人の遺伝子が違う双子の二卵性双生児を対象に、読書スキルがどこまで遺伝子に左右されるのかということを調べました。
その結果、読書理解力や聴き取り理解力は遺伝的要因と環境的要因の両方に影響されることが示されました。興味深いのは「読書スピードは4分の3(75%)が遺伝子で決まる」という点です。読書スピードが速い人はすでに遺伝で決まってしまっているということです。
では、読書スピードが速くない人が読書スピードをアップさせるにはどうしたらいいでしょうか。残りの25%を鍛えるしかありません。では、25%とはなんなのでしょうか?
私は、「スキミング力」だと考えています。スキミング力とは、文章の内容をざっくりと把握するための読解力のことです。スキミングとは、英語のskimming(すくい取る)という単語からきており、文章のなかから大事な部分だけをすくい取るように読むことです。
スキミング力を身につけることのメリットは3つあります。
- 長い文章や難しい文章でも、要点や大まかな意味を素早く理解できる。
- 読みたい情報や興味のある情報を効率的に探せる。
- 読書量や読書速度を増やし読解力や記憶力を向上させる。
私がこれまで書籍の中で紹介してきた読み方はスキミング読みに近いものです。単語だけでも、拾って、文章を拾って頭のなかで繋げればひとつの意味になります。見出しやリード文、結論などに注目することもスキミング力アップに役立ちます。
読んだ本の要約を書いたり、他人に伝えたりすることでスキミング力を鍛えることができます。思い出してください、あなたは、新聞をどのように読んでいますか? 一言一句をすべて追っていますか? きっと飛ばし読みでスキミングしているはずです。
やはり理解できない速読術
すべてとはいいませんが、速読ビジネスにきな臭さを感じるのはなぜでしょうか。私が人より100倍速く本を読むことができる魔法を手にしたら、他人には絶対教えないと思います。ありとあらゆる情報をインプットしてビジネスに応用するでしょう。
司法試験予備試験を経て司法試験を目指したり、東大を受験しても面白いでしょう。弁護士資格、東大合格が簡単に実現できるようになったら、ビジネスに転用できます。おそらく、日本全国の予備校を傘下に収めることができるでしょう。人は目に見えない力をほしがりますが、そんな簡単なものはないと考えています。
なお、速読術は消費者庁や国民生活センターで問題になったことがあります。不当な勧誘や契約に関するトラブル、効果について科学的な根拠が不十分であるなどの情報提供も行っているからです。関心がある方は、十分な情報収集が必要です。
尾藤 克之(コラムニスト・著述家)
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2年振りに22冊目の本を出版しました。
「読書を自分の武器にする技術」(WAVE出版)