香港の証券会社が使いやすいポイントはどこにあるのか?

香港・シンガポールというアジアの金融ハブを利用している富裕層の方は多いでしょう。香港のHSBC、香港・シンガポールのプライベートバンクをイメージする方が多いのではないでしょうか。

しかし、日本で金融商品を買うときに最もよく利用するのは証券会社でしょう。証券会社は、香港・シンガポールにもあるのです。

そこで、香港の証券会社(P証券)のジャパンデスクA氏に、証券会社の賢い利用法について聞きました。

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香港の証券会社は、何を扱っているのか?

――P証券では、どういった商品を扱っているのでしょうか?

A氏:まず、株式についていうと、香港やシンガポールの証券取引所に上場している株式はもちろんのこと、東南アジアや南アジアなど、どこの証券取引所に上場している株式もお買い求めいただけます。

――債券なども買えますか?

A氏:もちろん債券もお買い求めいただけます。ミドルからローリスクの債券でも、年間利回りが5~6%のものもあります。リスクを抑えつつ、安定した利益を得たいという方にお勧めできます。

――会社を売却などして、リタイア・セミリタイアして暮らす方に、良さそうですね。ETFも扱っていますか?

A氏:もちろん、ETFも扱っています。米国には多くのETFがありますが、日本では金融商品として登録されておらず、日本の金融機関では売っていないものもあります。しかし、香港の場合、個々の金融機関の判断でETFなどを売ることができるのです。そのため、①幅広い商品を取り扱うことができるというメリットがあります。さらに、②米国で上場の手続をした商品を重ねて日本でも金融商品として登録する手間を省けるため、無駄なコストが乗っていないというメリットがあります。

相続税対策に使えそうな商品も

A氏:香港では、生命保険の利回りが良いうえ、レバレッジを掛けて保険を購入できます。例えば、「1億円を預けて、3億円を借り、その3億円で保険料を払い、保険金10億円の保険商品を買う」というイメージです。香港には相続税は無いので、日本人向けの使い方になりますが、こうした商品は、相続税の支払に使えるでしょう。

――たしかに、オーナー企業のオーナーが亡くなった場合、相続財産の大半が自社(非上場)の株式だったりします。そうすると、多額の相続税は掛かってくるのに、相続税を払う原資がないこともあります。そうした方が使うのに良さそうですね。

A氏:ただ、日本の保険業法の関係で、日本居住の方には販売できないのです。使える方は限られてしまいますね。

証券会社にお任せの商品、利回りが良い

――個別株、債券やETFのような商品を自分で選択して買うという方もいらっしゃいますが、証券会社にお任せしたいという方もいらっしゃると思うのですが、良い商品はありますか?

A氏:弊社に一任していただく商品もございます。弊社で提供しているお勧め商品は、一つ目が、株式・債券・コモディティなどを組み合わせたグローバル型の商品、二つ目が、中国株を中心(90%以上)とした商品です。

――おいくらから購入できますか?

A氏:1本10万米ドル(約1500万円)で購入して頂けます。

プライベートバンクより、ハードルは低く、パフォーマンスは負けない

――貴社に口座を開くには、ミニマムいくらを預ける必要がありますか?

A氏:30万米ドル(約4500万円)を基準としています。プライベートバンクの場合、ハードルが低いところでも200万米ドル(約3億円)ですから、プライベートバンクと比べ、ずっとハードルが低く小回りが利く存在だと思います。

――口座開設をして30万米ドルを入れ、先ほどおっしゃっていた1本10万米ドルの一任商品を3本買うというのが、ミニマムのイメージですね。

A氏:はい、2本ほど一任商品を買っていただき、あとは個別の商品を買っていただくというのも良いでしょう。ちなみに、弊社の一任商品はプライベートバンクの商品にもパフォーマンスで負けていません。

コマーシャルバンクでありがちな、商品売り込みは無い

――香港では、普通のコマーシャルバンクが様々な金融商品も扱っています。そして、銀行員から商品を売り込まれたという話もよく聞きます。

A氏:そういう話はよく聞きますね。銀行の場合、金融商品の手数料で稼いでいるので、絶えず売り続けないといけないのでしょう。証券会社の場合、金融商品を売る際に一回だけお支払い頂く手数料ではなく、継続的な管理報酬を頂くことでビジネスを成り立たせていますので、そうした売り込みはしていないです。

空港から香港島に向かう途中で高層ビルが見えてくる
筆者撮影

チャイナリスクを気にしすぎる必要はない

――香港の証券会社で商品を買うと「チャイナリスク」があるのでは?というような質問も聞きます。もし中国の影響が一層強まったら接収されてしまうのでは?というような心配ですね。

A氏:香港の証券会社で商品を買ったとしても原資産(証券が表している資産)が香港にある訳ではありません。たとえば、香港の証券会社で日本株を買った場合を想像してみてください。株式が表している資産はほとんど日本にありますから、中国政府が手を出すことはできません。

香港の金融の中心地からすぐ近くにある庶民的な商店街
筆者撮影

インタビューを終えて

海外のプライベートバンクで資産運用するのに比べ、海外の証券会社で商品を買うハードルが高くないことに驚いた方もいらっしゃるかも知れません。ぜひ、海外の証券会社にお話を聞いてみてはいかがでしょうか。