東京都知事選挙:中高年者の失望

報道によると東京都知事選挙は現職が大きくリードしているようだ。「若者の手取りを徹底して増やす」を掲げている蓮舫氏は苦戦しているようだ。誰が考えたのかはわからないが、このキャッチコピーは高齢者を敵に回すような謳い文句だ。

東京都の高齢者人口は23%弱である。50歳以上65歳未満は21%であるので、選挙権を持つ人の約半数が50歳以上となっている。60歳を過ぎると年収がかなり減ることが多い。スーパーマーケットなどで生鮮食料品価格の上昇は数%ではなく、数十%を実感するなかで、この蓮舫氏のコメントに失望している中高年は多いのではないだろうか?

私は2年少し前から東京都民ではないが、報道を見ている限りにおいては、高齢者の一人として複雑な思いだ。

少子化対策は国として重要な課題だが、若年層の所得増加で片付く問題ではない。子育てを支える社会構造にしていく必要があるのだが、その点に関しての考えが見えてこない。いずれにせよ、高齢者が楽に生活をしている状況でもないので、演説を聞いた高齢者は失望するだろう。選挙対策の失敗だと思う。

そう考えると、選挙戦略としては失敗だ。だれがどのようにして選挙戦略を決めているのかわからない。

最近、テレビでも、YouTubeやX、Twitterなどでの人気若手コメンテーターが多く、国民全体の30%を占める高齢者の意見や考えが反映されることが少ないように思う。若者だけを対象にした人気取りだけではなく、本当に国民・都民全体を視野に入れた対策が必要ではないのか?この国を支え続けてきた高齢者の存在感がなくなってきているおかしな国だ。


編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2024年6月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。