都民のウェルビーイング。
well(よい)とbeing(状態)からなる言葉のことを言います。世界保健機関(WHO)では、ウェルビーイングのことを 個人や社会のよい状態と定義されています。国でもデジタル庁を中心にウェルビーイング(地域幸福度)指標の導入などに取り組んでいたりします。
ウェルビーイングの視点での政策論争はあまりみられないのは残念なところです。
いや、そんなキラキラワードは意味不明だ!ウェルビーイング以前の問題だ!という方も多いでしょう。
物価高騰は近年すごいものがあります。建設費の高騰を受けて23区の新築マンションの平均価格も1億円を超えてしまっています。「タワマンを変えるのは上流国民か外国人」「普通に生きていても東京に住めない」という実感を多くの人が感じていると思います。今回は都民の生活実感を確認しましょう。
(前回:東京経済は本当に順調なのか?:EBPMで見る都知事選政策検証①)
都民の考え
令和5年度都民生活に関する世論調査を見てみましょう。その結果を見ると、3つの面から特徴が明らかになります。
第一に、「暮らし向きは苦しくなった」都民の割合は48.5%と前年より増加していることです。
しかも、「苦しくなった」は昨年より8ポイント増加し、「変わらない」は8ポイント減少しています。特に、男性は40代が56.1%と最も多く、女性は18 ~29 歳が46.8%と最も多いです。
急激に上昇しているこの理由は、物価上昇などが72.3%、税金や保険料の支払い増加が40.8%が主な理由です。
第二に、生活満足度が高くはないことです。
現在の生活に満足しているか聞いたところ、満足は47%、不満は50%となっています。完全に二極化、2つの大きく割れています。生活満足感も暮らし同様に厳しい数字となっています。
我慢しても住みたい?
第三に、東京都の調査には「住みたいか」という点、定住意向は増加しています。
今住んでいる地域に今後も住みたいと思うかという設問に、「住みたい」は72%、「住みたくない」は10%となりました。 「住みたい」理由は、「買物など日常の生活環境が整っているから」53%、「自分の土地や家があるから」42%、「地域に愛着を感じているから(住み慣れているから)」38%となっています。
まとめますと、生活は苦しくなっていて、生活満足感と不満足感は拮抗。しかし、我慢してでも東京に住みたい人が多いと解釈できます。
都民の実感はどこに?
今回の都知事選を見ていて、物価上昇、税金や保険料の支払いという庶民の苦しみに各候補は対応できているのだろうかと正直思ってしまいます。本来なら、物価上昇対策としての給付や減税などの政策や実施方法で競争してほしいものです。
蓮舫さんは「非課税世帯への家賃補助」を掲げていますが、他の有力候補者のエリートの皆さんにはその声は伝わっていないのか、声が届かないのか、理解してもらえないのか、わかりませんが、その点を考えてもらいたいです。
高層マンションが立ち並び、マンション価格は高騰。政治経済文化の中心、政治関係・官庁・司法・メディア・大企業がほとんど東京に位置していて、グローバル企業も世界から集まってきて、それなりに人も集まります。しかし、足元の都民の暮らしや生活実感は苦しいままです。東京に我慢してでも住み続けたいという多くの実感を、候補者はどう考えるのでしょうか。