バイデン大統領が不出馬表明して、カマラ・ハリス副大統領が民主党候補になる見通しだ。世論調査では接戦になるとしている。
このハリス氏について、私は4年前のアゴラで「いずれにせよ、11月の選挙で副大統領として当選すれば、78歳で大統領になるバイデンが任期中に昇格する確率も統計的にはということだが、20%程度あり、それと2024年に大統領候補となる可能性を併せたら2025年にハリスが大統領になるのは、50%くらいには達するはずなのである」と書いた。
その4年前の記事のリンクと抜粋を下記に添える。
ロイター通信が22、23両日に実施した調査では、ハリス氏の全米支持率が44%でトランプ氏の42%。15、16両日の調査では両氏とも44%だった。ロバート・ケネディ・ジュニア氏との3者対決では、ハリス氏が42%、トランプ氏が38%、ケネディ氏が8%。
一方、米公共ラジオ(NPR)などが22日に行った調査では、トランプ46%、ハリス45%。今月初めの調査で2%だった態度未定者が9%に増加で混沌としている。
私は現時点では、トランプに70%弱の勝機があると思う。ひとつは、総得票数で2~3%リードして初めてスイングステーツなどで強いトランプと互角だということだ。
それから、現在のハリスの高支持率は、バイデンでなくてよかったという安堵感と新星へのご祝儀だ。
そもそも、討論会をバイデンから申し出て、出来が悪かったので選手交代というのはフェアでない。そして、ご祝儀相場が終われば、徐々に馬脚が現れるだろうからだが、ただ、意外に健闘しておれば雰囲気が変わる。
なお、私は『アメリカ大統領史100の真実と嘘(扶桑社新書)』という本を書いていまも現役だ。ぜひ、読んでいただきたい。
以下は4年前の3つの記事の抜粋である。
副大統領最有力とされるカマラ・ハリスという女性 2020.06.27 18:00
民主党大統領候補にほぼ確定しているバイデン前副大統領は、すでに副大統領には女性を選ぶとしていて、現在、選考委員会でインタビューや身辺調査が行われている。
いずれにせよ、11月の選挙で副大統領として当選すれば、大統領に昇格する可能性と、2024年に大統領候補となる可能性を併せたら50%くらいには達するはずなのである。
バイデン氏は副大統領候補を8月1日までに決めるとも言われているが、ここへ来て、日米のマスコミには、かなり突っ込んだ予想をする人が増えているが、最有力候補はカマラ・ハリスだとみられている。カマラ・ハリスの父はジャマイカ出身、スタンフォード大学の経済学教授でアフリカ系と欧州系の中間的な風貌である。母親はチェンナイ出身のインド人医学者でカーマラという名もサンスクリット語で「蓮の女性」を意味する。両親が離婚後に母親と暮らしたのでインド系としての意識が強そうだ。
母親の仕事でモントリオールで育ったあと、黒人大学であるハワード大学を卒業。カリフォルニア大学ヘイスティングス・ロー・スクールで法務博士号を取得。2003年にサンフランシスコの地方検事、2010年にカリフォルニア州の州司法長官に選出され、2016年に上院議員になった。
知的に高い両親に育てられたこともあり、しばしば、女性のオバマといわれ、人間関係をつくるのにも良好で、とくに、地元ではナンシー・ペロシ下院議長やブラウン州知事からも支援され、大統領候補としても有力で、候補予定者討論会にも参加した。
ただ、検察官時代に犯罪者に厳しかったというのでリベラル層の支持が上がらなかったのと、資金調達が不発に終わり、1月3日には撤退した。
経歴やスター性は申し分ないし、人種的にも多様なルーツをもっているので、白人からの拒否感も小さく、すぐにでも大統領が勤まる安心感もあるのだが、バイデン氏がスクールバス制度(居住地域に関係なくスクールバスでさまざまな地域の学校に子供たちを通学させること)に反対していたことを、昨年7月5日の民主党予備選挙の討論会で攻撃したことを、バイデン本人も夫人も忘れてないともいわれる。
美しいインド系カマラ・ハリスの副大統領候補指名 2020.08.12 09:00
民主党大統領候補にほぼ確定しているバイデン前副大統領は、副大統領には女性を選ぶとしていたが、ついに、カリフォルニア州選出のカマラ・ハリス上院議員を指名した。
CNNがハリス議員を称賛するメモをバイデン氏が持っているのが、7月29日にカメラに収められたと報じていたが、なぜか、副大統領候補の発表は延期されていた。
すぐにでも大統領がつとまるといわれるが、昨年のテレビ討論でバイデン氏を論破したとか、けっこう美人なのでバイデン夫人が難色を示しているといわれてきた。
かつてオバマ前大統領も彼女を「全米で最も美しい州司法長官(the best looking attorney general)」と誉めて謝罪に追い込まれたことがある。
有能なだけでなく、オバマ前大統領や地元サンフランシスコ選出のペロシ下院議長のお気に入りでもある。少しでもアフリカ系の血が混じっていると黒人扱いするアメリカ人の分類では黒人だが、コーカシアンの流れを汲むインド人とのハーフだ。ジャマイカ出身の父親も白人とアフリカ系の混血らしい外観であって、“黒人らしくない黒人”であることはオバマ前大統領と同様に白人の支持を受けやすいという指摘もある。
本人は自分は「アメリカ系」だといっている。これは先住民系の意味と誤解する日本人も多いが、国勢調査での回答として、先住民系とは別に用意されている「先祖のことは意識せずアメリカ系と意識している人たちを指す」分類である。
ここしばらく、副大統領候補の選択は大統領選挙の帰趨に大きな影響を与えているが、特に、今回、注目度が高いのは、バイデン氏が就任時に78歳であり、任期を全うできない可能性も統計的にはそれなりに高く(20%前後か)、2024年に再選をめざして立候補しない可能性はさらに高いからである。
いずれにせよ、11月の選挙で副大統領として当選すれば、78歳で大統領になるバイデンが任期中に昇格する確率も統計的にはということだが、20%程度あり、それと2024年に大統領候補となる可能性を併せたら2025年にハリスが大統領になるのは、50%くらいには達するはずなのである。
また、日本国内政治への影響としては、同じ弁護士出身でややテイストが近い稲田朋美・自民党政調会長にとっては追い風になるのかもしれない。
一方、サンフランシスコ出身のハリスの指名は、姉妹都市提携を解消した当時の大阪市長である吉村大阪府知事にとってはごたごたの種になってくるだろう。
(本稿は6月27日に掲載した「副大統領最有力とされるカマラ・ハリスという女性」をもとに書き直したものである)
「トランプ後」のアメリカと世界はこうなる 2021.01.23 14:01
私はもともと、バイデンの勝利を予想していたし、トランプの方が日本に良いとも思っていなかった。トランプが日本にとって都合が良いことが多かったとしても、それは安倍晋三が首相の場合であって、ほかの人が首相であれば、トランプの気まぐれの被害は免れないから、トランプの方がいいという理由はあまりなかった。
だいたい、バイデンとハリスが極左だとかいうことになぜなるのか?バイデンはどう見ても、良くも悪くもワシントンの常識人だ。頭は良くなさそうだが、義理堅いし誠実だ。
経済政策で社会主義的だとかいうが、国民皆保険、最低賃金の引き上げ、富裕層課税の強化、パリ協定への復帰などのどこが社会主義なのか。
バイデンは賢明にも、ウォーレンやサンダーズのような扱いが厄介な老人を閣僚にはせず、一安心だ。ただ、このままでは彼らもすまないから、もう少し下のレベルでは急進派を処遇せざるを得ないだろうし、次の大統領選挙が近づいてくると話はややこしくなり始めるだろう。
ハリス副大統領が親中派だというのも、誰も根拠を示していない。むしろ、インド系だからインドに傾斜する可能性が大きいし、それなら中国にとっては煙たいことだ。また、彼女の親分であるペロシ議長は、アメリカの高官で初めて広島の原爆慰霊祭に参列してくれたし、中国の人権問題には厳しい。