音楽の都ウィーンで8日から3日間、米国の世界的なシンガーソングライター、テイラー・スウィフトさんのコンサートが開催される予定だったが、イスラム過激派グループ「イスラム国」(IS)が襲撃テロを計画しているという情報が入ったため、主催者側が7日夜、3日間のウィーンコンサートを全て中止すると明らかにした。主催者側のバラクーダ・ミュージックは「オーストリア政府からイスラム過激派によるテロの危険があることを確認した。われわれはコンサートを中止する以外、他の選択肢がなかった」と語り、10日以内ならばチケットは払い戻せるという。
オーストリア内務省は7日、ニーダーエステライヒ州のテルニッツでISと接触のある19歳と18歳の男性の2人をテロ容疑で逮捕した。爆弾用と思われる化学物質が見つかったという。19歳の男性はオーストリア国籍を有しているが、両親は北マケドニア出身だ。インターネット上でイスラム過激派と接触したといわれ、今年7月上旬ISの現指導者に「忠誠の誓い」を立てている。未確認情報だが、治安関係者は更なる容疑者を捜査しているという。容疑者のテロ計画の重要な手がかりは、米国の諜報機関から得たという。
コンサートは3日間ともウィーンのエルンスト・ハッペル競技場で開催される予定だった。前売り券は1年前に既に完売された。3日間には17万人のファンが集まると予想されていた。
スウィフトさんのコンサートは国の経済にも大きな影響を与えるといわれるほど、多くの人と金が動くといわれる。カナダのトルドー首相が「スウィフトさん、カナダでコンサートを開いてください」と自ら嘆願したという話が報じられたほどだ。ウィーン公演のため海外からスイフト・ファンが集まることもあって、スウィフト価格といわれるほどホテルの宿泊代は高騰、コンサート関係のレストラン、ファンエリアでは全て特別価格となっていた。
数年前、アメリカのシアトルでスウィフトさんのコンサートが開かれたが、その時M2.3の地震が発生した。コンサートに集まった7万人余りのファンたちが地震を起こした、ということで大きな話題となった。地震の規模は小さいが、地殻プレートによって起きた地震ではなく、人間が測量できるほどの地震を起こしたことで、世界の地震学者も驚いた。
原因は明らかだった。多目的スタジオ、ルーメン・フィールドでのコンサートに集まった約7万人のファンの歓声と大音量の音楽とダンスがミックスした結果というわけだ。ワシントン州立大学の地震学者によると、「スウィフト・クエイクは、1秒あたり0.011メートルの加速を引き起こし、地震スケールではM2.3の強さに相当する」という。(「スウィフト・クエイク(地震)」発生? 2023年8月1日参考)
更に驚いたことは、スウィフトさんのどの曲がファンたちを興奮させ、地震を発生させたかも分かったというのだ。米紙ニューヨーク・タイムズの調査によると、スウィフトさんがスーパーヒット曲「Shake It Off」(クヨクヨしない)を歌った時、地震計が最も強く反応したという。地震学者やメディアは早速、「スウィフト地震」と名付けた。
ウィーンでも「スウィフト地震」が起きるものと期待されていた矢先、テロの危険のため公演がキャンセルされたと聞いて、泣き出すファンもいた。ファンの一人は「1年前からウィーンのコンサートを楽しみにしていたのに・・・」と悔しがっていた。
スウィフトさんは8月に入ってポーランドの首都ワルシャワでコンサートを終え、ウィーン公演に入る予定だった。ワルシャワ公演では環境団体に通行を妨害されたり、ウィーン公演でテロの危険で公演が中止されるなど、スウィフトさんの公演活動にハプニングが出てきている。イングランド北西部サウスポートで7月29日、ダンス教室でスウィフトさんのダンスを学んでいた3人の少女が少年に刃物で殺害されるという事件が発生したばかりだ。
なお、スウィフトさんの人気は11月の米大統領選挙の行方にも影響を与えるといわれ、スウィフトさんが民主党のハリス副大統領を支持するといえば、多くの若い世代の有権者がそれに従うだろうといわれ、トランプ前大統領陣営はスウィフトさんの言動に神経を使っている。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2024年8月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。