2024年米大統領選、投票日:新大統領就任までのタイムライン

トランプ候補とハリス候補
両候補インスタグラムより

バイデン大統領の撤退、ワルツ副大統領候補、民主党大会、ケネディ候補の撤退と7月後半から8月は大きな動きがあった。

8月に入ってから全米レベルの世論調査では、ハリス副大統領のリードが続いているが全米レベルでリードしているからといって意味がない。あくまで全米で538人いる選挙人の過半数である270人以上を獲得した候補が当選する。なので、州別でみていかないとわからない。

選挙予測で著名なCook Political Reportは、年初~バイデン撤退以前はWI・MI・PA州(ウィスコンシン・ミシガン・ペンシルベニア州)のブルーウォールを 「Toss Up(接戦)」に指定していた。
その後、バイデン大統領が大統領選から撤退し、ハリス副大統領はトランプ氏との差を縮めた。今まではブルーウォールの3州で結果が決まる状況が、例年同様の接戦州になってきた。

Cook Political Reportは、8月8日に「Lean R(共和党が少しリード)」として指定していたAZ・NV・GA州(アリゾナ・ネヴァダ・ジョージア)の3州を「Toss Up」にアップデートした。さらに、8月27日にはノースカロライナ州を 「Toss Up」 にアップデート※0)

GA州については、トランプ氏がケンプ知事を強く非難しており、共和党はGA州を獲得するために両者が協力関係にならないといけないことを強く危惧している。今のところは落ち着いたが、また再燃する可能性もあり共和党にとっては頭痛の種だろう※1)

8月はハリス副大統領がトランプ氏との差を縮小していったものの、最新世論調査を見る限りは両者とも僅差だ。ケネディ候補が撤退して、トランプ氏の圧倒的なリードになる州があるかと思いきや、思ったほど伸びているわけでもない。まだ決めかねている有権者も数パーセントいるので本当に接戦の状況といえよう。

大統領選挙は、不確実性が高まるイベントだ。結果がでれば不確実性も低下するのだが、2024年大統領選も結果が投票日から数日以内に決定するとは思えない。そのため、投票日以降にどういうタイムラインで動いていくことになるかを早めに整理しておく。

投票日~大統領就任までのタイムライン

【2024年】※米国基準の日程
11月5日:投票日/各州の投票結果の公表を開始
12月11日: 選挙に関する紛争の解決期限
12月17日:各州の選挙人が投票
12月25日まで:州の選挙人の投票結果(Certificates of Vote)を上院議長・公文書保管人など計6通を送付


【2025年】
1月1日:債務上限停止の期限
1月3日予定:連邦議会 新会期スタート/下院議長選挙
1月6日:選挙人票の集計を議会合同会議が実施
1月20日:大統領就任式

(参照元:Key Dates and Events for State Officials and Points of Contact

選挙人は、得票者と各々の得票数を記した一覧表を作成し、これに署名し認証した上で、封印をほどこして上院議長に宛てて、合衆国政府の所在地に送付する。 上院議長は、上院議員および下院議員の出席の下に、すべての認証書を開封したのち、投票を計算する。 最多数の投票を得た者の票数が選挙人総数の過半数に達しているときは、その者が大統領となる。

アメリカ合衆国憲法 第二章 第一条[第3項]から抜粋

再集計が発生する可能性もあるが、12月11日までに再集計やら選挙をめぐる裁判などは決着をついている必要がある。12月17日には、各州の選挙人が集い投票を行う。

その後、選挙人は投票後、上院議長(副大統領が担う役割)に宛てて投票結果(Certificates of Vote)を送付することが合衆国憲法に明記されている。その時に、受け取るのはハリス副大統領なので、懸念をもたれている。

しかし、現在のルールをよくよく確認すると選挙人は投票結果の原本6部を作成して、そのうちの1通を上院議長(ハリス副大統領)に送付するだけだ。選挙管理官、地方裁判所、公文書保管人などにも送付する※2)。そのため、上院議長が受領してから不正を働くというのは、同様の文書が保管されているので難しいだろう。

11月5日の投票終了時間と郵便投票の集計スケジュール

2024年総選挙は接戦となっている州だけおさえておけばよいだろう。

2020年はコロナ禍ということもあり、投票日以降に届く郵便投票を延長して有効とする州が一定数あったが、今年の接戦州は今のところ投票日までに到着したものを有効としている※3)。なので、2020年のように投票日以降も郵便投票の集計のせいで1~2週間もかかるということはなさそうだ。

投票終了時間
(日本時間6日)
不在者投票/郵便投票集計開始日※4)
(東部標準時間)
ジョージア
GA
AM9時 投票日当日朝7時~
(日本時間5日21時~ )
ノースカロライナ
NC
AM9時半 投票日当日
ミシガン
MI
AM10時
(一部AM11時)
投票日当日朝7時~
(日本時間5日21時~ )
ペンシルベニア
PA
AM10時 投票日当日朝7時~
(日本時間5日21時~ )
アリゾナ
AZ
AM11時 郵便受領後~
ウィスコンシン
WI
AM11時 投票日当日
(日本時間5日21時~ )

とはいえ、今年も投票日に大統領選の結果は出ないと考えたほうがよいだろう。

まず、2020年総選挙の時も集計が遅くて問題になったペンシルベニア州は、今年も投票日当日からしか郵便投票の郵便開封ができない。ウィスコンシン州も同様だ※5)

2020年のコロナ禍とは異なり、郵便投票数は減少するだろうが、それでも当日からしか郵便投票の開封はできないようだと投票終了してすぐに公表するのは難しいだろう。すでに数日かかることが予測されている。

なお、ウィスコンシン州の投票集計は、直接電子投票機(DRE)・手集計・光学スキャンが混在している。さらに、多くの投票所は不在者投票を1か所の集計場所に集めてから集計される。この不在者投票が集められる時間帯は、投票日当日の夜遅くあるいは翌朝に届くこともあるのだ※6)

このペンシルベニア州とウィスコンシン州の集計が出てこないというのは、非常に厄介な状況になる。選挙予測をみていくと、「Toss-up」となった6州もミシガン州以外は共和党が獲得するのではないかと思われる。そうなると、PA州とWI州の結果が出てこないので、勝者がどちらになるかわからない状況が数日続くことになる。

そして集計結果がわかったとしても、接戦が予測されることから再集計になる可能性もある

25州は得票差次第で自動的に再集計をする規則が設けられている。特に得票差の基準なしで候補者または有権者が再集計を要求できる州もある。

こちらもNCSLを参考に接戦州だけまとめた※7)

自動的に再集計となるケース 再集計の要求
GA 0.5%以内の得票差かつ候補者の要求に応じて再集計 選挙管理者および有権者が0.5%以内の得票差なら再集計を要求できる
NC 得票数が0.5%以内だった場合、候補者が再集計を要求できる
MI 2000票以内の差の場合、 再集計 候補者が要求可能
PA 得票差が0.5%以内の場合は 再集計が必須 (自動集計は、選挙後の第3水曜日の次の第1火曜日の正午までに終わらせる) 有権者から
AZ 得票差が0.5%以内の場合は、再集計 再集計のルールなし。裁判所が再集計を命じることもある。
WI 候補者または選挙人から

こうなってくると、「12月11日:選挙に関する紛争の解決期限」までだらだらと長引くことになるかもしれない。それでも、各州の選挙人が集い投票を行う12月17日までに決着がつけば、まだましだろう。問題は、それ以降もまた負けを認めない場合だ。

平和な政権移行が実現することを心から願うが、トランプ陣営が最後まで負けを認めない場合の想定もしておかなくてはいけないのだろう。

【参考資料】
※0)North Carolina Moves to Toss Up; Minnesota and New Hampshire Shift to Likely Democrat
※1)Trump, Kemp look to present united front in must-win Georgia
※2)Instructions and Guidance for State Officials and Points of Contact
※3)Receipt and Postmark Deadlines for Absentee/Mail Ballots
※4)When Absentee/Mail Ballot Processing and Counting Can Begin
※5)Pennsylvania presidential election results could again take days to count
※6)Effort to allow for early processing of Wisconsin absentee ballots stalls out
※7)Election Recounts


編集部より:この記事は長谷川麗香氏のブログ「指数を動かす米議会」2024年9月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「指数を動かす米議会」をご覧ください。