前日のコラムでコンサルタント会社マーサーの世界の年金制度に対するランキングを紹介し、オランダが連続世界一の座を確保したことを報告したが、それではなぜオランダの年金制度が調査対象48カ国の中で最も優れているのかをマーサー(Mercer)CFA協会の報告とChatGPTの助けを得てまとめた。
オランダの年金制度が世界一と称される理由は、その制度が高い財政的持続可能性、公平性、充実した給付内容、そして老後の生活保障に優れている点にあるという。オランダの年金制度は、3つの主要な支柱(ピラー)から成り立っている。
1.第一の柱:基礎年金(AOW:AOW:Algemene Ouderdomswet)
オランダの第一の柱であるAOWは、国が提供する公的な基礎年金で、全国民に対して普遍的に給付される。これは居住年数に基づく制度であり、20歳から67歳の間にオランダに居住していた期間に応じて支給額が決まる。
AOWの年齢:67歳から受給が始まるが、将来の平均寿命の伸びに合わせて受給開始年齢が変更される可能性がある。
受給資格:最低10年間オランダに居住していれば、部分的に年金を受け取る資格がある。完全な年金を受け取るには、67歳までに最低45年間オランダに住む必要がある。
給付額:単身者、または世帯主であるかによって異なるが、生活の最低限のニーズをカバーする程度の額が支給される。
財源:AOWは「賦課方式」で、現役世代の労働者が納める税金と社会保険料によって支払われる。
2.第二の柱:職域年金(企業年金)
第二の柱は、雇用主と従業員による職域年金制度だ。多くの場合、企業や業界ごとの年金基金によって運営される。この制度は、AOWでカバーされない部分を補完する役割を果たす。
強制加入:オランダでは、多くの企業が労働組合や業界団体と契約している年金基金に従業員を加入させる義務があり、結果的にほとんどの労働者がこの年金制度に加入している。これはオランダの年金制度の大きな強みだ。
拠出:雇用者と労働者が給料の一定割合を年金基金に拠出する。この割合は通常5~7%だが、職業や業界によって異なる場合がある。
給付:退職後は、職域年金がAOWに追加されて支給される。給付は通常、退職前の給与の一定割合(おおよそ70%)をベースに計算され、これにより退職後も安定した生活が確保されるようになっている。
3.第三の柱:個人年金(自助努力)
第三の柱は、個人年金や他の老後資金の蓄えを指す。この柱は、自営業者やAOWおよび職域年金で十分な収入を得られない人々にとって特に重要だ。
自営業者や非正規雇用者は、第二の柱の職域年金に加入していないことが多いため、第三の柱を通じて自分で資産を蓄える必要がある。
個人年金は税優遇措置があり、老後資金を計画的に蓄えるためのインセンティブが設けられている。
「オランダの年金制度が世界一と言われる理由」
- 高いカバー率:職域年金が事実上強制加入であり、AOWと併せることでほとんどの人が老後に安定した収入を得ることができる。
- 財政的な健全性:オランダの年金基金は、厳しい規制と慎重な運用により、財政的な持続可能性が確保されている。多くの年金基金は十分な資産を蓄えており、長期的な給付の安定性が高いと評価される。
- 公平性:公的年金は全国民に対して公平に提供され、職域年金も幅広い労働者にカバーされている。
- 老後の生活保障:AOWと職域年金を組み合わせることで、多くのオランダ人は退職後も以前の生活水準を維持できるよう設計されている。
以上、オランダの年金制度が「世界一」と評価される理由だ。当方は年金制度の専門家ではないので、詳細な内容に関心がある読者はマーサー社の報告を一読されることをお勧めする。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2024年10月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。