豪州海軍が日本の護衛艦の調達を検討:この機会を生かすためにできること

オーストラリア海軍のフリゲート艦共同開発計画が、いよいよ佳境を迎えています。日本が総力を結集して推進してきた海上自衛隊の最新鋭護衛艦「もがみ型」が、最終候補に残りました。今後、ドイツとの一騎打ちにより選定の帰趨が決せられることとなります。

こうなると、8年前の潜水艦共同開発における挫折の記憶が、否応なく脳裏に蘇ります。この痛恨の経験を糧として、今こそ日本の技術力と外交力の真価が問われる時が来たと言えるでしょう。

護衛艦「もがみ」型 防衛省HPより

高性能の日本の潜水艦はなぜ選ばれなかったのか?

2015年、オーストラリア政府は次期潜水艦12隻の共同開発計画を発表しました。その有力候補として日本が注目を集めていました。

潜水艦に期待される敵艦や敵潜水艦の探知および攻撃、戦略的抑止力の提供、海上封鎖などの任務においては、敵に発見されないこと、すなわち静粛性が死活的に重要です。日本の潜水艦はその面での性能が国際的に高く評価されていました。

日本製の潜水艦の動力は原子力ではなくディーゼルなのですが、その卓越した技術により、オーストラリア政府は日本を共同開発先に選ぶと予想されていました。

しかしながら、最終的に選定されたのは日本ではなく、フランスの潜水艦でした。この背景にはオーストラリア国内の政権交代が大きく影響していました。

2015年9月、ターンブル首相の就任に伴い、潜水艦調達方式が変更され、フランスとの共同開発路線へと舵を切ることとなったのです。当時のオーストラリアは中国との関係が比較的良好であり、ターンブル首相も対中関係を重視する姿勢を鮮明にしていました。この外交的背景もまた、選定結果に影響を及ぼしたとされています。

さらに、日本の提案がオーストラリア国内経済への寄与という観点でフランスに劣っていたことも一因と考えられます。

日本のメーカーはオーストラリアに製造拠点を持たず、共同開発といえども利益の大半が日本側に偏ると判断されたのです。加えて、日本国内における防衛産業を支える体制の未整備も課題として浮き彫りになりました。政府は一定の協力を行ったものの、情報提供や外交的な働きかけにとどまり、産業全体を支援する基盤が十分に構築されていなかったのです。この結果、日本は大きな機会を逃すこととなりました。

苦い経験を経て、防衛産業政策を大転換

日本は防衛産業政策の大幅な転換を図りました。生産基盤の強化に取り組み、主要メーカーのみならず下請け企業まで支援を拡大する仕組みを整備しました。

防衛費が停滞していた時期には、多くの企業が防衛産業から撤退し、国内の生産基盤は弱体化していましたが、新たな政策の下でその状況は改善されつつあります。2023年10月には「防衛生産基盤強化法」が施行され、この分野の強化が制度的に支えられることとなりました。

また、輸出促進の一環として「防衛装備移転円滑化基金」が設立され、企業が海外市場において戦略的に展開できる環境が整備されています。これにより、政府と企業が一体となって海外市場への進出を推進する体制は格段に整備されました。

共同開発メリットは絶大

国外に市場が拡大されれば、コスト抑制や技術交流の促進といった絶大な効果が見込まれます。イギリスやイタリアとの次期戦闘機の共同開発プロジェクトもその一例と言えますが、豪州との共同開発が進めば対米一辺倒だった日本の武器調達において選択肢が広がることにもなります。

日本にとってオーストラリアはすでに準同盟国です。中国の海洋進出が進む中で、太平洋の北に位置する日本と南に位置するオーストラリアが協力することは、安全保障上大きな意義を有します。今後両国の間でシーレーン防衛の協力も進むでしょう。そのような安全保障環境の中で、わが国の自衛隊と豪州海軍の艦艇が共通基盤を持つことはオーストラリアにとっても大きな意味を持ちます。

オールジャパンで取りに行くべき

オーストラリア政府は来年春には共同開発先を選定します。自民党国防部会では「ディスカウントしてでも取りに行くべきだ」との声も上がっていました。ここは官民一体となって成果を出すことが肝要です。私自身も、政審の国防担当として政府を最大限サポートしていく所存です。

石破茂総理は総裁選でアジア版NATOを提唱しました。NATOには東方拡大構想もあります。日本とオーストラリアがこの分野で先陣を切ることができれば、それは歴史的な一歩となるでしょう。


編集部より:この記事は、衆議院議員の細野豪志氏(自民党・静岡5区)のブログ 2024年12月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は細野豪志オフィシャルブログをご覧ください。