ここまでの記事では、佐倉市のレクリエーション施設「草ぶえの丘」の指定管理者選定結果に関する議会の振る舞いを確認してきました。
(前回:佐倉市草ぶえの丘の指定管理者選定問題③:指定管理者否決の問題点と謎)
具体的には、「佐倉市ユーカリが丘の開発事業者・山万」が「落選」した指定管理者の選定について、連続2回にわたり不可思議な否決を繰り返した「さくら会等議会主流派」の議決行為を概観しました。
以上の最後の否決から3年が経過した本年3月の予算委員会で、佐倉市はまたもや当該施設の指定管理者選定事業に関する予算を、議会に上程したのです。
仕様の大改訂
私の立場を申し述べておくと、本施設を指定管理者に管理していただくことは、民間のノウハウ活用、予算の最適化などの観点からおおいに賛同します。一方で、本年3月に上程された指定管理の仕様概要には、驚かされる内容変更がありました。
大きな変更点は以下二点です。
・指定管理期間:過去実績としては5年以内としていたが、10年に延長
・指定管理費用:前回の公募では年間上限額6,800万円としていた管理費用を1億円に増額
指定期間10年の問題点
佐倉市には指定管理基本方針があります。
そこには、指定期間は「5年を基本」としており、5年以上とする場合には「その必要性を満たすための最小限の範囲に限るものとします」という記述があります。
前稿にも書きましたが、全国の自治体の指定管理施設では、指定期間5年以内が92.4%です。その理由は、繰り返しになりますが、長い指定期間により競争原理が働かなくなり、「予算の既得権」による官民癒着の温床となることを避ける目的です。
例えば、東京都目黒区は、10年の指定期間を例外的に認めていますが、「福祉サービスを提供する施設などのうち特に利用者との信頼関係の構築に時間を要する施設で、長期的に安定したサービスの提供が求められる施設について」という厳しい規定を設けています。
その意味で、佐倉市の「5年を超える場合も最低限に抑える」とする基本方針は、その背景をふまえてのものと理解できます。
しかし、これまで実績ベースでは3年から5年だった同施設の指定期間を、今回から一気に10年にする、ということでした。
佐倉市の基本方針に照らしても、延伸も「最低限に抑えることが必要」な指定期間ですから、一気に10年にするのであれば説得的な説明が求められることは明らかです。
しかし、事前に配布された資料ではそのような説明は一切ありませんでした。
予算年間1億円の問題点
年間の管理費予算が、2020年の仕様で上限6,800万円、今回は年間上限約1億円となっていました。
昨今の物価高騰を考えれば、ある程度のアップは理解できます。
一方で、前回の指定管理の審査があった2020年から2024年までの期間の消費者物価指数の物価上昇率は5.47%ですから、2020年の同施設の管理費上限額が約6,800万円だったことを考えると、単純に計算すれば
6700万円 ×(1+0.0547)= 7,171.96万円
約7,172万円にしかなりません。
いずれにしても、何にどれだけかかるからこの金額になりました、という具体的、説得的な背景がなければ、予算の議決権を与えられている議員としては承知することはできません。
しかし、事前に配布された資料ではそのような金額内訳は一切ありませんでした。
草ぶえの丘は、佐倉市のレクリエーション施設です。その意味で、目黒区の厳しい規定にあるような「長期的に安定したサービス」を求められるものではなく、むしろ市民ニーズに合わせたフレッシュなレクリエーションを提供できるということこそが重要なはずです。
しかし、3月の予算委員会で上程された「10年、年間1億円」の指定管理は、ともに同施設を既得権の塊にしてしまう可能性を秘めた、きわめて危険な仕様と感じました。
次回は、この「謎の多い仕様の大転換」に関する、佐倉市議会での審議についてお話しします。
(次回につづく)
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