黒坂岳央です。
世の中には「人脈は大事だ!」と強調する人がいる。確かに人脈が重要であることはよく分かる。筆者もビジネス関係でこれまで多くの人脈に支えられてきた経験があるので決して否定はしない。
問題は「人脈の重要性」ではなく「形成プロセス」である。人脈はあちこち駆け回って「意識して作るもの」ではなく「自然にできるもの」と考える。そのため、「人脈作りのテクニック」からはテイカー気質を感じることが多く、個人的にあまり好みではないのだ。
「人脈=知り合う」ではない
たまに有名ビジネスマンと写真を撮って「自分はこんな大物と人脈を持っています!」というPR投稿がある。まあ駆け出しの若いビジネスマンなら、誰しも最初は浮足立ってそうなるのは理解できる。
問題はそれを周囲に吹聴し続け、権威性に使ってしまうことだ。こうなると色々と問題が出てくる。
まず、権威性作りの道具として使われてしまう側の大物は確実に気分が良くないだろう。お願いされたから撮影に応じただけで、それで変な投稿に使われあらぬ噂を流されると信用問題も出てくる。極めつけが詐欺に使用されることだ。数年前によくあったのが「自分はこんな大物と人脈がある→そんな自分からこんな商材を販売!」という流れだった。
加えてこれは肝心の本人の権威付けにもなることはない。人脈とは共通のミッションを持って協業する前提で作られるものであって、どちらかを一方的に支援し続ける関係性は自然ではないので、周囲からも「これは一方的に自分が人脈ができたと言っているだけだな」とわかってしまう。
「この人に近づいたら、自分も人脈PRの道具にされてしまう」となれば人は敬遠してしまうだろう。人脈自慢は褒められた行動ではないのだ。
人脈は自然にできるもの
本来、人脈は自然にできるものである。
筆者は2017年からテレビ、ラジオ、ネット記事、雑誌、出版社を通じて仕事をしてきた。基本的には先方から企画を頂いて仕事をするのだが、こちらから企画アイデアを提供することも多い。そんな時、一般公募はしておらず募集を受け付ける窓口がなくても、先方の担当者に直接提案することで仕事につながっている。
「前任者が退職しましたが、黒坂さまの連絡先が残っていたのでお仕事のお願いをしたく連絡しました」となることも何度もあった。先方の会社とつながっておけば、担当者が変わっても仕事は継続する。
一度、一緒に仕事をして先方が満足していただけたら、二度、三度と仕事が継続していく。その内、お互いに信頼関係が生まれることで一般的にリーチできないネットワークを通じて仕事ができる。これが本来の人脈であると考えている。
そのため、まだ何も信頼関係も実績もないのに「さあ人脈を作りましょう」というのはおかしな話で、その背後にあるのは「自分に仕事(お金)をください」という自分本意な考えである。一方で自然な人脈は自分は仕事を提供し、先方は成果物を得られるのでWin-Winの関係となる。
人脈が広がるのはギバーだけ
世の中にはギバー、テイカー、マッチャーがいるが、この中で人脈が最も広げられるのはギバーだ。
筆者は仕事をする以上は徹底してギブを意識している。取引先とやり取りする中で、先方は自分に何を期待していて、それはどのくらいの期待値か?という理解に努めるようにする。
仕事をする上では常に相手の期待値を上回るようにしている。先方が「10日までにご提出を」といえば、できる限り早く出す。「できれば5記事」と言われれば、5記事より多めに出してその中で先方により良い選択をしてもらう。こうすることで相手から喜ばれ、「またこの人にお願いしよう」と仕事が続いていく。
「報酬がこのくらいだから、最低限の仕事しかしない」そんなケチくさい人に人脈はできないし、チャンスも降ってこない。報酬分仕事をする、これは確かに正論ではあるが、仕事をお願いする側にとって、より魅力的なギバーが現れたらその時点でスイッチされて仕事を失う。世の中は本質的に競争であることを忘れるべきではないだろう。
メディア関係者、特にテレビは急いでいることが多いので「明日までに出してもらえますか?」というオファーをもらうことはよくある。そんな時は「当日中」に出したことで番組制作の担当者から喜んでもらえ、同じ担当者経由で何度も番組出演のオファーをもらったことがある。その裏にあるのはギブの精神なのだ。
◇
まだ駆け出しで何も持たない人にとっては、てっとり早く仕事をくれる人を捕まえて安定収入を得たい、と考える気持ちはわからなくもない。だが、ビジネスは損得感情なので相手にメリットがなければno dealとなる。とにかく相手にメリットを提供する意識で仕事を続ければ、自然に仕事はドンドン集まってくるし人脈も結果としてできるのだ。
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