激動の2024年もあと5日を残すのみとなった。アフガニスタンのサケナ・ヤコービ博士から2024年の年次報告書が届いたので、このコラム欄で紹介する。同博士は非政府機関「アフガニスタン学習研究所」(AIL)を運営し、女性たちに学習の機会を提供してきた責任者だ。
ヤコービ博士は「世界は混乱の淵にあるように思えます。次々と危機が起こり、悲しいニュースが見出しを占めています。このような激動の中で、アフガニスタンはしばしば忘れられているように感じられます。しかし、私はここでお伝えしたいのです。世界が目を他に向けている間も、アフガンの人々―特に女性や子どもたち―は依然としてたくましく、決意を持ち、より明るい未来への希望を抱いています」と述べている。
そして「AILでは、私たちの使命を揺るがすことなく続けています。私たちは進歩を大切にし、ポジティブな側面に集中することを選びました。巨大な課題にもかかわらず、新しい国の指導体制のもとで、私たちは革新的な方法を見出し、活動を続けています。健康と教育のプログラムはこれまで以上に重要であり、アフガンの女性と子どもたちの生活を改善するという私たちのコミットメントは揺るぎません」と強い決意を表明する一方、「それでもなお、心が張り裂けそうになる瞬間があります。近年、児童婚と児童労働が急増しています。若い少女たちが結婚させられ、子どもたちが想像を絶する環境で働かされています。家族が生き延びるために追い詰められているからです」と説明する。
博士は「アフガンの経済は崩壊し、国民の半数以上が飢えに苦しんでいます。家族は路上で生活し、寒さ厳しい冬を避けることもできず、食べ物も希望もない状況です。このため、過去4年間、AILは教育と並行して人道支援活動を拡大しました。私たちは最も緊急なニーズに応えるため、重要な支援を提供しています。学習センターではスキルのワークショップを続けていますが、それだけでなく、一歩進んで、若い女性たちが自宅で小さなビジネスを始められるように支援しています。これにより、家族を支え、経済的な安定感を得る機会を提供しています」という。国連によると、約400万人が急性栄養失調であり、その中には5歳未満の子供約320万人が含まれる。約2800万人、人口の約3分の2に当たる人々が人道的支援を必要としているという。
博士はAILのほか、「母と子の病院」を運営している。この病院は90%が女性スタッフで運営されており、24時間体制で無料で患者を治療している。多数の患者が毎日、治療を受けるために訪れている。同博士によると、AILが経営するMerajTVは、当初7年生から12年生向けの授業を放送していたが、現在では大学レベルのクラスや読み書きの講座に加え、科学、ビジネス、リーダーシップのクラスも提供している。さらに、幼児向けプログラム、哲学の講義、ドキュメンタリーも配信している。人々は学ぶことに意欲的で、成長を望み、平和と繁栄が実現する未来を築こうとしている。特に若い世代は、エネルギーに満ち、国の運命を変えるという決意に溢れているという。
そして「しかし、この活動は皆様なしでは実現できません。皆様の支援が私たちの努力を支え、何百万人もの人々に希望を与えています。私たちは一緒に次世代のリーダーを育成し、命を救う援助を提供し、逆境の中でも教育を継続できるよう努めています。皆様の援助は、アフガニスタンの明るく安定した未来への一歩となるのです」と指摘し、支援を要請している。
最後に、「新年を迎えるにあたり、アフガンの人々を思い、祈りに加えていただければ幸いです。そして、可能であれば、AILへの援助をご検討ください。皆様の寛大さが、生活や国の再建に取り組む人々への命綱となります。心からの感謝と温かい祝福を込めて」と書いて締めくくっている。
アフガンは2021年8月15日、イスラム原理主義組織「タリバン」がアフガン全土を再び占領し、駐アフガンの米軍撤退で同国の情勢は激変した。タリバン勢力のカブール入りが伝わると、同国に駐在していた外国人要人や家族の国外退去の際に大混乱となったのはまだ記憶に新しい。あれから3年以上が経過、タリバン政権は国際社会から依然孤立し、国内のNGOの活動も容易ではない。タリバン政権は現在、34州からなるアフガン全土を統治している。
なお、タリバン政府は25日、アフガン東部でパキスタンの空爆によって50人近くが死亡したとしている。タリバンによると、攻撃を受けた地域は、パキスタンとの国境に近い東部パクティカ州バルマル地区の4か所。死亡した少なくとも46人の大半は女性と子供だった。タリバン国防省は今回の攻撃を「野蛮」かつ「明らかな侵略」と非難し、報復攻撃を発表している。一方、パキスタンの治安関係者らは、攻撃は国境を越えた「テロリストの隠れ家」を狙ったと述べている。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2024年12月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。