前回の記事について、より丁寧に説明をした方が分かりやすいように思うので、補足をしておく。
2024年8月の暫定値発表時にみられた解説は、2023年4月から2024年3月までの1年間の非農業部門雇用者数が81.8万人下方修正され、1カ月当たりでは6.8万人減(81.8万÷12カ月)となり、月平均24.2万人増えてきた雇用者が、17.4万人/月(24.2万人-6.8万人)だったことになる、というものである。
この書き方だと、“2023年4月から2024年3月までの1年間”で非農業部門雇用者数が81.8万人下方修正されるように読めてしまう。
実際にどうなるかというと、2025年2月の年次改定で、仮に81.8万人の下方修正がなされた場合、年次改定の基準月となる2024年3月“単月”の雇用者数が81.8万人減る。
具体的には、2024年3月の非農業部門雇用者が158,106,000人から81.8万人減って、157,288,000人になり、その3月の81.8万人減少を基準(ベンチマーク)とし、2023年4月から2024年3月までの1年、2024年4月から12月までの9カ月の修正を経て、最後に主に2020年から2024年の5年の数字が処理手順に従って再修正される。
参考として、今回と下方修正幅が同じくらいとみられる2009年の年次改定から、2008年4月から2009年3月までの改定が、どうなったかを確認しよう。
まず、2008年4月から2009年3月までの1年間で非農業部門雇用者数は合計564万人減っている。
この年は年次改定で93万人の減少が発表されたが、年次改定の基準月である2009年3月の雇用者数が93万人減っていることが分かる。そしてその93万人とほぼ同じ数字である97.4万人(8.1万人/月)が、非農業部門雇用者数の減少幅拡大として生じた。
よって、冒頭のような記事も月平均の増減数(月平均約24.2万人から約17.4万人へ約6.8万人減少)に関しては、おおむね正しい。
但し、年次改定の基準月(3月)の改定値と非農業部門雇用者数の前月比に対する増減幅(上記表④-②)の合計は乖離が生じる。2009年の例では93万人に対し97.4万人だが、過去には乖離率がはるかに高い年も数多く存在する。
これにより増減幅/月が変わってくるため、年次改定発表後に念のためチェックをした方が良いだろう(2009年の例では7.8万人/月減(93万÷12)ではなく、8.1万人/月減(97.4万÷12))。
2009年の年次改定に話を戻すと、以下表の一番右列のとおり、2009年5月から12月まで8カ月連続で100万人を超える修正となった。
前回の記事で、フィラデルフィア連銀のデータと非農業部門雇用者数を用い、“比較可能な最新の数字である2024年10月においては157万人もの差が生じている。2024年4月以降の数字も年次改定に合わせて下方修正され、非農業部門雇用者数が100万人以上減る月も出てくるだろう”と記載したが、あり得る話なのだ。
2023年以降の2つの具体的な雇用者数の差は以下のとおりだ。フィラデルフィア連銀の数字を信じれば、くしくも2009年と同じく、5月以降、毎月100万人以上の雇用者数が下方修正される。今はリーマン・ショックのような経済危機を迎えているわけではないからこそ、インパクトは大きなものになるかもしれない。
但し、フィラデルフィア連銀のデータは2021年Q4からの公開と歴史が浅く、過去2年のデータでは、フィラデルフィア連銀が示唆した数値と年次改定の結果には乖離も見られたため、一定の指針にはなるものの、100%正しいと決めつけてはならない。
参考までに、2009年の年次改定からの抜粋は以下のとおりである。他の年はこちらから確認ができる。