トランプ大統領の閣僚人事は機能するか?:アメリカは中国ではない

トランプ2.0は話題が豊富ですが、閣僚人事では「お友達人事」「お仲間人事」と思われるケースがいくつも見受けられます。それらは果たしてトランプ氏に本当にメリットをもたらすのでしょうか?

トランプ大統領 ホワイトハウスX

閣僚人事といえば習近平3.0が印象的でした。氏が3期目に入る際、国内の敵対するグループを徹底的につぶしにかかりました。親の七光り幹部が生まれたのは1966年から76年の文化大革命の際に人事の払底が起き、やむを得ず高級官僚や共産党幹部の「息子」らを登用、重用したことから中国閣僚人事の悪い癖ができたのですが、ある意味、それが中国的保守派同氏の激しいつばぜり合いをしてきたとも言えます。

習近平氏も1.0の際はそれを利用したものの2.0になると外野の声がうるさいと感じるようになり、徐々にそれらの人を排除していったのです。そして生まれた3.0では閣内に敵なし人事になります。ところがそれが盤石だったかといえば習氏の言いなり閣僚ばかりで物事を決めない、議論をしないそんな政権になったのです。

当然ながら習氏の顔色をうかがう共産党トップや閣僚は自分の考えではなく習氏の代弁をするわけです。中国経済の立て直しはどうするか、もしも習近平体制でなければ今頃は立ち直っていたかもしれません。中国には賢い人はいくらでもいるのです。ですが、それらの秀才が埋もれてしまった、これが今の中国であります。

ではアメリカ。今、トランプ氏は全く同じことをしようとしています。理由は習氏と全く同じで自分の思うとおりに国を動かしたいのです。そんな我儘がこの世の中に存在するのでしょうか?たとえばメキシコ湾が正式にアメリカ湾に変わりました。日本海が東海と表示されるだけで様々な議論が巻き起こるのにこの件はニュースに上がってきません。それらの声を抹殺し「公約通りにすること」をアピールしているわけです。

しかしトランプ氏一人ではそれはなしえないので当然神輿の役割をする閣僚が必要なわけです。

国防長官のピート ヘグセス氏。上院では共和党の重鎮3名が「あいつはだめだ」と反対票を投じ、50対50になったところで議長は副大統領のバンス氏が当然のごとく賛成票を入れチャンチャンでめでたく国防長官に就任です。ヘグセス氏が不評なのはそもそも経験値がなく、元FOXニュースの司会者程度であり、ひどい飲酒癖と性的暴行をお金で示談するなど人格的にふさわしくないからです。産経は「安保政策の立案に携わったことはなく、公聴会で東南アジア諸国連合(ASEAN)の加盟国数を問われ、加盟国ではない日本や韓国を列挙。核開発を進める北朝鮮を『核保有国』と表現する」と報じています。

ピート・ヘグセス氏 Wikipediaより

イーロン マスク氏が責任者の政府効率化省は政府外の機関で助言をする立場だったのにいつの間にか政府機関に組み込まれてしまいました。これでアドバイザーから権限者としての振る舞いができるのです。マスク氏は犬猿の仲であるサム アルトマン氏や孫正義氏が推進するスターゲート計画に思いっきりチャチャを入れています。マスク氏がAI推進に慎重姿勢であることが理由ですが、トランプ氏とマスク氏の意見の食い違いになるわけです。もともとこの2人は本当に息が合うコンビなのかという疑問が根強くあり、双方がお互いを利用しあっているだけだろうという冷めた見方が主流です。

トランプ氏とマスク氏

国家情報長官候補のトゥルシー ギャバード氏はヘグセス氏と並んでもっとも疑念の多い候補とされます。彼女はもともと民主党、それが共和党に鞍替えしています。彼女の問題は2017年にシリアでアサド氏と会談していることであり、ロシアへの同調発言や日本の再軍備反対意見などがあり、CIAを含む情報管理のトップとして資質を問われることになりそうです。私の見る限り彼女は強いものにつくという典型的なポリシーレスのミーイズムタイプに見えます。

トゥルシー ギャバード

他にも厚生長官にワクチン懐疑派のロバート ケネディJrやFBI解体論者のカシュ パテル氏がFBI長官候補というのもさっぱりわからないです。それぞれの組織において業務をさせないあるいは抑制させようとする人物をトップに据えることで業務を麻痺させ、実質的にトランプ帝国を作るシナリオにしか見えないのです。

ロバート・ケネディ・ジュニア氏インスタグラムより

カシュ パテル氏 Wikipediaより

ではトランプ帝国は思惑通りできるのか、と聞かれれば私は99%できないと考えています。理由はアメリカは中国ではないのです。言論の自由があり、国民はさまざまな境遇や環境を背景に考え方が一つではないからです。こうなると良識あるアメリカが維持されるには議員らが政党の枠組みを超えて個別に正しい判断ができるのか、そして世論は議会の決定や議員にどれだけ圧力をかけられるかにかかってきます。真の意味でのGreat Americaを維持してもらいたいと思います。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年1月28日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。