
RIZAPグループ株式会社HPより
(前回:RIZAPグループの逆襲①:chocoZAPの強み「高い営業利益率」)
chocoZAPの強み 「競合優位性」
今後、chocoZAPの躍動を目にした企業が市場参入してくることが予想される。RIZAPグループは競争に勝ち抜くことが出来るのか。
フィットネス業界からの参入
現在のフィットネス業界は、フィットネス人口の増加傾向が続く一方で、競争の激化により倒産も増えている。そのなかで、chocoZAPのビジネスモデルは、全国2,000店舗近くの大量出店によるコスト削減が利益創出の鍵となるが、投資回収には少なくとも数年を要するため、このモデルを展開できる資本力を持つ企業は限られる。
フィットネス業界を「オンラインフィットネス提供会社」「月額会員費1万円前後のフィットネスジム」「高価格帯のパーソナルトレーニングジム」に分けた場合、オンラインフィットネスを提供する会社は小規模な会社が多く、同市場への参入は難しいだろう。
「月額会員費1万円前後のフィットネスジム」も参入は難しい。理由は単純で、安価なフィットネスジムを開始した場合、既存サービスと重複し、売上が増えるどころか減る可能性すらあるからだ。エニタイムフィットネス運営会社のFast Fitness Japan(7092)、カーブス運営会社のカーブスホールディング(7085)など、一部の勝ち組は会員数の伸びも堅調なため、自ら売上を落とすようなリスクあるサービスを開始するとは考えづらい。
高価格帯のパーソナルトレーニングをターゲットとしていたRIZAPグループだからこそ、安価なchocoZAPをリリースできたのだ。高価格帯のパーソナルトレーニングジムは、専属トレーナー・カウンセラー・管理栄養士などがつき、個別指導を行うことで高単価を実現している。
一方、chocoZAPは低価格・無人化・24時間営業というモデルを採用し、初心者や手軽に運動を始めたい層をターゲットとし、従来の高価格帯ジムとは異なる市場を開拓した。さらに、chocoZAPとRIZAPは相乗効果を生み、chocoZAP経由のRIZAP新規会員数は2025年3月期第3四半期時点で約16%に達している。

2025年3月期第3四半期決算説明会資料 P34より抜粋
では、RIZAPと同じ高価格帯のパーソナルトレーニングジムからの参入はどうかというと、候補となる大手企業が見当たらない。例えば、パーソナルトレーニングジム「24/7Workout」を運営する株式会社トゥエンティーフォーセブン(7074)はコロナ以降、競争激化から5期連続で赤字と投資余力はない。
異業種からの参入
コンビニ・ドラッグストアなどの大手小売業が、自社ネットワークを活用してフィットネス市場に参入する可能性もある。しかし、chocoZAPのような店舗運営には、単なる出店戦略だけでなく、会員管理や継続率を高める仕組みが不可欠だ。加えて、フィットネス機器の維持管理やマシン選定、効果的なトレーニングプログラムの提供には専門知識が求められ、これらは小売業の既存事業とは大きく異なる。
例えば、chocoZAPの「ちょこっとサポート」では、RIZAPのノウハウを持つ約300人のアドバイザーが店舗を巡回し、マシンの使い方や継続しやすいプランを提案するほか、オンライン相談も可能だ。
また、RIZAPグループは『RIZAP』のCMで知られるようにマーケティングに強く、集客力にも優れている。大手小売業とはいえ、運営ノウハウがない中で短期間に同等の仕組みを構築し、chocoZAPと競争するのは容易ではない。
chocoZAPの強み「将来性」
本稿①で述べたchocoZAPの高い営業利益率は、損益分岐点の低さを意味する。それにより、これまで採算が合わず開拓されなかった地方にも出店が可能となり、地方展開が加速している。

2025年3月期第3四半期決算発表資料 P18より抜粋
当初、最低限の商圏人口を5,000人/km²と想定していたが、官民連携1号店の兵庫県養父市はわずか52人/km²。それでも経営が成り立つという事実は、chocoZAPのビジネスモデルが従来のフィットネスジムとは一線を画していることを示している。もちろん、このエリアに競合はいない。

2025年3月期第2四半期決算発表資料 P20より抜粋
全国にすでに1,800店舗近くのchocoZAPが展開されているため、「出店の余地はない」と考えるのは早計だ。フィットネスジムは、徒歩圏内または車で10分以内が通いやすさの目安とされ、距離が遠いと継続は難しい。これまで採算性の問題から開拓されなかった”空白地域”はまだ無数に存在し、そこでも収益を生み出せるchocoZAPは、新たな市場を切り拓いている。
また、企業内や空港、高速道路のパーキングエリア、ホテル内といった異業種との融合による出店も進行中だ。従来の「ジム=商業施設や住宅地にあるもの」という概念を超え、会社・移動・宿泊など、生活のあらゆるシーンにフィットネスを組み込む試みが進んでいる。
日本のフィットネス人口は、chocoZAPの登場により4%台へと拡大したが、米国では21.2%と依然として約5倍の差がある。まだテストマーケティングの域を出ないが、香港・中国・台湾・米国といった海外市場への進出も始まっている。市場の拡大余地は大きく、chocoZAPの将来性は非常に高い。
(次回に続く)
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