日本では中国のアニメで中国の3DCGアニメーション映画「哪吒之魔童鬧海」の⽇本語字幕版である、「ナタ 魔童の大暴れ」として4月4日から全国で公開されています。

アニメ映画「ナタ」HPより
「ナタ」とは「⻄遊記」などに登場する神話中国の国民的キャラクターですが中国以外では全く知られていません。このネーミングに魅力を感じる日本人はいないでしょう。宣伝も真っ赤な看板で日本人向けのセンスとはかけ離れたものです。
全世界で大きな興行収入を記録していると伝えられていますが、はっきり言って北米や欧州では公開もされているところが非常に少ないですし、宣伝も全く見かけません。しかもメディアニュースや批評でも全く取り上げられていません。
完全に中国国内の観客向けの作品なのです。
中国ではここ最近ハリウッドなど海外の作品に飽きた観客が国内で制作されたアニメや映画を見るようになってきています。ハリウッド映画も以前は中国市場に注力していたのですが、ここ最近は興行が振るいません。
中国の観客は自分たちの好むキャラクターや表現に注力した作品を見るようになってきており、ここ数年はCGIのレベルも上がってきたので国内で製作された中国人向けの作品の方が人気なのです。
さらに豊かになったという認識から海外に対して憧れを持つ観客も減っています。
しかしこのような作品が日本では大々的に映画館で上映され、見に来ている観客は中国人がほとんどのようです。
とうとう日本でもこの状況になってきたのかと私は驚きました。
なぜならイギリスではここ10年ほどの間に都市部や郊外の映画館で上映される映画の30%ぐらいがなんとインドのものになっているからです。
ロンドン郊外の映画館だと夜7時以降の上映時間の作品はヒンディー語やタミル語などインドの観客向けのインドの最新作品です。
こういった映画は上映作品の半分どころか大半を占めるところもあります。
さすがに白人が多いところではインドの作品の割合は下がりますが、それでもここ10年ほどはかつては全く上映されなかったインドの映画がずらっと並んでいるのです。
地元のイギリスの観客は映画のチケットや映画館内のポップコーンなどの飲食物の高騰もあり家にこもってサブスクで映画を見る人の方が増えています。
映画館に行っても以前に比べるとガラガラで、ハリウッドの最新作でも週末の午後に行っても観客が10人以下ということが珍しくありません。
しかも映画館には不特定多数の人が来るので暴力を振るわれたり不愉快な人が近くに座る可能性も高いのです。
実際イギリスの映画館では刃渡り50cmのナタや斧を持った中高生が乱闘を繰り広げたという事件が発生しています。
このような事件は私は以前自分の本「世界のニュースを日本人は何も知らない」で取り上げています。
イギリスの市街地は景気が悪いことや様々な人間が増えたこともあって治安がますます悪化しているのです。
しかも映画館もゴミだらけで清掃も行われておらず、非常に不愉快なところだらけです。椅子もトイレも壊れていて、床はゴミだらけ。どこもホコリだらけです。
そんなところで1回に1800円も払って映画を見るのは馬鹿らしくて仕方ありません。
そこで映画館にやってくるのは映画がとにかく重要な娯楽であるインド系の人々なのです。
彼らは友達や家族と連れ立って週末は映画を見るというのが娯楽のパターンです。イギリス人とは好む娯楽や時間の過ごし方が異なるのです。
映画は大画面で見たいという人が多いのでお金はかかっても映画館に来るわけです。
そして家族や友達など大人数で一緒の作品を見るという行動パターンも重要です。
中国大陸に関してもこれは似た部分があります。
イギリスや日本の人々に比べると個人主義ではなく大家族主義なので、家族や友達と連れ立って街中に繰り出して映画館に行くわけです。
中国は日本に比べると資本主義化した時代は短く映画の歴史も深みも浅いですから、外国の映画を自由に見ることができるようになったのは80年代以後です。
映画がまだまだ重要な娯楽の一つになっていますし中国の田舎の方に行けば分かりますが日本に比べると本当に娯楽がないので、映画館に行くのが重要なイベントになっています。
日本と比べて余暇の過ごし方のタイムラグが30年ぐらいあると考えていいでしょう。経済は発展しましたが人々の感覚は昭和50年代の前半ぐらいの調子です。
日本では映画代は非常に高く、このご時世なので映画は高くて見に行けない、家でサブスク配信を見れば十分という人も多いでしょう。
それに独身者が多く大家族主義でもないので、娯楽は個人個人で好きなことをやるのが主流です。
それに結婚した子持ちのカップルが親を連れて親戚も一緒になって映画を見に行くということはありえませんね。
ところが中国やインドではそれが頻繁に起こるわけです。そうなると映画館がお客として捉えるのは昔ながらの文化を持った人々ということになります。
日本の映画館も中国の移民向けの作品を上映して収益を上げたいのだなということが分かります。そして日本には相当数の中国側の移民が激増しているということも分かります。
おそらく日本の映画館の上映作品は今後は中国やベトナムのものが増えていき日本人向けのものはどんどん減っていくでしょう。
それは移民の導入を日本に先んじて進めたイギリスでは20年ぐらい前から起きていることであり、映画に限らず飲食や街中で販売する衣料品や家具なども移民向けのものが主流になってしまっている場所も少なくありません。
例えばロンドンの南部ですとインドやパキスタンバングラデシュの人々が好むキラキラの服や家具が主流です。
食料品も移民向けの店だらけですし、外食もケバブやインド料理パキスタン料理の店だらけで昔ながらのイギリスのパブはどんどん潰れています。
日本でもこのような状況になるでしょう。