経済活動別の投資の効率

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1. 経済活動別の総固定資本形成

前回は経済活動別の国内総生産、固定資本減耗、国内純生産についてご紹介しました。

特に製造業と不動産業は国内総生産が多く、固定資本減耗も多い産業です。

その分、正味の国内純生産は大きく目減りし、2022年には製造業は卸売・小売業を下回ります。

今回は、経済活動別の総固定資本形成や固定資本減耗を、それぞれの経済活動の国内総生産との比率で比較してみたいと思います。

生み出された付加価値のうち、どれだけを投資や減耗分が占めているのかを可視化してみます。

まずは、総固定資本形成の対国内総生産比から眺めてみましょう。

図1 経済活動別 総固定資本形成 対国内総生産比 日本
OECD Data Explorerより

図1が日本の経済活動別に見た、総固定資本形成 対国内総生産比です。

それぞれの経済活動における、総固定資本形成を国内総生産で割った指標となります。

不動産業、電気・ガス・空調供給業、公務が非常に特徴的な推移をしています。

これらの産業は1990年代に70%を超えていましたが、徐々に低下して停滞傾向となっています。

かつては稼ぎ出す付加価値に対して、7割以上もの投資があったことになります。

当然この中には、公共投資も多く含まれるため、必ずしも営利目的の投資ばかりではない事に注意が必要です。

よく見ると、情報通信業、農林水産業、保健衛生・社会事業も同様にかつての水準よりも目減りしていて、全産業の平均値(黒線)も1990年代の30%以上から見るとやや目減りしています。

製造業は逆に、1990年代の水準からするとやや上昇して推移していて、2022年には34.5%となっています。

2. 経済活動別の固定資本減耗

続いて、固定資本減耗の対国内総生産比についても見てみましょう。

図2 経済活動別 固定資本減耗 対国内総生産比 日本
OECD Data Explorerより

図2が経済活動別の固定資本減耗 対国内総生産比です。

総固定資本形成に比べると、不動産業、公務、電気・ガス・空調供給業の水準が低下していて、特に1990年代も均されている事がわかります。

固定資本減耗は固定資産の残高に対する減価分となりますので、耐用年数の長い固定資産程長期にわたって少しずつ均されていくような傾向なのかもしれません。

総固定資本形成では同じような推移となっている不動産業と公務ですが、固定資本減耗では不動産業は低下傾向で、公務が上昇傾向なのが印象的です。

国内総生産で見ると不動産業が増加傾向、公務が横ばい傾向なのでその影響もありそうです。

これらの産業は、稼ぎ出す付加価値のうち40~50%程度は固定資産の維持費に回っているという事になります。

製造業も近年は30%以上で推移していて、比較的固定資産の維持コストの高い産業である事が確認できます。

3. 経済産業別の投資の特徴

今回は、経済産業別に国内総生産に対する総固定資本形成と固定資本減耗の比率を計算してみました。

インフラへの投資が必要な産業となる、不動産業、公務、電気・ガス・空調供給業は非常に興味深い傾向と言えます。

製造業や情報通信業も産業の中では固定資本減耗の占める割合が高く、その分企業や家計への分配が目減りしがちな産業と言えそうです。

特に日本はバブル期に投資が増え、バブル崩壊後も1990年代中は高い投資水準が継続しました。

企業の投資はその後も高止まりしています。

必然的にその減耗分が現在も高い水準で続いている事になります。

これが日本独特の傾向なのか、次回以降で国際比較もしていきたいと思います。

皆さんはどのように考えますか?


編集部より:この記事は株式会社小川製作所 小川製作所ブログ 2025年4月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「小川製作所ブログ:日本の経済統計と転換点」をご覧ください。