今年1-3月の訪日外国人が1,054万人で四半期として過去最高を記録しました。これに続く2四半期の4-6月期と7-9月期は観光シーズンに万博もあり、ひっちゃかめっちゃかになりそうな気がしています。
この事実に対して日経は「先行きの懸念材料はトランプ米政権による関税政策で、世界経済が減速すれば、日本経済を支える訪日客消費も冷え込む恐れがある」と記していますが私は断言しましょう、冷え込むことなどはあり得ない、と。今年は通年で4,000万人に到達する公算は大だと思います。

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お前はなぜ、日経の悲観的予想をあっさり否定するのかと思うでしょう。北米にいると懐の深さはよくわかるのです。過去何十年も好況だろうが不況だろうが持っている人は持っているし、多くの方が「景気とは別腹」という懐があるのです。私が今住んでいるところは500室もあるホテルの真ん前で窓からはホテルの玄関が見え、外に出ればホテル客でにぎわっています。そのホテル、ハイシーズンになると一泊5-6万円、朝食はおひとり様5,000円也ですが、混みすぎて朝食なんて30分待ち状態です。
もう一つの訪日ブームに火をつける要素が中国人観光客です。日中の政治的融和ムードがあるため、中国人の観光客が一気に押し寄せる、これが日本をほぼ麻痺状態するほどになるとみています。中国は不景気なのじゃないのか、とおっしゃる方もいるでしょう。中国には14億人も人口がいるのです。年収はどの国でも層状になるのがわかっており、どんな貧困国でも一定数の富裕層がいるものです。そして分母が大きい中国だと消費余力のある絶対人数は当然多くなるのです。
実は私は6月に日本に仕事で行くのですが、その際、関西方面に行く予定があります。(万博ではありません。)ところが大阪あたりのホテルがとんでもない状態になっていてどうしようかと思っています。ごく普通のホテルが一泊3万円となると考えてしまいますよね。いくら安いたこ焼きに巡り合えてもホテル代と合算すると安さという点では無意味な話になります。
これは別に万博に限らず、東京も満杯状態、熱海などの温泉もダメ、もはや「ひぇー!」状態です。
当然ながら外国人を相手にするビジネス、特にホテルと飲食店は絶好調だと思います。では取り残されるのは誰かというと実は大半の日本国民であります。まもなくゴールデンウィークでそのあと夏の家族旅行も待っています。さて、どこに泊まるか、となるとお父さんとお母さんのお財布を逆さにしても「払えない!」という状態になってしまうのです。
経済というのは需要と供給の関係ですが、観光関連の需要が外国人主導となった今、旅行好きの日本人が価格競争で弾かれてしまう、そんな状況にあると言えるのです。私は京都にも仕事で行きたいのですが、もはや、祇園エリアに泊まるなど考えられない状態になってしまいました。
最近はよく知らない方から「私の持っている不動産を外国人に貸したいのだけど…」という相談も私に舞い込んでくるようになりました。外国人は1-2週間の短期滞在型と3-6か月の中期滞在、そして1年間のワーキングホリディや就労ビザを取得して長年日本にいる長期滞在組に分かれます。大まかに短期滞在組はホテルに、中期滞在はシェアハウスに、長期になるとアパートの需要になります。
私の経営する外国人向けのアパートも今月末たまたま2部屋開くのですが、外国人同士の口コミで数日後には両方の部屋とも別の方が契約しました。つまりマーケットに募集広告を出す前に消えてしまうほどなのです。
正直なところを申し上げると私のところのシェアハウスも外国人の方の需要が強く、彼女たちは3か月から1年程度でどんどん回転します。光熱費の高騰もあることから賃料をその度に引き上げています。すると長くお住まいの日本人の方の部屋と価格差が大きくなっており、日本人が退去して外国人が入居すると賃料が大幅アップという現象が起きているのです。私はシェアハウスの運営においては日本人と外国人の割合を重視しているので賃料がとれるから全員外国人というような阿呆な運営はしませんが、それぐらいの違いがあるということです。
日銀の植田総裁がトランプ関税で先行き不安を感じ、急に弱気になっているという報道を目にしました。私は真逆でトランプ関税は結果として日本全体としてはかなりプラスに転じるとみています。もちろん自動車産業などへの影響はありますが、それは企業ベースで努力して対策するしかないし、できると思います。むしろ開放されている日本市場は世界がうらやむ好景気の循環を生み出すとみています。
東京ビックサイトあたりで行われるトレードショーにはちょくちょく行くのですが、多くの出店者は「外国では売っていないんですよ」「外国仕様になっていないんですよ」「メンテができなくて…」という惜しい声ばかりなのです。そこを乗り越えればもの凄いビジネスチャンスがあるのにもったいないと思います。JETROがもうちょっと後押しすべきでしょう。日本は光り輝く要素はいくらでもあるということです。アメリカをフォローしなくても大丈夫です。独り立ちできますよ。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年4月20日の記事より転載させていただきました。