S&P 500は徐々に米国特有の懸念に

Shen

先週のS&P 500は微妙な高寄りからの反落となった。週末の間に市場参加者は「電子機器の国別関税からの一時的な除外、半導体関税は別途発表」というヘッドラインを解釈させられたが、蓋を開けてみると4/14月曜は高寄りからの寄り天となった。

4/15火曜は月曜高値を再度トライしたが小さな上ヒゲ陰線で終わり、引け後に出たNVDAの対中半導体輸出規制に伴う55億ドル費用引き当てのヘッドラインでガラッと流れが変わる。4/16水曜はそれに加え、Fedのパウエル議長が再び市場介入を否定したことで更に下値を掘った。

4/17木曜はネガティブガンマ域で迎えたOp Exとなるが、いつものように反発とはならず、しけた雰囲気でグッドフライデーを迎えている。利下げをコミットしないパウエルをトランプが再び罵倒しており、それ自体は2018年末にも見られた構図であるが、三連休にかけてパウエル解任リスクが議論されることになる

GS CTAはあまりにも売りに傾いたため、4月後半には買い戻しに転ずるとしている。先週分との違いがどこから来たかというと、先週の記事では「先週指数が切り返したと言えば切り返しているので、上昇トレンドに復帰することでCTAにはそのうち買い方向に向かわせることもできるだろう」と想像している。

DBの統合ポジショニングはついに2パーセンタイルまで落ち込んだ。うちシステマティック勢は4パーセンタイル、Volコントロールは1パーセンタイルという極端な落とし方である。先週の記事で想像した通り、もう1日2%下げなどと言っても売る玉がなくなっているのではないか。

パンデミック後、S&P 500の上昇はほとんど夜間(アジア時間等)に行われており、それが直近で一気に逆転している。上昇は海外投資家による米株投資ブームの象徴であり、下落の方は引け後にトランプ政権がバッドニュースを発表することが多いためとは解釈されるものの、それ抜きでも直近ほど時間外の方が弱い気がしている。

BofAはCTAの売りがまだ多少残っているが、他のシステマティック勢の買い戻しがそれを概ねオフセットするだろうとしている。

BofAのディーラーガンマはまさにOp Exを通過した後の「残骸」のようになっている。5200にガンマロングの山ができておりサポートとなりやすいだろう。何かの拍子で5300台後半までラリーできれば、かなり久々に「アップサイド手当不足のネガティブガンマ域」への突入が見られるだろう。

連日の急落急騰で1ヶ月物のリアライズドVolが高騰したのが、これほどのシステマティック勢のデレバレッジの背景である。先週に限って言うと値動きが一気に小さくなっているが、システマティック勢が用いるモデルが1週間のような短いVol低下をキャッチするほど鋭敏かどうか。

VIXと同時に急騰したMOVEは急落している。

ハイイールド債ETFも、米国除く株式ETF ACWXも「解放の日」の底よりも天井の方が近い。色々言われている中、マクロな不確実性は既に後退しはじめており、残っているのはあくまでも米株自身の懸念である。

米国資産への海外資金フローは減速したが、引き出しには至っていない。

インサイダーはほとんど売っていない。

結局のところ、今の注目は「トランプ当選でブルッブルになった後に今、下で投げさせられている裁量投資家の動き」となる。長らく平均以上で粘ってたNAAIMはようやく本格的に低下しはじめた。これだけ調整が長引いた背景はNAAIMの低下がこれだけ遅れたためとも言え、要するに、地球はアクティブ機関投資家が愚考したストーリーや投資行動を全て否定するために回っているのである。

今週は決算期が本格化する。今までのところ、EPSに上方サプライズがあっても追いかけて買うような動きにはならず、一方で滑った企業も今更期待が高くないのか罰が浅くなっている。全体的に「それどころではない」感が強い。木曜引け後が最も重そうである。

テクニカル。先週の記事では5200 -5530レンジを意識していたが、実働域は5220 -5459と、これまでのボラティリティを考えるとすっぽり収まったのは上出来だろう。もっとも上値の方はやはり手前で失速しており、戻り売り圧力の強さを示唆する。

今週もこのレンジを否定する理由がないが、下値は首の皮一枚となっている。もうVolコントロールにはほとんどポジションがないにもかかわらず、水曜4/16は2%を超える下落となった後に木曜4/17は小十字となっており、いつものパターンなら買えるのは翌日以降ということになる。

水曜4/16からの下落マイクロトレンドの終了を宣言できるのは5330超えであり、そこをブレイクできれば雰囲気がだいぶ改善する。それまではOp Ex通過でポジショニングが綺麗になった可能性も相応にあるものの、基本的には5200が突破されたらそれ以上テクニカルなサポートがないチャートとなっている。5330より上の上値については、先週超えられなかった5500近辺で再び重くなるだろう。

機械勢はさすがにこれ以上売りに回らないだろうから、裁量投資家が投げ終わったらそこで下落局面は終了となる。それが終わるまでが長いのだが、基本的にここから裁量投資家と一緒に売る、特にヘッドラインを追いかける形で売るとあまりいいことがなさそうである。

 


編集部より:この記事は、個人投資家Shen氏のブログ「炭鉱のカナリア、炭鉱の龍」2025年4月21日の記事を転載させていただきました。