日本で構造的障壁を破れないのは何故だろう?:独特の感性が足かせに

日本は技術力で世界のリーダーの一角であるはずです。今でも分野によっては世界シェアの大きな部分を占めている企業は各方面に数多くあります。客観的に見ても日本は高性能の製品を改造改良を通じてより安定して動くよう努力していることもあり、日本製品の信頼度は極めて高いと申し上げてよいでしょう。

三菱飛行機が最後までアメリカの型式認定を取れず、最後に実質ギブアップしました。一方、アメリカの航空機メーカーの雄、ボーイング社の飛行機は不備な問題が続き、昨年には新型の飛行機が飛行中にドアが外れるという信じがたい事故が発生しています。それを見て思うのはアメリカは三菱飛行機の能力を見透かし、無理難題を押し付け、最終的に同社がギブアップするのを待っていたのではないか、という気がしないでもないのです。つまり明らかに製品の製造能力が劣りつつあるアメリカの産業を力づくで守るために「見えない力=アメリカ版非関税障壁」で三菱飛行機に圧力をかけ続けた、そんな気がしないでもないのです。

日本の高技術力の商品群がある中で日本国内もよほど立派な技術であふれているのかと思いきや、かなり古典的な技術にあふれているところが多いのもまた事実です。

中日本高速道路で先日システムが故障して大渋滞を引き起こした話は日本がせっかく良い技術を持っているのに古臭い高速道路自動課金システム、ETCから革新的変化ができないことで起きたごく当たり前のトラブルだと思っています。ETCは90年代から開発準備をして2002年ごろから順次スタートしたシステムなのですが、これは車にETC車載器をつけることで動くわけで日本の自動車の大半にそれが装着され日本の独自のインフラとして確立されてしまったわけです。

ですが、車載器がないと使えないという発想がそもそも前近代的で車のプレート番号読み取りカメラで捕捉すれば車載器は不必要で料金ブースもいらないし、一旦停止も必要ありません。後日クレカにチャージされているとか、請求払いにすればよいだけです。未払いを起こしたらどうするのか、という質問があると思いますが、昨日お話ししたのと同様、車に先取特権をつけておけばその車を売却するとき自動的にその未払い代金が差し引かれる仕組みにすればよいし、未払いが多ければ免許が更新できない仕組みだってあるでしょう。

Suica。確かに電車に乗るときは便利なのです。私はいまだにスマホ型ではなく、カード型なのですが、これをチャージするのにウェブサイトからクレカにはできないのです。こんな古典的カードが日本のメジャーなポジションにあるのは私としては信じがたいレベルです。当地ではカード型でもパソコンやスマホで簡単にチャージしたりオートチャージ機能がついているので便利さという点では日本は劣りつつあるのです。

私が最も不思議に思うのが日本ではなぜ電気自動車(BEV)が普及しないのだろうという点です。自動車大国日本は誰でも認めるところですが、その日本のBEVの普及率は1.4%(24年11月)でOECDでは最低レベル。このブログでは再三テーマに挙げたので深くは立ち入りませんが、新しいものを受け入れたくない理由が先行してしまうのだと思います。特にインフラ整備が全くダメで自動車大国日本のガラパゴス化は確実だと思います。

今年の初めに25年はEV車が盛り返すだろうと予想したのですが、日本を除く世界ではその傾向が感じられます。特にテスラ一辺倒だった北米においてマスク氏の政治的関与の問題でテスラの魅力が下がったため、消費者が代替のEVを探し始めたことから売れ行きに変化が見られます。EV自動車メーカーからすればマスク氏サマサマであります。

本日のテーマ、構造的障壁を破れない理由ですが、私が外から見る限り思いつくのは「改革には非常に気が重い」という日本人独特の感性ゆえではないかと思うのです。例えば「終の棲家」という言葉がありますが、あれは日本にしか通じない意味です。棲家など自分の環境に合わせていくらでも引っ越して自己満足度を高め、変化を楽しむ発想が北米のスタイルですが、日本ではほぼないと言ってよいでしょう。いわゆる農耕型民族と狩猟型民族の違いとも言えます。

また構造的な改革など新しい発想に対して極めて否定的で改革をすることのデメリットを政治家からマスコミまで皆で並べ立て、多くの国民もそれに同調する傾向があります。「これを変えたらこんなに不便になる」という嫌な部分だけを強調してしまう風潮が強いのが特徴です。

マイナカードはだいぶ普及してきましたが、こんなものは普及するのが当たり前だったのにかつては「国民総背番号制度」という猛反対のシュプレヒコールもあるなど難産の末でありました。

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同義では憲法改正すらできないのはそれを議論することすら躊躇されるほどネガティブな理由をこれでもか、と探し出すからでしょう。私は日本在住の方からは「ドライ」と思われています。もちろんやり方や改革をすることにはハードルがあります。ただそのハードル超えると悪くなるよりもよくなることを期待しているからで、だめならまた更に考えて改善を繰り返すのがこちらのスタイル。ところが、日本は一度でも駄目だと「永遠のバッテン」がつくのです。

伝統を守るという言葉で押し切られてしまいそうですが、伝統と改善改革は違います。私はいつも日本批判をしているだろうと思われる方もいるのですが、日本好きの私が批判する理由はありません。外から見て「なぜだろう」と不思議に思うことを指摘しているだけであって、良いことは良いとほめるし、今回のように意見することもあります。一人でもハッと思っていただけるとそれは書き手にとってありがたく思うことでもあります。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年4月23日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。