企業買収戦線異状あり:NTTによるNTTデータの買収で2兆3700億円

次期ローマ教皇選挙であるコンクラーベでアメリカ人のロバート プレポスト氏がレオ14世として選出されました。ローマカトリック教会はキリスト教の三大教派の一つで残りがプロテスタント教会と東方正教会。その中で最大のカトリックは全世界に14億人の信者がいるとされます。宗教を「人類が作り出した物語」だとすればヒエラルキーの頂点に立つ人物の選出とそのファンクラブの盛り上がりに過ぎないといえばそれまで。個人的にはトランプ氏といつか会談する機会もあると思うのでどのような話をするのぐらいしか興味がありません。日本では煙突の煙の色でその決定がわかるということで話題ですが、当然ながらそこから掘り下げた話にはならないですよね。

では今週のつぶやきをお送りします。

株価の回復は本物か?

パウエルFRB議長が今週の定例金融政策決定会議で金融政策変更なしとしました。事前予想の通りです。記者会見をちらっと見ましたが、正直私はあまり感心しなかったです。雇用もインフレ率もまぁまぁ、だけど目先不安要素はあるから今は時間を買える、よって政策変更はしない、というものでした。予防的措置に踏み込まなかったというよりFOMCがリスクを取れなかったといったほうが良いでしょう。大局的に見れば金利を高めに誘導するのはトルコやアルゼンチンといった国のように通貨防衛上の理由なのですが、アメリカの現在の金利政策がそのように見えるのは幻覚でしょうか?

一方、英国との関税交渉が主要国のトップを切って終了し、その内容は大幅な緩和でありました。自動車も鉄鋼アルミも項目に入っています。日本は交渉妥結を急がなくてよかったと思います。ただ、英国との妥結内容に私は大ブーイングです。英国はアメリカ向け自動車輸出は10万台程度。そして低関税輸入枠として10万台の設定の合意です。これは英国にとって深刻な負けディールです。理由は10万台のメンタル上のキャップがはめられたことで英国はそれ以上のアメリカ向け自動車輸出のチャンスを放棄したことになるのです。将来の成長の芽を摘んだとも言えます。

トランプ氏はまた中国向け関税交渉が進んでいることを示唆し、現在の145%は80%程度が妥当かもしれないとつぶやいています。株価がこのところ回復基調なのは以前にも申し上げた地獄に落としたあとの免罪の期待が膨らんでいるからです。一方、カナダとの交渉は決裂、こちらはまさにコンクラベになっています。アメリカ自動車業界は英国の話よりカナダとメキシコの交渉の方がはるかに重要でここでウィンウィンの結果が出るまでは株価回復が本物にはなりにくいとみています。日本との交渉はそろそろ終盤でしょうから期待先行、結果で売りになる可能性もあります。

企業買収戦線異状あり

今週は国内の買収案件の話がいくつかありました。最大はNTTによるNTTデータの買収で2兆3700億円。これは良い展開です。NTTは海外展開がヘタで、かつて海外買収で大失敗したこともありビビりになっています。また通信業界の主軸がかつての固定電話とそのインフラのレベルから高度なITサービスに転じていることを考えれば当然打って出る戦略です。もう一つの買収は三菱商事による三菱食品の買収で規模は1376億円。かつて日立がやったように上場子会社を整理することは企業体質を強化し、戦略を推し進めやすくし、かつ、世界に打って出やすく、もっと言えば買収されにくい体質になり、その上、世界からの投資対象になりやすいということです。

NTT島田明社長 同社HPより

一方、あれっと思ったのが買収巧者ニデックが敵対的買収を仕掛けていた牧野フライスのTOBを引き下げたこと。これは裁判所の判断が牧野フライスに有利な形となったことでニデックに勝ち目がないとみてあっさり身を引いたということでしょう。これは両社にとって苦渋であり、特に牧野フライスは買収防衛は成功したものの株価暴落の中、今後極めて厳しい経営が待ち受けています。日本企業はまだ猿山の大将的な発想があり、会社は誰のもの、という点で意思決定が北米のように株主よりも経営陣の意地の方が強く、それが閉鎖的にとられるケースはあります。

東証が上場基準をより厳しくする中、足切りのボーダーラインにある企業は極端な話、For Saleの看板が出ているといってもよいのです。力ある企業がそれらの企業への買収攻勢をかければそれらの企業を救済できるし、小粒の塊をより筋肉質にして大粒に変えることができます。日本企業は今、ある意味チャンス到来の時期にあり、体質の大改善を進めれば世界の中で再度、君臨できる可能性は大いにあるとみています。

インド・パキスタンの紛争は本格化するか?

私の見立てでは「しない」です。理由はこの問題は戦後、パキスタンが独立してからずっと続いている問題で出たり引っ込んだりしている中での話に過ぎないからです。そもそもの話は英国領インド帝国からインドとパキスタンが1947年に分離独立した時の設定が悪かったとされます。結局民族、宗教的分離が主体であり、パキスタンはその後、インドの東側で国境を接していない東パキスタンの独立運動に巻き込まれ、結局バングラディシュとして独立します。今回はインドとパキスタン国境のカシミール地方でのいつもの争いであります。

なぜ、お前はこの紛争が本格化しないと言い切れるのか、といえばパキスタンは破綻寸前の国家なのです。これまで何度もIMFの世話になり、今でも厳しい条件を付けられている中、戦争などしている場合ではありません。パキスタンの本当の難敵はインド以前にIMFにあり、の状態なのです。仮にパキスタンが長期的な戦闘に入れば経済は半年と持たず、破綻するでしょう。その時、政権は倒れるのです。戦争を煽る指導者はいないのです。ドローンを飛ばすぐらいは安いもの。だけど地上戦もロケット砲の飛ばしあいもできないのです。

もう一つの戦争抑止力はトランプ大統領が戦争嫌いだという点です。これは氏の信条だと思います。よって仮にインドが手を出そうとすればトランプ氏が喝を入れるとみています。またウクライナやガザ地区をめぐる争いに世界は辟易としており、かつてのように敵味方が名乗りを上げて支援する体制ではないのです。両国の問題は人種的で宗教的背景が強いわけですが、冒頭申し上げたように宗教は物語であり、それぞれが自分の好きな物語に没頭すればよいのです。どちらかに軍配が上がる話ではないのでそれこそ、傷が広がらないうちに手を売った方が良いと感じます。

後記
ふと思ったのが最近、飲み会がないこと。飲み会で騒ぐ年齢でないし、私の時間が取れないこともあります。大抵の夜の会合は一対一とか少人数の目的をもった会食的な感じで飲み会のようにテーマ無しの仲間内の気楽な集りはコロナ前からほとんど消滅したと思います。SNSをやらない私としてはローカルの情報が欠落するのですが、5年も無関心でいても特段問題ないということは飲み会とは単なる時間つぶしのお遊び以上の何物でもなかったのかもしれません。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年5月10日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。