物価高対策、国民が望む政策にどう立ち向かうのか?

自民党総裁選を控え、候補者が日本記者クラブ主催の討論会で意見をぶつけ合いました。それを報じた日経のタイトルは「内向く自民党総裁選、物価高対策に集中 世界の視点欠く」となかなか手厳しくなっています。

小林鷹之氏Xより

驚くことに他紙は軽いタッチの扱いで他のニュースに埋もれています。まるで弱い読売ジャイアンツの報道が小さく扱われていた時のような感じで「自民党の総裁選への関心もそんなものなのか?」と言わざるを得ません。私自身もさほどブログネタにしたいとも思わないのはあまりにも凡庸な内容に「そんなものしか出せないよね」と半ば諦め気味だからかもしれません。

なぜ凡庸になるのか、これは新興企業と大企業の違いを想像すればよいかと思います。新興企業は多少の失敗でもへこたれず、リスクを取りながら成長させようとします。一方、大企業は石橋を叩き、新しいことをするならば「おい、君、そんな斬新なことをして失敗したらだれが責任を取るのかね?君が辞めればいいというものではないんだよ!」という空気が蔓延しています。

総裁候補、つまり総理大臣になる可能性が高いわけですから発言は1億2千万人のあらゆる境遇の方に「必ずしも国民全員に満足されないかもしれないけれど、酷い批判の対象にはならない」ような過激ではない発言に留める必要があるのです。

そんなことができるのか、という疑問はあります。しかしながらそれができる方法は一つだけあるのです。それは「1億総中流を復活をさせるような方策」であります。基本的に差別や格差のないフラットな社会を模索するなら団地型ライフ、つまり向かいの団地に住んでいるすべての家は窓越しに午後7時には食卓で家族が団らんしている様子が見える社会を作ればよいのです。「あら、あなた、外食なの?家に誰もいないのね、かわいそうだわ」と言われる社会とも言えます。いや、「日本型1984の世界」といったほうがよいのかもしれません。

いまさらそんな世界に戻れるわけないだろう、はい、おっしゃる通りです。

ではお前は国民の最大の関心事、物価高対策をどうすべきと考えているのか、と聞かれるでしょう。私は2つの課題が全てだと思うのです。物価高への不平不満対策、2つ目は限られる財源でどう対処するのか、です。

以前申し上げた通り私は日本は今、そんな不景気だと思っていません。雇用は絶好調、賃上げはキャッチアップしていないけれど「失われた30年」の時とは隔世の感とまではいわないまでも明らかに好転しています。株価は連日最高値、企業からも好調な決算数字が上がってきています。

この流れ、ひとえに「物価が上がったから」であります。物価上昇はモノの値上がりもありますが、やや遅れて賃金が上昇し、やや遅れて税収が増えてきます。国の財政では今年の歳入がかなり予想を上回るはずです。退職した高齢者も預貯金の金利がちょっと上がったと思いますが、それ以上に新NISAを含めた投資を始めた方に恩恵がありました。それが始まった24年1月の日経平均は33000円台、今が45000円台ですからざっくり1年9か月で36%も上昇しているのです。持てる者は笑っているはずなのです。

そんな中で日本は弱者の数がやけに多いのです。いわゆる貧困率で15.4%(2021年)と先進国トップクラス、格差を占めすジニ係数は今世紀に入ってからずっと高止まりです。理由は様々ですが語弊があるかもしれませんが、わかりやすく言うと「エスカレーターから降りて立ち止まっている人が多い」ということです。百貨店のエスカレーターで下層階にある婦人服売り場で降りてしまった人が多く、上層階のレストラン街までたどり着けないわけです。

ただ、私はエスカレーターは動いていると考えています。それに乗れない、乗るのが怖い、乗っても落とされる、子連れだと無理…といったバリアが多いのではないかと考えています。

よって私の経済対策の考え方とは、百貨店の上昇階に向かってエスカレーターに乗っている人には「そのまま乗り続けてください」とエール送り、「上層階にはもっと面白いものがある」という教育を施せばよいと考えています。一方、婦人服売り場に留まっている人たちに手厚いアメを用意するわけですが、私は単に配るのではなく、ある一定の成果を持って褒美のような形にする仕組みを取り入れてほしいのです。7階まで上がれば大催物会場があってきっと良いことがあるよ、といった具合です。

全ての人には才能と可能性はあるのです。ただ、その光らせ方がわからないだけ。なのに国民に均一に金をばら撒くというのは今や批判されつつあるバーナンキのヘリマネと同じ発想なのです。そうではなく、メリハリを、そして効果あるお金の使い方をすべきでしょう。

総裁総理にになる人が目指すことは

「日本国民の生活水準を世界最高レベルに引き上げる、そして貧困を作らない」

そういう明白でわかりやすい目標を設定し、夢を提示することが大事だと思うのです。候補者の討論会の際に5人が掲げたフリップを見ていると「これは禅問答か?それとも哲学者の思想でも述べているのか?」というほど具体性に欠け、夢にかけ、つかみどころのない主張になっています。

経済の話だけを捉えれば私から見れば全員落第です。チカラを失った政党が掲げる政策はより近視眼的で足元しか見えないそんな気がします。

本当に大丈夫なのか、と言いたいところですが、しがらみを抜けて総裁になったらどなたがなるにしろ、きっとやってくれるものと期待したいと思います。

では今日はこのぐらい。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年9月25日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。