先日、警視庁公式アカウントのある投稿が話題となりました。
警視庁の公式アカウントがネットにはびこる詐偽広告の啓発ポストを投稿
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警視庁「こちら、詐偽広告によく使われる三橋貴明さんを始めとした“ホンモノ”の方々からメッセージです」
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“本物”をカタカナで“ホンモノ”と書くとネットでは“真性のキチガイ”を意味してしまうため困惑するX民が続出(今ここ) pic.twitter.com/U24BRLBbw3— 滝沢ガレソ (@tkzwgrs) November 12, 2025
SNS上で有名人の名前をかたり詐欺サイトに誘導するアレですね。
話題になった理由は、その広告塔として勝手に名前出されている被害者(?)の面々が微妙で、「えーこの人の名前で誘導するの??」的なインパクトがあったからでしょう。
でも個人的には「なるほどそうきたか。詐欺グループ、なかなかやるではないか」という印象ですね(苦笑)
なぜこのセレクションが絶妙なんでしょうか。そして、なぜ警視庁のアカウントは「ホンモノ」と銘打ったんでしょうか。
いい機会なのでまとめておきましょう。実は個人のキャリアと深い関係のある話だったりします。

魔法のスイッチがあると考える人ほど、うまい話に引っかかる
世の中には、少なくない数の他責思考の人たちが存在します。
「もっと頑張って上を目指そう」と考えるのではなく「俺がパッとしないのは〇〇のせいだ」と短絡的に考えてしまう困ったちゃんですね。
世界最悪の財政事情の我が国において「自分の生活が苦しいのは政府のバラマキが足りないからだ」と考えるバラマキ派などはその典型でしょう。
そんな非現実的な願望を正当化するためには、どこかで論理の飛躍が必要となります。バラマキに制約がある=自分の人生はこれ以上は上向かないってことですから。
政府には自由自在に経済成長させられたり、無限にお金を生み出せる魔法のスイッチがあるんじゃないかな、でないと自分は一生底辺確定だからあってもらわないと困る、いやあるに違いない!
というわけですね。バラマキ派の場合は「日本政府はいくらでも円を刷って配れる」というMMTが魔法のスイッチということになります。
で、ここからが本題なんですけど、そういう人って当たり前ですが「投資すれば絶対儲かるうまい話がありますよ」っていうのにメチャクチャ引っかかりやすいんですよ。
だってもともと“魔法のスイッチ”を素で信じちゃうような頭だから。
「政府が自由自在にお金印刷できて経済成長させられるんなら、絶対儲かるうまい話もあるだろうな」
とぱくっと食いついちゃうわけです。なんたって自分で努力する気ゼロですし。
つまり、バラマキ派というのは投資詐欺のカモとしてとても効率が良い集団であって、その広告塔としてはやはり普段バラマキ派から小銭巻き上げて食ってるような人を使うのが合理的だということですね。
たとえば普段から規制緩和や自由競争といったバカには耳に痛い話ばかりしているホリエモンを広告塔にしたって、氏のファンはまず釣れないわけですよ。
でも「政府の借金は国民の資産!」とか言ってる奴に「絶対儲かる話ありますよ」って言わせたら、結構釣れると思いますよ。だって普段言ってることと同じだから。
少なくとも詐欺グループの連中は、以上のような構図をばっちり理解した上でやってるわけです。MMT信者よりよほど頭いいと思いますね(苦笑)
余談ですが、この「魔法のスイッチで他責思考のバカを釣る」というメソッドを理解し実装しているのは、詐欺グループだけではありません。先日、宮城県知事選で現職と大接戦を演じた参政党も同じことやってますね。
「国債発行による積極財政」を掲げる参政党は極右でありながらも、極左のれいわ支持層から大きな支持を得ることに成功しています。
「あの手の連中がどういうエサに食いつくか」ということをばっちり理解しているわけです。
参政党のガセネタって釣り針がデカすぎて普通の社会人は引っかからないんだけどれいわ信者はがんがん釣れちゃうんですよ。 https://t.co/LUH8eBEHUS
— jo shigeyuki (@joshigeyuki) October 26, 2025
さて、ここで一瞬だけ、自身が警視庁の詐欺対策の担当になったと想像してみてください。ネット詐欺撲滅のため、公式アカウントで啓発するのが仕事です。
とりあえずよく使われている著名人からコメントも取りました。
「国民の皆さん、騙されないでね。本物からのメッセージを今から流すから」
あとはSNSに投稿するだけです。
が、ふとある疑問を抱くはず。
「……でも、そもそもこの人たちっていったい何の“本物”なんだろう」
エコノミストでも経済学者でもない、主張と言えば「あなた方は悪くない、悪いのは魔法のスイッチを使わない政府です」といってアホから小銭を巻き上げるだけ……やってること同じじゃね?
そういう人を仮にも警視庁公式アカウントで“本物”って言っちゃっていいのか……よし、ここはあえて分かる人にだけ伝わるようにしておこう。
というわけで「ホンモノからのメッセージ」というおちょくってるのか持ち上げてるのかわからないメッセージの背景には、担当者のこうした心理的葛藤があったんじゃないか、というのが筆者の見方です。
※本件は特定の誰かをアレするものではなくあくまで一般論です。
※どうも「リベ大学長」という人は情弱ビジネス系の人ではないみたいです。他と一緒くたにされていることに同情します。
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以降、
バラマキ派、リフレ派、減税派「魔法のスイッチはあります」
魔法のスイッチは無いが、人は努力すればたいていのものは手に入る
Q:「初の転職に際して注意すべき点は?」
→A:「必ず未経験の業務を任されます。そしてそこで真価が問われます」
Q:「50歳手前での転職に満足した理由」
→A:「本コラムに通じる内容ですね」
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編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’sLabo」2025年11月27日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。






