
こんにちは!自由主義研究所の藤丸です。
今回で「政府は私たちの通貨に何をしたのか?」シリーズ、最終回です。
このシリーズは、アメリカの自由主義系シンクタンク「ミーゼス研究所」のアニメーションシリーズを元にしたもので、リバタリアンの思想家マレー・ロスバードの”What Has Government Done to Our Money?”をもとに作成されています。

マレー・ロスバード
このシリーズを通して読んでくださったかたは、通貨の歴史を学ぶことで、現代の通貨がいかに政府の管理下にあるかがわかったのではないでしょうか。
通貨は私たちの生活にとってなくてはならないものです。
通貨という存在がなければ、毎日の生活をどのように過ごすか、また将来を思い描くことも難しくなります。
その非常に重要な「通貨」の未来は、今後どのようになっていくのでしょうか?
政府の管理がますます強まるのでしょうか?
それとも、通貨はもっと自由になれるのでしょうか?
それは、私たちがどのような未来を望むか、何を選択するかによって変わります。ぜひ一緒に考えてもらえると嬉しいです。
通貨の未来~政治のもの?民間のもの?
2009年、サトシ・ナカモトと名乗る匿名の人物が、ビットコインの最初のバージョンを公開しました。

ビットコインは、個人間で直接取引可能なデジタル通貨です。
ビットコインを作るにあたり、ナカモトはそれに旧来の金本位制と類似した性質を持たせようとしました。
ビットコインは、金採掘のように、次第に難易度が増す数学的アルゴリズムを解くことで「採掘(マイニング)」され、供給が制限されていました。
また、ビットコインは金のように容易に分割可能です。
さらにビットコインは、何かモノで裏付けされた通貨のように、政府が勝手に発行することはできません。

ビットコインを発表したホワイトペーパーの中で、ナカモトは「2008年の金融危機がきっかけでビットコインを考案した」と明らかにしています。
この危機は、FRBによる通貨操作の危険性と、ウォール街の大手銀行による濫用を浮き彫りにしました。
ビットコインは、専制的な政府に特権を与える「政治に操作された通貨」の代替手段となることを目指していました。
2009年以降、市場での自由な取引を通じて、ビットコインの価値は徐々に上昇しました。
2010年、ある個人がビットコイン1万BTCで2枚のピザを購入しました。
これはビットコインを使った最初の実際の商品との取引記録です。
当時のピザの価格は41ドルでした。

2010年、ビットコイン1万BTCで、2枚のピザが購入されました!
11年後の2021年には、その同じ1万ビットコインの価値は、なんと3億6500万ドルになりました!
すべて政府の支援なしで実現したのです。
FRBに対する懸念は、デジタルの民間通貨への関心だけでなく、他の動きも引き起こしました。
近年では、アメリカの複数の州が、金や銀を取引に使いやすくするために税法を改正しています。
米国憲法は州による紙幣の発行を禁じていますが、金属通貨の使用は保護されてきました。
テキサス州は、将来のインフレへの懸念から独自の貴金属保管機関を設立したほどです。(※)
※訳注
テキサス州は2015年に、州や民間が保有する金や銀を州内で安全に保管するための州立の「Texas Bullion Depository テキサス・ブリオン・デポジトリー」という貴金属保管機関を設立しました。
さらに2025年には、同デポジトリーに預けた金銀をデビットカード等を通じて決済に使えるようにする法律を制定しており、こうした動きは、インフレやドルの価値への懸念から金銀を重視する「健全通貨」運動の一環と理解されています。
このような民間通貨の台頭は、連邦準備制度、外国の中央銀行、大手金融機関に対する懸念の直接的な結果です。
2008年以降、世界中の中央銀行は、かつてない規模での通貨供給の拡大と信用創造を行ってきました。
中央銀行の専門家は、「これらの措置は一時的なものであり、通常の金融政策に戻れる」と繰り返し主張してきました。
しかし、そのたびに新たな金融危機を引き起こすリスクを伴ってきました。
政府が債務を増加させるにつれ、新たな懸念が生じています。
たとえば、金利が上昇すれば、政府が新たな債務を発行するコストが増加し、過去の支出の利払い費に税金がより多く充当され、新たな支出に回らなくなる可能性があります。
また、高金利で利益を出せない産業は崩壊する可能性があります。
FRBの政策によって、多くのアメリカ人は、従来のように銀行に貯金するのではなく、株式を保有することに誘導されています。
この状況で産業バブルが破裂すれば、多くの家庭の貯蓄が破壊される可能性があります。
そのため、政府と中央銀行は金融システムへの支配を強化し、自分たちが管理できない民間通貨に対抗するための新たな手段を模索しています。
たとえば、中央銀行は自前のデジタル通貨の創設を進める一方で、民間の暗号通貨に対しては規制を強化したり、金融システムから排除したりしています。

中国はビットコインを禁止し、それに代えて国家のデジタル通貨を推進しています。これは、ユーザーの個別の行動を追跡する目的もあります。
一部の中央銀行の関係者は、紙幣の使用を禁止する可能性にも言及しています。
紙幣を使えば、政府が追跡できない取引が可能になるためです。
もしすべての人が中央銀行のデジタル通貨を使わざるを得なくなれば、中央銀行は金利、通貨供給量、信用創造をさらに強力にコントロールできるようになります。
これは権力者にとって有利ですが、それ以外のすべての人々にとっては不利なことです。
世界銀行や国際通貨基金のような多国籍機関も、ドルに代わる自前のデジタル通貨の使用を検討しています。
もしこれが実現すれば、アメリカの国際金融における影響力は、こうした強力なグローバル主義の機関に移転するでしょう。
一部の人にとっての最終目標は、ヨーロッパ連合がヨーロッパの単一通貨を創設したように、世界的な統一通貨の実現です。
1931年にアメリカ政府が金本位制を廃止した際、政府は一般国民の金を没収し、国家の権力を大幅に強化しました。
将来的に、政治化された通貨に対抗するビットコインや金のような手段に対して、同様の押収が行われる可能性があります。
それは、グローバリスト機関、政府、中央銀行の力をさらに強化するためです。
国家権力の拡大や権力の濫用に立ち向かおうとするすべての人にとって、最も重要な問いのひとつは次の問いです。
「政府は私たちの通貨に何をしてきたのか?」
編集部より:この記事は自由主義研究所のnote 2025年12月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は自由主義研究所のnoteをご覧ください。






