シルパーパス・敬老パス系の政策はどうしたって今後は見直さざるを得ない。高齢化が進む中、若者の負担でこうしたボーナスを持続することは困難。
〉「財源枯渇」の現実…40年で30倍に膨れ上がった「高齢者交通費助成制度」 議員は「廃止」を提案 生活が圧迫される高齢者https://t.co/DAsOBejKap
— おときた駿 / 元参議院議員の社保下げニキ (@otokita) December 21, 2025
長崎市の「高齢者交通費助成制度」見直しが話題になっていました。
このような自治体が独自政策として展開する高齢者優遇政策の典型としては、他に「敬老祝金」などがあります。一定の年齢に達した高齢者に対し、自治体が現金や商品券を支給する仕組みです。
こうした制度は長らく「高齢者を大切にする日本らしい政策」として受け止められてきました。
しかし、私は今こそ冷静に見直すべき時期に来ていると考えています。
それは高齢者を軽んじるからではありません。むしろ、本当に高齢者を支えるために、政策の形を変える必要があるからです。
敬老祝金が生まれた時代の前提
敬老祝金が各地に広がったのは、1950〜70年代。戦後復興から高度経済成長期にかけてのことでした。
当時の日本の高齢化率(65歳以上人口の割合)は、およそ5〜7%に過ぎません。
高齢者は社会の中で「少数派」であり、敬老祝金は象徴的・儀礼的な意味合いの強い支出でした。また、戦争を経験してきた世代で、特別な経緯を集めていたという背景もあります。
この頃はまだ現役世代が圧倒的多数で、自治体財政にも一定の余裕があった時代です。
この前提のもとでは、「節目の年に、苦労してきた先人をお祝いをする」という制度は、無理なく成立していたのです。

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いまは、前提条件がまったく違う
一方、現在の日本はどうでしょうか。
高齢化率は約30%。国民の3〜4人に1人が65歳以上という、世界でも類を見ない超高齢社会です。
医療費、介護費、年金給付は年々増え、社会保障費は国と自治体の財政を大きく圧迫しています。
同じ「敬老祝金」という名前でも、対象となる人数は、制度創設期の4〜5倍に膨らんでいます。
この状況で現金給付や交通費補助を続ければ、それはもはや「お祝い」ではなく、恒常的な再分配政策になります。
東京23区がすべて廃止した理由
東京23区では、2010年代に入ってから、すべての区が現金給付型の敬老祝金を廃止しました。
これは冷たい判断だったのでしょうか。私はそうは思いません。多くの区が、
- 介護予防
- 見守り体制の強化
- フレイル対策
- 高齢者の社会参加支援
といった、より実効性のある施策へと財源を振り向けています。
つまり、「敬老」をやめたのではなく、「敬老のやり方」を変えたと捉えるべきなのです。
情緒的な政策ほど、検証が必要
敬老祝金は、情緒的に理解されやすい政策です。
「お祝いを削るのか」「高齢者を切り捨てるのか」
という声が上がるのも自然でしょう。
しかし、だからこそ政治は、感情ではなく人口構造と財政の現実を見なければなりません。
制度が生まれた時代と、今の時代とでは、前提条件がまったく違う。
この事実から目を背けたままでは、将来世代により大きな負担を押し付けることになります。
本当に大切なのは「続く支え方」
限られた財源の中で、何を残し、何を見直すのか。
敬老祝金や交通助成を見直すという議論は、高齢者を大切にするかどうかではなく、高齢社会をどう持続させるかという問いです。
「年齢で区切った形だけの一律給付」よりも、「困っている人に、必要な支援が届く制度」へ。
そのための見直しを、これからも正面から訴えていきたいと思います。
編集部より:この記事は、前参議院議員・音喜多駿氏のブログ2025年12月21日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は音喜多駿ブログをご覧ください。






