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ギネス世界記録に挑戦した。
こう言うと、すごいですねと言われる。努力家ですね、と。でも実際は、すごくも何ともない。ただ追い詰められていただけだ。
「1分で幸福に満たされる 巡りの法則」(渡邉有優美 著)徳間書店
ヨガ講師を20年以上やってきた女性がいる。彼女はギネス世界記録への挑戦を決意し、体を限界まで追い込んだ。努力し、耐え、頑張り抜いた。
で、どうなったか。挑戦を終え、データを事務局に送り、審査結果を待つ。約半年間、彼女は不安に押しつぶされていた。結果を出したつもりでも、認められるかわからない。苦しい状況は何も変わらない。
ある日、疲れ果てて床にうつ伏せになった。そのまま動けなくなった。
「もう立ち上がれない……」
涙が出そうになりながら、彼女はほんの1分、呼吸だけをととのえた。
すると、驚くほど体が軽くなった。心の渦が静かになったそうだ。
実は彼女、シングルマザーだった。仕事も子育ても、すべてを一人で背負っていた。子どもを守り育てる責任感。社会の期待に応えなければという義務感。誰にも弱音を吐けない。心はいつも張りつめていた。
「私の人生、このままでいいのかな?」
この問いが、ずっと頭の片隅にあったという。
――ここまで読んで、「よくある話だな」と思った人もいるだろう。私もそう思った。シングルマザーの苦労話。ギネス挑戦の裏側。自己啓発本にありがちな展開。
でも、ちょっと待ってほしい。
よくある話だからこそ、考えるべきことがある。なぜこんなに「よくある」のか。なぜ日本中に、いや世界中に、追い詰められている人がこれほど多いのか。
私たちは「入れる」「動く」「緊張する」ばかりで、「出す」「休む」「緩める」を忘れている。
彼女は言う。人生の中で「1分の転機」は何度も訪れていた、と。
窓の外の光を1分眺めた日。ギネス挑戦中に呼吸の巡りと宇宙とのつながりを悟った瞬間。疲れ果てて動けなくなった日。背骨をたった1分動かしただけで気持ちが変わった朝。
どれも劇的ではない。静かで、小さな1分だった。
でもそれらが積み重なるたびに、人生の流れが変わっていったという。
正直、「宇宙とのつながり」とか言われると、ちょっと引く。スピリチュアル系かよ、と。
でも「1分で呼吸をととのえる」くらいなら、別に怪しくない。むしろ当たり前のことだ。当たり前すぎて、誰もやらないだけで。
彼女が最終的にたどり着いた結論はこうだ。
「人は頑張るから幸せになるのではない。巡りが起きたとき、勝手に人生はととのい始める」
信じるか信じないかは、正直どうでもいい。ただ、一つ確かなのは、今のやり方で幸せになれていないなら、何かを変える必要があるということだ。
たった1分の呼吸だった。1分。たった1分。
それくらいなら、試してみてもいいんじゃないか。
※ ここでは、本編のエピソードをラノベ調のコラムに編集し直しています。
尾藤克之(コラムニスト、著述家、作家)
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22冊目の本を出版しました。
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