原子力規制庁職員が「私用で訪れた上海で業務用端末紛失」の不可解

原子力行政の中枢を担う機関で、看過できない情報管理事故が明らかになった。原子力規制庁の職員が中国滞在中に業務用スマートフォンを紛失していた問題は、単なる私的トラブルでは済まされない性質を持っている。

参照:原子力規制庁の職員が中国・上海で業務用スマホ紛失 国の個人情報保護委員会に報告

  • 原子力規制庁は、職員1人が2025年11月、私的に訪問した中国・上海で業務用スマートフォンを紛失していたと明らかにした。
  • 職員は11月3日に中国に入国し、上海の空港で保安検査を受ける際、手荷物から業務用スマートフォンを取り出した後に所在が分からなくなったとされる。
  • 紛失に気付いたのは渡航から約3日後で、その間、端末が第三者の手に渡っていた可能性を否定できない状況となった。
  • 当該スマートフォンには、核セキュリティー担当部署に所属する職員の氏名や連絡先など、原則非公表とされる内部情報が登録されていたという。
  • 核セキュリティー担当部署は、国内原子力施設における核物質の防護を担い、テロ攻撃や核物質盗難といった重大リスクへの対策を担当する中枢部署でもある。
  • このため、担当職員の個人情報や部署の連絡先は機密性が高く、外部に漏れること自体が安全保障上の問題となっている。
  • 規制庁は「現時点で悪用の痕跡は確認されていない」としつつも、「情報漏洩の可能性は否定できない」と判断し、個人情報保護委員会に報告された。
  • 一方、日本を取り巻く地政学リスクが高まっているとされる中、中国滞在中に核関連部署の業務用端末が失われた点について、単なる不注意で片付けられないとの指摘も出てきている。
  • 本当に偶発的な紛失だったのか、あるいは何らかの形で標的化されていた可能性はないのかなど、疑問の声も関係者や専門家の間で上がっている。

今回の事案は、私的渡航中のスマートフォン紛失という表面的な問題にとどまらず、核セキュリティーという国家の根幹に関わる情報管理体制の甘さを浮き彫りにした。地政学リスクが高まる中で起きた以上、事実関係の徹底検証と再発防止策の強化が不可欠であり、「単なる紛失事故」として処理する姿勢こそが、より大きなリスクを招きかねない。

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