
The White House より
8日夜のNHKニュースを見ていましたら「トランプ米大統領の大胆な動きが止まりません。世界が振り回されています」と、アナウンサーが表現していました。
強引、無謀、乱暴、秩序無視とも言いにくかったのか、「大胆な」にしたのでしょう。「大胆な」には肯定的な意味が含まれてしまいますから、適切な言語表現ではありませんでした。
ベネズエラを軍事攻撃して反米政権を転覆させ、大統領夫妻を拘束しニューヨークに移送し収監したことに対し、「麻薬取引の取り締まりという面があったとしても、他国への武力行使を禁じる国連憲章に違反する。深い懸念を抱かざるを得ない」といった批判が噴出しています。
その直後には、「国連関連組織を含む66の国際機関から脱退する」と公表しました。すでにパリ協定(地球環境問題)、WHO(世界保健機構)、ユネスコなどから離脱しており、戦後築いてきた国際秩序を破壊し続けております。
さらにデンマーク自治領であるグリーンランド領有の願望を表明するなど、多国間主義の放棄、武力行使による威嚇など、これまでの常識では、予想できなかった強引な対外政策を打ち出しています。
NHKのニュース報道に戻りますと、「世界が振り回されてきたトランプ大統領の動きが止まりません」とでも表現すべきでした。「大胆な」には「思い切った」という肯定的な意味もありますから、言葉の誤用です。
電話協議の直後にベネズエラ攻撃というタイミングの悪さ
次に高市首相の外交感覚の欠如に失望しております。高市氏は正月の2日夜、トランプ大統領に電話し、今春訪米し、首脳会談を行うとの約束を取り付けたそうです。なんともタイミングの悪い電話協議(25分)でした。
その数時間後に、ベネズエラ攻撃が行われたのです。ベネズエラを巡る情勢は緊迫の度を増していましたから、電話協議はタイミングが悪すぎると情報を入れる人物が官邸か外務省にいなかったのでしょうか。情報をあげたとしても、高市氏は「正月の挨拶だからいいのよ。電話したいのよ」とでも押し切ったか、そのどちらかです。とにかくこのような感覚だとすれば、高市外交の先行きが心配です。
対米批判をしなかった高市外交
ベネズエラ攻撃に対する政府の声明も中途半端です。高市首相は「邦人の安全確保を最優先に関係国と緊密に連携して対応する。日本は従来から自由、民主主義、法の支配といった基本的価値、原則を尊重してきた」と語りました。国際法無視のトランプ氏を批判する文言は皆無です。
それを指摘した新聞社説はありました。「首相は米軍の軍事行動への評価を避けた。国際法違反であることは明白だ。首相は米国の行動を黙認した」(朝日新聞)と、当然の指摘です。
「自国の権益拡大のために軍事行動にでた影響は中南米にとどまらない。中露による一方的な現状変更の動きを助長しかねない」(読売新聞)と米国は批判しても、高市外交の曖昧に言及しない新聞です。自国の首相は批判しにいと思っているようでは情けない。
高市外交は、いつまでも過剰な対米依存を続ける。さらに「首脳会談をしたら成功、早く会えた。映像、写真が撮れた」が首脳会談の成功と考えている。トランプ氏はそんな子供じみた思いを喝破しているでしょう。
高い支持率の使い方のベクトルが違う
高市氏が「政権支持率が70%と高いのは、対中強硬策の結果であり、それを崩したない」と考えているとすれば間違いです。高い支持率があるのだから、過剰な対米依存を修正し、中国との友好関係を模索していくべきです。高い支持率の使い方のベクトル(方向性)が逆なのです。
中国政府は日本への輸出規制を強化することを決め、レアアース(希土類)関連製品も対象になりそうで、自動車、電子部品、工作機械など幅広い産業に深刻な影響が及びます。
高市首相が「どう考えても、台湾海峡有事は日本有事」と国会答弁して以来、中国は日本批判を開始し、次々に対日攻撃を強めています。分かり切った展開です。しかも米中というG2で世界を仕切って行こうという国際情勢の中で、このような発言によって、中国を刺激することは無益、有害であることを自覚していない。首相個人として、かねてからの持論を述べ、溜飲を下げていると思われる。
伊勢神宮参拝に安倍氏の遺影を持参する薄気味の悪さ
安倍・元首相も持論は同じで、それになぞったのでしょう。高市首相は正月に伊勢神宮参拝の際、安倍首相の遺影を抱いて歩みました。演出効果を計算したにしても、「なんでまた安倍氏の遺影」と、気味悪い思いでした。
安倍氏が親しい関係を築いたトランプ氏は、今や同盟国との関係を冷遇し、国際秩序を壊し続けています。安倍氏が首脳会談を繰り返したプーチン露大統領はウクライナ侵攻を続け、4年目に入ろうとしてます。高市氏は「安倍後継者」を自称すれば、支持率を高められると思っているのでしょう。国際情勢を踏まえた外交感覚の不足を私は痛感します。
アベノミクスの負の遺産のため、日本は円安、輸入インフレに悩まされ、異次元金融緩和の本格的な修正に踏み切れない。「戦後80年、昭和100年」どころではない。今や世界は「100年に一度」どころか、19世紀後半以来の帝国主義(他国、他民族に対する政治的、経済的、軍事的支配)の時代に戻ろうとしています。
そうした時代的出汁混乱に日本はどう対応していくのか。それこそが高市外交が目指すべき道なのです。深みのない首脳会談をしたり、元首相の遺影を抱いたり、官邸を出る時などにやたらと笑顔を振りまいて印象操作すること以外にもっと頭脳を使ってほしいのです。
編集部より:この記事は中村仁氏のnote(2026年1月9日の記事)を転載させていただきました。オリジナルをお読みになりたい方は中村仁氏のnoteをご覧ください。






