長年、財界や学術界で影響力を持っていたエプスタインをめぐる問題は、単なる性犯罪の告発にとどまらず、彼が築いた人脈と資金の流れの実態を白日の下にさらすきっかけとなっている。その中で、2019年にザ・ニューヨーカーが報じた伊藤穰一氏とエプスタインの関係をめぐるスクープは、大きな議論を呼んだ。

伊藤穰一氏(千葉工業大学HPより) とエプスタイン氏
MITメディアラボとエプスタイン:隠蔽された資金関係
ニューヨーカーの記事では、世界的に知られる学術機関であるMITメディアラボが、性犯罪で有罪判決を受けたエプスタインからの寄付やその影響力を深く受けていたにもかかわらず、その関係の実態を隠そうとしていたことが明らかにされた。文書や内部メールの分析から以下の点が判明している。
- エプスタインはMIT側のドナーリストでは「寄付不適格者」と登録されていたにもかかわらず、メディアラボは彼の寄付を受け入れ続けていた。
- 直接の寄付だけでなく、エプスタインは他の富裕層(例えばビル・ゲイツやレオン・ブラック)からの巨額寄付を仲介し、その総額は少なくとも750万ドル(約8億円)にのぼるとされる。
- MITやメディアラボは、これらの寄付についてエプスタインの関与を伏せ、「匿名寄付」として処理するなど、外部に知られないよう細工をしていた。
- 内部では、エプスタインの名前を出さないために「Voldemort(名前を呼ばれざる者)」と呼ぶスタッフもいたという証言もある。
こうした資金関係が明るみに出ると、当時のメディアラボ所長であった伊藤氏は辞任に追い込まれ、MITも寄付を返還するなど対応に追われた。関係者や元スタッフの証言は、エプスタインが学術界の影響力を利用して自身の評判を高めようとした可能性を示唆しており、学術界全体の倫理観にも疑問を投げかけた。
伊藤穰一氏が再び注目される
最近、エプスタイン関連文書がさらに公開されていることを受け、ニューヨーク・タイムズ(NYT)などでも再び伊藤氏の名前が取り沙汰されている。エプスタインの文書に伊藤氏が多数登場している点を指摘しており、彼がかつて国際的な研究プロジェクトの中心人物であったことと併せてその関係性が改めて検証されている。NYTの記事では、伊藤氏がエプスタイン氏と長期間にわたり4,000通を超える電子メールを交わしており、緊密な関係にあったと分析している。
この注目は、エプスタインの財力と人脈が学界や文化界に与えた影響がいまだ消えていないことを示しており、エプスタインとの接点を持った人物や機関が、その関係の透明性や説明責任を問われていることの表れだ。
エプスタイン事件は、単なるスキャンダルではなく、資金提供の透明性と倫理、そして権力と学術界の関係のあり方を問い直す契機となっている。






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