中国の国会に当たる全国人民代表会議(全人代)が始まりました。初日に李強首相の演説があったのですが、経済に関しては保守的、というか守勢に入っているように見えます。その一方で「自立自強」と称する経済体制の立ち上げをめざし、アメリカを強く意識したものになっています。
台湾については独立勢力には「断固として打撃を与える」(産経)としてかつてより明白で強いトーンを打ち出しています。28年3月が習近平氏の第3期最後になることもあり、習氏の悲願となる「一つの中国」の完成に向けた動きを展開する意志の強さが見て取れます。
まず経済ですが、GDP成長率を4.5-5.0%と引き下げました。この背景はいろいろ取りざたされていますが、基本的には5%成長が実体経済とかけ離れてしまっていること、及び、数字の独り歩きに対して供給過多が生じ、需給バランスが相当悪化していることから名目より実を取ったということではないかと思います。
そもそも中国が毎年5%も成長しているとは誰も信じていない中、昨年も推し量ったように5%成長を達成したと誇っています。これは習近平氏のメンツということになるのでしょうが、ほとんど意味をなさないことを政権も共産党も理解しつつあり、実体とのギャップを徐々に埋めているということではないでしょうか?実際に中国人の購買力は落ちており、春節もいつもと比べて大分おとなしかった印象があります。私が先日まで日本にいた時も確かに中国人観光客は相当少なかった印象です。

習近平国家主席らが出席して全国人民代表大会が北京で開幕した 中国共産党新聞より
経済構造においては不動産をはじめとする負の遺産の処理が進んでおらず、その多くが政府による判断ミスが原因にもかかわらず、それを認めないことでドラスティックな立て直しができていません。そんなところにもメンツを重視する性格が前面に出ているのだろうと思います。共産党という規律が非常に厳しい社会制度において個性をだしたり、方針やぶりを厳しく弾圧しているため、本質的には優秀な中国人の才能を生かしきれてないというのが私の印象です。
個人的には中国経済の本格的な浮揚はまだ当分なさそうだとみています。日本が失われた30年と言われていますが、中国は体制上の制約を含め、日本よりはるかに時間かかるかもしれません。つまりこのままでいけば私が生きているうちは中国経済が復活することはなさそうだということです。
ではそんな体の中国がなぜ、台湾をそれほどまでに統一したがるのでしょうか?イデオロギーなのでしょう。香港統一を実現したのち、香港は輝きを失ったと思います。もちろん表面上のビジネスはあり、人々も経済活動を営んでいますが、かつての活気がなくなったのは共産という枠組みにはめられてしまったからでしょう。台湾がもし統一されるならそれと全く同じことが起きるとみています。日本とのビジネスは引き続き継続すると思いますが、それは日本と中国の関係の枠組みの中で行われるので今までのような自由は効かないことも多々出てくるでしょう。
台湾問題は中国と台湾で決めることであり、外野が口をはさみにくいのは事実です。今さら台湾の歴史の話をしたくはないのですが、国民党が共産党との闘いに敗れ、台湾にその居を構えたという流れにおいて一種の内戦の敵だったわけですから台湾の人にとって同意したくもないことは理解します。一方、台湾の人の約半数は中国本土支持派であり、台湾内部での明白な意見統一ができていない以上、台湾の独立もないわけです。
では中国は力で持って台湾を押さえつけるか、と言えばそれはないだろうと考えています。多分、反中国派を抑え込む方法を取ると思われ、香港の時と同じような感じになるとみています。よって形としては台湾内で一種の争乱を引き起こし、それに乗じるという手段があり得るのではないでしょうか?
どのような結果にしろ、それは中国と台湾が決めることであり、残念ながら第三国が手を出せるものではないと思います。よってトランプ氏が習近平氏と4月に会談する際にはそのあたりを含ませるのではないかとみています。特にトランプ氏はイランに手を出してしまい、それが短期決戦になるとみているようですが、個人的にはトランプ氏が習氏と会う時も終結していない可能性はありそうです。その場合、習氏の立場が強くなってしまい、外交的にはトランプ氏は中国に一定の譲歩をする公算があるとみています。そのひとつが台湾問題ではないかとみています。
中国は経済こそいまだ重病患者でありますが、国家体制については相当引き締めています。もちろん、軍部の粛清の問題もあります。張又侠氏失脚問題を文革の際の林彪事件に似ているのではないか、という指摘もあります。林彪事件とは毛沢東の後継とされた林彪氏がクーデターを計画するも失敗、飛行機でソ連に逃げる際に墜落して死亡したという文革時最大の事件の一つであります。張又侠氏は習近平氏の後継者ではなく、林彪を断罪したことで毛沢東の時代が終わったように張又侠氏を粛清することで習近平氏の時代も終わるという憶測はちょっと飛躍しすぎではあります。
むしろ私はアメリカの方がふらつく可能性があるとみており、中国は虎視眈々とそのチャンスを伺っていると見たほうが良いでしょう。少なくとも目先言えることはイランの戦争が短期で終わればアメリカ有利、中国は交渉で苦心、一方、長期戦になり、米中首脳会談時までに決着していなければ中国が圧倒的に有利に話が展開できるとみています。そうなれば首脳会談を延期する可能性も出てきてしまいます。予断を許さないと思います。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2026年3月6日の記事より転載させていただきました。







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