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さまざまな業種で倒産件数過去最多のニュースが飛び込んでくる昨今、資格を取得して独立しようと考える人は増える一方です。しかし、経営コンサルタントで士業(特定行政書士)でもある横須賀輝尚氏によれば「資格を取れば人生安泰」という神話は20世紀で終わり、「努力次第で成功できる」というのも正しくないといいます。氏の著書『ごく普通の人でも資格を取ってきちんと稼げる本』(日本実業出版社)から、正しい「資格起業法」について再構成してお届けします。
貧乏資格業と金持ち資格業
「資格を取れば人生安泰」、そう信じて私は資格を取りました。それも国家資格です。そして独立起業。結果としてどうだったか。成功どころか、電話のひとつも鳴りません。収入はゼロ。資格を取っただけでは無意味だということがわかりました。
「資格業は努力次第で成功できる」と聞いた私は、マーケティングを学び、営業をしました。その結果、資格業の仕事は入ってきました。ところが、寝る間もないほど忙しい割には、想像していたほど、収入は増えなかったのです。
「おかしい、自分が思い描いていた成功とまったく違う。資格で起業するというのは、まるで広大な砂漠の中から1粒のダイヤを拾い続けるようなものじゃないか……」
そして、私はあることに気がついたのです。資格業の仕事は、自分でコントロールしにくいビジネスであること、完全労働集約型のビジネスであること。つまり、正攻法で起業し、必死に営業しても、資格業は稼ぎにくいビジネスモデルなのです。
では、資格業だと成功できないのでしょうか? そんなことはありません。正しい方法で、きちんと戦略を立てていけば、超高収益のビジネスモデルをつくることができます。しかもそのビジネスモデルは、資格を持っていないと実現できません。
「資格を取ったら、それで食べていけるのでしょうか?」
士業コンサルタントをしている私のところには、よくこうした質問が寄せられます。これから資格試験を受けようとする人はもちろん、すでに試験に合格した人からもです。
私自身も資格を取る前は疑問に思っていました。とある資格のガイドブックを見ると「行政書士で見込める年収は500万~1,000万円。努力次第でそれ以上も可能」と書いてありましたが、受験当時はまだ実際に本物の行政書士を見たこともなく、本当に稼げるようになるのかとても心配でした。
23歳のときに行政書士という資格で起業した私の、これまでの経験から質問に答えると、「資格だけではまったく食べていけません」と断言できます。資格を取ったからといって、それで生活できる保証はまったくありません。
ひと昔前、資格にまつわる伝説がありました。それは、「手に職。資格を取れば人生は安泰である」というものです。
まだ大学生だった私はこの伝説を信じ、わき目もふらずに勉強をして、国家資格である行政書士の資格を取得しました。そして「これで私の人生はバラ色だ」と真剣に思っていました。
ところが、いざ起業してみるとそんなことはまったくありませんでした。もう一度言いますが、資格だけでは稼げません。世の中にはたくさんの資格業がありますが、どんな資格でもこれは同じです。
ところが資格業には、起業してもまったく稼げない「貧乏資格業」と、資格業で起業してからガンガン稼ぎ、“先生”と尊敬される「金持ち資格業」の2つのタイプがあります。
同じ資格を持っているからといって、誰もがみんな同じように稼いでいるわけではありません。稼げる行政書士もいればまったく稼げない行政書士もいます。それは、社会保険労務士でも税理士でも同じです。
この違いはいったい何なのでしょうか。経験の違いでしょうか。人脈の違いでしょうか。それとも資金の違いでしょうか。いいえ、そうではありません。資格で起業して成功するのは、資格の差でも経験の差でも、人脈の差でもありません。
答えは簡単です。それは、資格業をビジネスとしてきちんととらえているかどうか。たったこれだけなのです。
努力だけではすぐに頭打ちになる
資格があろうがなかろうが、起業するということは「仕事をして収入を得ること」です。新しくビジネスをはじめる人は毎日のように現れています。ラーメン屋や居酒屋などの飲食店をはじめる人もいれば、ウェブデザインやシステム開発の企業を立ち上げる人もいます。
資格業以外の起業家が、「ラーメン屋で成功できますか?」「ウェブデザインで稼げますか?」と誰かに相談することはありません。個人の責任と意志で起業しているからです。そして日夜、必死に営業活動をし、競合他者との生き残りをかけて戦っているのです。
資格で起業することも、これとまったく変わりません。資格を取って起業し、成功できるかどうかは、その人次第なのです。資格業をひとつのビジネスとしてとらえ、そのために経営者としての能力や営業やマーケティングのノウハウを学び、実践していく、先人たちはこうして成功していったのです。
つまり、どの資格なら成功できて、どの資格では成功しにくいといった噂(年収データなど)は気にしなくても大丈夫です。このような「資格を持っているだけでは成功しない」という考え方は、もう常識になりつつあります。
資格業も営業やマーケティングのノウハウを勉強し、ひとつのビジネスとして実践すれば、起業して成功することはそれほど難しくはないのです。月収30万~50万円くらいまでは、きちんとマーケティングを実践することで必ず実現できます。ですから、これから資格を取ろうと考えている人や資格で起業したいと考えている人は安心してください。
ただし、「そこそこ稼げる資格業」ではなく、起業1年目から年収1,000万円以上稼げる「金持ち資格業」を目指す場合は注意が必要です。
資格業で起業し、努力で稼げるのは「そこそこ」まで、つまり1日に十何時間労働したからといって、1年で2,000万円も3,000万円も稼げることはあり得ません。営業やマーケティングのノウハウを身につけ、資格業に生かしても、稼げるのは月収30万~50万円くらいまでの“プチ成功”です。しかも、この段階に達するのさえ、1年も2年もかかります。
つまり、どんなに努力をしてわき目もふらずに取り組んだとしても、「想像を超える」ほどの成果は出ません。いまや資格業の世界でも営業やマーケティングは当たり前のこと、そして勉強家が多いですから、そこそこの収益を上げる人も増えています。しかし、売上の限界がくるのは早いのです。
努力した結果、売上が上がったとしましょう。ひとりではじめると、月収70万~80万円くらいから、とても忙しくなります。寝る間も惜しんで働いて70万~80万円の月収で、経費を差し引くと、利益は半分も出ればいいほうです。土日祝日休みで40万円の安定したサラリーをもらうことと大差ないのです。むしろ、サラリーをもらうほうが安定していて楽かもしれません。
目指すべきは資格起業家
では、実際に「金持ち資格業」になる方法はあるのでしょうか?
その質問に、私は自信を持って「YES」と答えます。その方法こそが、「資格起業家」になることなのです。私は、この資格起業家を「資格で起業する人」ではなく、「資格を起点とした事業を行う起業家」として解説してきました。資格起業家になれば、資格の種類に関係なく、増収増益を上げることができます。
「どうしたら仕事を獲得できるのですか?」
本格的に営業やマーケティングのノウハウを学んで、実践すると、こうした質問をする人が増えてきます。特にこれから資格で起業しようという人に多いのですが、この発想自体がすでに間違っているのです。
まずは資格業の性質をしっかり押さえる必要があります。
資格起業家は、「資格業の仕事を獲得するためのビジネスは何だろうか?」と考え、その方法を実践しつつ、資格業の仕事を獲得できる増収増益のビジネスモデルを構築していきます。
「資格業の仕事を獲得するためには、広告費をかけることだ!」などと思っている人が多いのですが、増収増益を実現できる資格起業家は、営業活動をする前に、その前提となる「戦略」を考えるのです。
資格業では、正しい戦略をまずつくり、そこに向かって努力をすることが求められます。つまり、「正しい方向に向かって努力する」ことで、大きく成功できるというわけです。
「貧乏資格業」ではなく「金持ち資格業」になるためには、「資格起業家」として正しい努力の方向を決めなければなりません。
そのために必要なことは何かといえば、まず、「業界の常識」を消していくことでしょう。ぜひ一度、頭の中をリセットして、「資格起業家」として考えてみてください。
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横須賀 輝尚 パワーコンテンツジャパン株式会社 代表取締役/特定行政書士
士業専門の経営コンサルタント。2007年に日本では初めてとなる士業向けに経営スクール「経営天才塾(現LEGALBACKS)」を創設し、のべ全国3,000名以上の士業から相談を受け、相談件数は優に2万件を超える。主な著作に『会社を救うプロ士業 会社を潰すダメ士業』(さくら舎)、『資格起業BIBLE』(技術評論社)などがあり、25冊20万部超の著者。2023年から士業のための生成AI・ChatGPT活用研究を開始。最新刊『「ムダ仕事」も「悩む時間」もゼロにする GPTsライフハック』を2024年11月に技術評論社より刊行。週刊ダイヤモンド、毎日新聞などメディア掲載も多数。
X(旧Twitter) : @yokosuka_ai
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編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2025年11月10日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。







