忠告や警告に耳を傾けないトランプ大統領、高市首相の意思決定基準が不明

中村 仁

「昨日と今日で言うことが変わるトランプ米大統領はもう何も言うな」とマクロン仏大統領が警告したことがあります。今回も「イラン戦争の2週間の即時停戦」を言明した次の日、イスラエルによるレバノン爆撃を黙認し、停戦合意は吹っ飛びかねない事態です。

トランプ大統領 ホワイトハウスXより

さらにイランによるホルムズ海峡封鎖、海峡通行料徴収を批判すると思ったら、トランプ氏は「通航料の徴収と共同管理管理案」をぶち上げました。冗談にしても、国際海洋法違反の共犯者になるとの宣言に等しい。

トランプ氏は「すべての軍事目標(ミサイル能力の破壊、海軍の殲滅、核兵器開発の阻止など)を達成した」と豪語しているのですから、米国が率先して停戦して撤退すれば危機は去る。それもしない。イラン戦争は米国の限界を超え、失敗すれば、「イランは世界の第四勢力圏として地位を築く」との識者らからの警告も無視しています。そうなりつつある。

スケールは異なっても、日本の高市首相はトランプ大統領の相似形だと私は思います。高市首相が衆院選で圧勝した時、最大の意味は「日本で大統領型の首相が誕生したことにある」と指摘する識者が少なからずおりました。今ごろ「高市大統領」と評価したかれらは今、何を思っているか。

高市氏が「大統領型」を目指していることは確かにしても、トランプ氏と同様に、思考基準が曖昧なまま、外部からの警告、忠告を無視して独走する姿に危うさを感じます。

辛辣な高市評を繰り返している田中均・元外務審議官は「外交の本質を理解していない。外交はパーフォーマンスではない。外交の現場を知らず、パーフォーマンス作りにばかりに熱心だ」と批判しています。

「現在の外交の中心的な課題は、まず良好だったイランとの関係の維持だ。妙な形でトランプ氏に接近することはリスクが大きい。次は5月の米中首脳会談後の国際情勢を受け、日本がアジアにおける日本のプレゼンスをどう高めていくか。米国はリスクの多い国になった。過剰な対米依存は修正していく必要がある」などと、田中氏は警告しています。正論です。

高市首相が主宰する経済財政諮問会議で、「低金利下では財政拡張の余地がある」を自説とするブランシャール名誉教授(米マサチュッセツ工科大)を招き、見解を聞きました。同氏は必ずしも高市氏の積極財政を全面的に支持したのではないとの新聞報道がありました。高市氏は立腹し「誤報である」との不満をぶちまけました。

こんなことに立腹するようではいけない。経済学者なら、いろいろな条件、いろいろな前提を設け、幅広い見解を述べるでしょう。その見解のどの部分を重視するかで、記事の書き方は左右される。

ブランシャール氏は「不況期なら消費税率の引き下げは意味がある。インフレの今はそうではない」、「市場の信認をうるには、債務の推移を予測する独立した財政機関が必要である」(日経9日)などと述べました。

オンライン参加したロゴフ教授(ハーバード大)は「中央銀行の独立性が重要だ。市場の信認を得る上で『投資家がこれ以上に気にすることはにない』」(日経同)と話しました。

高市首相の唱える積極財政論に自信があるならば、主要国では日本だけにない独立財政機関を設け、「きちんとチェックしてもらうから安心してほしい」と約束すべきなのです。「日銀は政府の子会社」と位置付けた安倍・元首相の後継者を名乗る高市氏は、両氏の助言、忠告に耳を傾ける気持ちはない。市場は高市財政を懸念し、長期金利が上昇しています。

ホルムズ海峡封鎖で原油が高騰しているのに、補助金を出してガソリン価格を抑制する政策は間違っています。価格メカニズムを生かしたガソリン需要の抑制が必要な時に、正反対の政策をやっています。ガソリン価格の高騰を持続させることになる矛盾に気がつかない。

消費税減税でも、「消費税は安定財源、高齢化社会には最重要な財源」が常識です。経済学者、経営者、国民過半数が反対、懐疑的なのに、その声を聞こうとしていません。何を思考基準にして政策を考えているのだろうか。


編集部より:この記事は中村仁氏のnote(2026年4月10日の記事)を転載させていただきました。オリジナルをお読みになりたい方は中村仁氏のnoteをご覧ください。

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