なぜ投資しようとして投機してしまうのか

投資においては、資金の投入と回収という資金異動が投資の成果に大きな影響を与える。そこで、投資を投資対象の選択の問題に純化するためには、資金異動の影響を小さくする工夫が必要であって、資産形成で活用されている長期分散投資は、そうした工夫から生まれたものである。

greenleaf123/iStock

資産形成とは、金融庁が最重点施策として推進しているもので、国民の豊かな老後生活のための原資の形成を促すものだが、勤労期間は非常に長期に及ぶのだから、その間、毎月の所得から小口資金を投資していけば、投資対象の価格が常に変動するなか、高い価格でも、低い価格でも、小さな金額が継続的に投資されるので、取得価格の平均化が生じて、投資成果は投資対象資産そのものの収益率に接近するわけである。

投資対象の価格変動のもとで、上手に資金異動させれば、即ち、価格の安いときに買って、高いときに売れば、確かに利益がでる。しかし、世の常識では、それは投機と呼ばれていて、正統な投資の埒外にあると考えられている。なぜなら、投機は、賭け事の一般原理に従って、反復継続すると勝率が5割になって、胴元の寺銭の分だけ確実に損をするからである。寺銭は、投機の場合には、大量の売買に伴って発生する多額の取引費用のことである。

投機は、賭け事がなくならないように、非合理的な快楽の追求として、決してなくならないし、投機家の好き勝手にすればいいことである。しかし、資産形成を推進する金融庁の立場からいえば、投資は合理的であるべきなのである。さて、ここで問題は、合理的な投資においても、資金異動は様々な理由のもとで発生して、投資成果に影響を与えることである。典型的には、心理的動揺による売却である。

長期積立投資として資産形成を始めた人は、必ずや、途中で何度も心理的動揺に襲われるであろう。なぜなら、資産価格の大きな下落は常に生じ得るものであって、そのときには、自分の投じた資金額よりも資産の時価総額が低くなっている事態を見出すからである。ここで不安を感じて、資産形成を止めてしまえば、価格の低いときにも投資をするという長期積立投資の合理性に反することになるわけだ。

森本 紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
HC公式ウェブサイト:fromHC
X(旧Twitter):nmorimoto_HC
Facebook:森本紀行

コメント投稿をご希望の方は、投稿者登録フォームより登録ください。

コメント