人生で最も高くつく浪費は「見栄」

黒坂岳央です。

教育費、保険、旅行、ギャンブル。人生における無駄遣いの候補は多い。だがハッキリ言って、最大の浪費は「見栄」で間違いない。

節約本やYouTuberは「コンビニコーヒーをやめろ」「サブスクを見直せ」と言う。だがコンビニコーヒーを毎日飲んでもたかが知れている。見方を変えれば「コーヒーを自作する手間と時間を買っている」という合理的視点もあり得る。

だが見栄のコストは違う。その数十倍、場合によっては数百倍に達する。資産形成を本気で考えるなら、コンビニコーヒーをやめる前に、まず見栄をやめるべきだ。

nicoletaionescu/iStock

資産を削るのは見栄

資産とは、持ち続けることでリターンを生み出すもの。負債とは、持ち続けることでコストを発生させ続けるものだ。最大の問題は、せっせと負債を買っている本人が、勘違いして資産を買っているつもりになっている点だろう。

ハイブランドのバッグを例にとる。本当に好きで買うなら何も言わない。問題は見栄で買う場合だ。ハイブランドのバッグは軽いわけでも、収納力が高いわけでも、頑丈なわけでもない。ただロゴがついているだけだ。それで価格が跳ね上がる。

さらにそこで終わらない。そのバッグに見合う服が必要になる。靴も揃えなければならない。次のシーズンには新作が出る。見栄の維持費に終点はない。満足の閾値が他者の反応に連動して上がり続けるのだ。

自分も20代の頃、見栄に狂った時期がある。だから失敗経験からも断言できる。見栄は人生で最もコスト高で無駄な買い物だと。

まず、希少品を除けばハイブランドは基本的に誰でも買える。所有すること自体に希少価値はない。やることは財布からお金を出すだけ、パンを買うのと何も変わらない。「パンを買った!」と誇ってSNS投稿をする人はいないが、割高なバッグを買った時だけ誇るのは見栄の引力なのである。

誰でも買えるものを「これを持つことで自分の価値が上がった」と考えた瞬間、販売者側のマーケティングに取り込まれている。バッグよりLVMHの株に投じた方が、保有するだけでリターンを生む資産になる。

タワーマンションも同じ構造だ。最上階からの夜景をSNSで公開するために数億円を払う。だがその差額に見合う付加価値が実生活に生まれるかといえば、答えはほぼノーだ。管理費、修繕積立金、ローン。BSに載った巨大な負債が毎月キャッシュフローを侵食し続ける。

これが見栄消費の本質的な問題だ。一度の悪い買い物で終わらず、永続的に維持費がかかる負債を人生のBSに積み上げ続けることにある。

見栄消費につながるSNS

SNSを見ると、見栄消費との相性は最悪なまでに悪い事がわかる。

すでに実績があり、ビジネスで成果を出している人間はリアルをそのままコンテンツにできる。追加コストはゼロ、むしろその投稿が収益を生む。

一方、実績がない段階で「人目を引く投稿」のために外部コストをかけるのは、収益を生まない広告費を垂れ流すのと同じだ。インスタ映えスポット、話題のスイーツ、高級ホテルのラウンジ。本当にそれが欲しくて消費し、結果としてSNSに投稿するなら問題はない。だがSNS投稿ありきで消費しているなら、見栄に踊らされているわけだ。

SNSは実績のある者をさらに強化し、実績のない者からは資源を収奪する構造になっている。投資対効果が最も低いフェーズで、最もコストをかける。これほど非合理な資源配分はない。

見栄消費が多い人間の共通点は、自己評価の基準が外部にある点だ。自己評価が内部基準で完結していれば、他者の視線を買う必要はない。見栄消費の総量は、自己評価の外部依存度のバロメーターといえる。

見栄に見えて投資になるもの

ただし、すべての「他者からよく見られるための消費」を否定するのは雑な議論だ。判断基準はシンプルで、それが将来のリターンを生む資産か、維持費だけを垂れ流す負債かどうかだ。

最新スマートフォンを例にとる。iPhoneを1〜2年ごとに買い替えると、バッテリー消耗を意識せず動作も快適に保てる。リセールバリューを考慮すれば、古い機種にモバイルバッテリーをつけて延命するよりコストパフォーマンスが高い。仕事道具として使うなら特にそうだ。これは見栄ではなく合理的な設備投資といえる。実際、筆者はこれを実践している。

それからTOEICも同様だ。800点から900点へのスコアアップは、実務的な英語力の向上と必ずしも連動しない。だが採用市場において900点というスコアは、入社できる企業の選択肢を広げ、年収水準を引き上げる。

筆者は会社員時代、TOEICスコアが直接採否に影響する転職市場に身をおいていた。また、社会昇進や海外関連部署への異動にもTOEICは影響する場面を見てきたのでハイスコアが高収入を呼んでくると言い切っていいと思っている。

さらに高学歴も同じ論理で機能する。「高学歴でも賢いとは限らない」という意見自体は間違いではないが、学歴は直接実務に影響するというより、その前段階で最も効果を出す資産だ。

新卒採用の通過率、初対面での信頼構築。学歴という記号が持つ錯覚資産としての価値は、取得コストを上回るリターンを持続的に生む。だから高学歴というシグナルは獲得する価値が高い資産と言える。

これらに共通するのは、取得コストが有限で、その後リターンが継続するという点だ。見栄消費との決定的な違いはここにある。

見栄を捨てることを「質素な生き方」と混同する人がいる。だが違う。これは純粋にメリット・デメリットの話だ。

他者はあなたの車より自分の昼食を考えている。あなたのバッグより自分のキャリアを心配している。見栄のために払ったコストに対して、他者から得られるリターンは驚くほど少ない。見栄消費をした本人は1年後も覚えているだろうが、いいねを押した側は3日も覚えていない。空気にコストを払い続けている状態だ。

自己評価を他者に外注している限り、消費は終わらない。自分のBSを強化する支出か、他者の視線を買う支出か。この切り分けで出費の判断をするべきだろう。

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働き方・キャリア・AI時代の生き方を語る著者・解説者
著書4冊/英語系YouTuber登録者5万人。TBS『THE TIME』など各種メディアで、働き方・キャリア戦略・英語学習・AI時代の社会変化を分かりやすく解説。

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