ブルガリア議会選で親ロシア派の野党が圧勝

ソフィアからの情報によると、ブルガリアで19日に実施された早期議会選挙(一院制、定数240)では、前大統領のルメン・ラデフ氏が率いる親ロ派政党「前進するブルガリア」(PB)が議席の絶対多数を獲得する見込みだ。第一回目の開票結果によると、「前進するブルガリア」が約45%の得票率で140議席を獲得。ボリソフ元首相率いる中道右派「欧州発展のためのブルガリア市民」(GERB)の現政権与党は得票率約12 ~13 %に留まっている。

選挙結果を受けて取材を受けるラデフ前大統領 同前大統領Fbより

シェリャスコフ首相率いる保守派、社会主義者、ポピュリストからなる親欧米少数派政権は、汚職と機能不全に陥った司法制度に対する大規模な抗議デモを受け、デモ開始からわずか3週間後の昨年12月に辞任した。1月のラデフ氏の大統領辞任後、主要政党による組閣工作が失敗に終わったため、4月の前倒し選挙の実施となった経緯がある。今回の選挙は2021年以来、8回目だ。今年1月のユーロ導入後初の選挙だった。

今回の選挙戦では、汚職対策、停滞する国民経済、外交分野では「親欧米路線か親ロシア指向か」の選択等が焦点となった。なお、アルファ・リサーチによると、投票所閉鎖1時間前の時点で投票率は47%に達し、2024年10月の前回選挙の39%を上回った

議会の議席獲得に必要な得票率4%を超えた政党はそのほかに、自由保守改革連合PP-DB(我々は変革を続ける―民主ブルガリア)が12.1%、親ビジネス政党DPSが7.7%でそれに続いた。反欧州、反NATO、親ロシア的な主張を展開し、EUからの離脱や、ロシアに対する制裁への反対を訴えてきた第3党の国民的ポピュリスト政党「ヴァザラシュダネ」(再生)は、得票率4.3%で5位に転落した。共産党の後継政党の社会主義政党BSPは、議席獲得に必要な4%のハードルを越えることができなかった。

ラデフ氏(62)は暫定結果の報告を受け、「『前進するブルガリア』は決定的な勝利を収めた。これは不信に対する希望の勝利であり、恐怖に対する自由の勝利だ。究極的には、道徳の勝利と言えるだろう」と勝利宣言をした。同氏は、GERBと2位を争う親欧州改革派連合PP-DBとの協力に前向きな姿勢を示した。目標は司法改革であり、そのためには議会で3分の2議席、160票の賛成が必要となる。

元戦闘機パイロット、ラデフ氏は議会選挙に出馬するため、今年1月に大統領を辞任した。PBの勝利が北大西洋条約機構(NATO)および欧州連合(EU)への外交政策をどの程度変えるかはまだ分からない。

ラデフ氏はEU加盟による経済的メリットを認識している一方、ウクライナへのEU援助を批判し、対ロシア制裁に疑問を呈し、ロシアとの対話を求めている。選挙運動中、彼はモスクワとの関係改善とロシアからの石油・ガス供給再開を訴えた。

EUに対して、「ブルガリアは経済力を強化する強いヨーロッパの実現に向けて尽力する。EUは批判的思考と現実主義を必要としている」と述べた。腐敗対策では「ブルガリアの腐敗という沼を一掃するつもりだ」と強調している。なお、トランスペアレンシー・インターナショナルの腐敗認識指数では、ブルガリアはハンガリー、ルーマニアとともに、EU加盟国の中で最下位にランクされている。

ウクライナ支援問題に関しては、ハンガリー議会選挙で16年ぶりに政権を奪取した中道右派ティサ(尊重と自由)のペーター・マジャール党首と同様、「もし首相に就任すれば、ブルガリアはウクライナへの軍事援助に資金援助は行わないが、EUレベルでの決定を阻止することはない」と述べている。

ちなみに、ロシアの新聞各紙はラデフ氏を「ブルガリアのオルバン」と見なしている。「ラデフ氏の党が勝利すれば、ブルガリアの外交政策は変わるだろう。ソフィアはブリュッセルにとってブダペストと同じくらい『居心地の悪い』存在になる可能性が高い」と報じている。クレムリンの願望が反映した論評だ。

ラデフ氏自身は親ロシア派であることを否定しているが、旧冷戦時代から親ロシア傾向が強いブルガリアにとってモスクワの影響力拡大は最大の懸念事項だろう。ただし、ラデフ政権が発足したとしても、EUとNATOの加盟が問題視されることはないだろう。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2026年4月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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