【“表現の自由”の問題ではありません】
中道の重徳委員長が、ご自身のSNS動画において、次のように発信されました。
「本会議で我が党議員が質問したが、防衛大臣は答弁に立たなかった。議院運営委員会で決めたというが、これは議員の質問権を制約するもので、とんでもないことだ」…
— 衆議院議員 鈴木貴子/SUZUKI Takako (@_SuzukiTakako_) April 24, 2026
今週、国会で少々騒がしい出来事がありました。私もテレビの収録現場でその余波をもろに受けた一人ですが(苦笑)、せっかくなのでこの問題について整理しておきたいと思います。

野田佳彦議員と重徳和彦議員 立憲民主党HPより
そもそも何があったのか
今週の参議院本会議は、デジタル行政と個人情報保護法に関連する法案を審議するものでした。つまり、所管は総務大臣やデジタル庁であり、防衛大臣は本来出席する必要がない場です。
ところが中道改革連合が「防衛装備品の移転(武器輸出)問題について小泉防衛大臣に質問したい」と主張し、大臣の出席を求めてごね続けた結果、本会議の開始が遅延するという事態になりました。
議員運営委員会では、自民党・維新・国民民主・チーム未来など与野党の代表が「さすがに議案と無関係の防衛大臣を呼ぶのはおかしい」と合意していたにもかかわらず、です。
「言論封殺」という主張は成り立つのか
この件を受けて、立憲民主党の重徳国対委員長が「質問権の制約であり、言論の自由を踏みにじるものだ」とコメントを発表しました。
重徳さん個人は良識的な方だと思いますが、今回の件についていえば、この主張は的外れだと言わざるを得ません。
理由は明快です。
①議案との関連性がない デジタル・個人情報保護法を審議する本会議に、なぜ防衛大臣が出席しなければならないのか。質問したいテーマと議案がまったく噛み合っていません。
②与野党合意のプロセスを経ている 一方的に政府側が「答弁しない」と決めたのではなく、議員運営委員会という正式な場で与野党合意のうえで決定したことです。これを「言論封殺」と呼ぶのは、プロセスへの冒涜ではないでしょうか。
③午前中の委員会で質問できた その日の午前中には安全保障委員会が開かれており、小泉防衛大臣も出席していました。武器輸出について大臣に質したいなら、そこで十分できたはずです。
「絵を撮りたい」だけの国会質疑はもう通じない
結局のところ、本会議や予算委員会のようにテレビカメラが入る「目立つ場」に著名な大臣を呼びつけて追い詰める絵を撮る――これが野党の「定跡」だった時代は、正直なところもう終わっていると思います。
そのために国会審議が遅延し、官僚やスタッフに余計な負担をかけ、大臣が本来の公務に集中できなくなる。こうした光景を見て、有権者の気持ちが離れていくのは必然でしょう。
私が怒っているのは、こんなことを許したら、あらゆる閣僚が国会に常に縛り付けられて仕事ができなくなるということをわかってないように思えるから。閣僚がもっと仕事ができるようにする国会改革が必要です。 https://t.co/oe9ji4Qm6C
— 河野太郎 (@konotarogomame) April 24, 2026
河野太郎議員が「こんなことを続けたら大臣が国会に貼り付けになって他の公務ができなくなる」と強い言葉で批判しているのは、まさにその通りだと思います。
撤回と、建設的な国会運営へ
今回の件については、「質問権の制約」「言論の自由の侵害」という発言は撤回されるべきではないでしょうか。
中道改革連合には、議案と関係のない大臣を呼んで質問するという手法を改め、委員会など本来の場でしっかり政策論争を展開していただきたいと思います。それが結果的に、自分たちの評価にもつながるはずです。
国会改革を進めたいのは維新も同じです。だからこそ、旧来型の「国会劇場」的手法には、与野党を問わずきっぱりノーと言い続けなければならないと考えています。
編集部より:この記事は、前参議院議員・音喜多駿氏のブログ2026年4月24日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は音喜多駿ブログをご覧ください。







コメント
そもそも「議案と無関係な閣僚を本会議に呼びつける」という発想自体が、G7諸国の議会標準では成立し得ません。
英国下院では閣僚の答弁は厳格な輪番制(Order of Oral Questions)で運営され、議員は3日前までに書面で質問を提出し、抽選を経て初めて議事日程に載ります。
補充質問ですら「元の質問と同一主題」でなければ議長が即座に切り捨てます。
カナダ下院の質問時間は毎日45分の定例枠に隔離され、しかもこの時間中は議事進行動議すら禁止されており、遅延戦術が物理的に不可能な設計です。
フランスは2008年憲法改正で監視週と立法週をタイムブロックで分離、ドイツは長老会議が事前に時間配分を確定、イタリアも議事規則上「立法手続」と「監視手続」を別章で規定しています。
米国に至っては憲法の権力分立により、閣僚が本会議場に立つこと自体ありません。
つまりG7諸国は例外なく、「立法審議」と「行政監視」を時間的・構造的に分離し、その上で「関連性の原則(Rule of Relevance / Germaneness)」を議長権限で厳格に執行しています。
デジタル法案の審議に防衛大臣を呼べという要求は、英国・カナダの議長であれば即座に「Out of order」と一蹴されるレベルの明白な秩序違反です。
これを拒まれたから「質問権の制約」と叫ぶのは、議会における言論のルールそのものを誤認した主張であり、むしろ議運での与野党合意プロセスを踏みにじる行為です。
加えて、「担当大臣本人がいなければ説明責任が果たされない」という前提も国際的には通用しません。
英国・カナダでは政務次官や下級大臣による代理答弁が日常的に容認され、ドイツ連邦議会議事規則は他省庁閣僚や政務次官の代理答弁を明文で認めており、フランスには議会関係担当相という専門ポストまで存在します。
閣僚を国会に貼り付けて行政機能を麻痺させない知恵が制度化されているわけです。
河野氏の「大臣が貼り付けになって公務ができなくなる」という警鐘は、まさにこの国際標準と軌を一にしています。
野党の側に必要なのは、本会議という「絵になる場」を人質に取って無関係な閣僚を吊るし上げる旧来型の劇場型戦術ではなく、安全保障委員会という本来の場で武器輸出政策を緻密に追及することです。
実際、当日午前の安保委員会には小泉防衛大臣が出席しており、追及機会は十分に保障されていました。
それを使わず本会議でカメラ向けに大臣を呼びつけようとした時点で、目的は政策論争ではなく「絵撮り」だったと評価されても仕方ありません。
★日本も「関連性の原則」の明文化、立法・監視機能の分離、代理答弁の積極活用、議運合意の拘束力強化といった国際標準の改革に踏み出すべき時期に来ています。