「時間を売る努力」では年収は上がらない

黒坂岳央です。

「頑張っているのに給料が上がらない」
「会社から足元を見られて安く買い叩かれている」

こうした嘆きの声をよく聞く。確かに一部の悪質な会社は存在するが、正直こうした嘆きの多くは「年収の上げ方を知らないまま、ズレた努力をしている」と感じるケースが少なくない。残業、休日出勤など「時間を売る努力」は報われにくいが、多くの人がそれで年収が上がると考えがちだ。

だが、日本のみならず、世界共通で何十年も前から「年収を上げる方法」はほぼ確立されている。筆者は20代前半から高年収が欲しくて戦略的に活動したことで、転職のたびに年収アップを実現させることが出来た。これは時代が変わっても普遍的に通用する真理に近いと思っている。

どうすれば年収は上がるのか?具体的な方法論を取り上げたい。

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1. 希少人材になる

給与の本質は希少性の価格だ。誰でもできる仕事、短期間で習得できる業務は、市場に供給が溢れている状態を意味する。買い手(企業)優位の市場では、価格は最低ラインに張り付く。これは経済学の基本であり、「会社は守銭奴だ」といった感情論の入る余地はない。代わりがいくらでもいるのに、わざわざ給料を上げる会社はない。

最大の問題は、「自分には希少性がない」と自覚できる人が少ないことだ。「この仕事で10年のキャリアがある」と思っていても、その経験が10年分の高度なスキル、生産性など競合と差別化できる歴と証明出来なければ、市場からは「代替可能」と判定される。

誰も真似ができないレベルに1つのスキルを深掘りするのはなかなか難しい。どれだけ努力をしても、全員が大谷翔平選手のような一流は難しい。そこでより現実的なプラントしては、複数のスキルを掛け合わせることだ。

筆者の場合、「英語×IT×会計」の掛け合わせのスキルで年収を上げた。それぞれ単体では競合は多いが、3つが重なった領域での競合は非常に少なくなる。さらに1つ1つのスキルは一流レベルにまで引き上げずとも、掛け算のちからで総合力は高められる。

何より、今すぐ簡単にできる自己診断としては、求人募集を見ることだ。「年収800万円欲しい」と思ったら、実際に800万円で募集を出しているものを見て、必要なスキルを揃えればいいのだ。

2. 交渉カードを持つ

給与交渉において最強の武器は「いつでも辞めて他へ行ける」という事実だ。これはゲーム理論における交渉力の問題であり、オプションがない交渉者は常に不利な条件を押し付けられる。

現職以外に選択肢を持たない人間は、企業側から「現在の給与で働き続けることが確定している存在」と見なされる。昇給を要求しても、経営者は「代わりはいるし現状維持でOK」と判断する。これは意地悪でもなく、合理的な経営判断だ。

重要なポイントは、社内評価と転職市場での評価をわけて考えることだ。たとえば、英語を使わない会社で英語力をつけても評価されないが、グローバル企業や外資系へいけば市場平均より高値で買い取ってもらえる。

筆者がいた外資系では、非常に人材が流動的で入社初日から「この会社で係長職の実績を作って、3年後に課長職の仕事へ転職する」のように考える人が一般的だった。このように転職をステップアップのツールとして活用することで、年収は役職やスキルに連動して上がっていく。同じ会社で同じ仕事で働くだけでは給与は上がらない。

3. 利益率が高く、人手不足産業で働く

個人の能力以上に給与を決定づける要因がある。それは所属する産業だ。

労働集約型で参入障壁が低く、売上のほとんどが人件費や材料費に消える産業では、どれほど努力しても分配できる原資に上限がある。飲食・介護・運送の一部がその典型だ。

また、人余りの産業も同じく儲からない。その筆頭が「簡単な事務職、デスクワーク」である。ほとんどが非正規雇用で対応されており、また、今後はAIが台頭するので将来性は厳しいと言わざるを得ない。企業からすると募集すればいくらでも人が来るので、最低賃金以上出すインセンティブがない。

逆に人手不足の産業は年収が上がりやすい。最近だとブルーカラー職や観光業だ。筆者の母親は70代だが、毎年ドンドン昇給を続いているし、土木の仕事についている親族は高卒30代のうちに年収700万円を突破している。今は800万円を超えた。

会社はビジネスで得た利益を給与分配する構造になっているので、儲からない産業、人余りの産業では高年収は出したくても出せない。ケチとか守銭奴といった精神論ではなく、無い袖は振れないのだ。

4. 生産性を上げる

日本は労働生産性が低いと言われる。代わりにやっているのは残業による時間の切り売りだ。これをすると短期的には残業代で儲かるが、年齢不相応の生産性に落ちることで転職市場で買い手がつかない悪手となる。

今の時代、生産性を上げる最も合理的な手段は「AIを使いこなす」だろう。先日、AIエージェントの学者が登壇するセミナーに参加したが、多くのビジネスパーソンがいて、質問も活発に飛び交っていた。

「AIエージェントを使いたいが、越権処理が走るリスクを制御し、安全にだが積極活用したい」という意欲を持った人間がたくさんいたことが印象的だった。

昨今、AIの台頭で「AIや自動化ツールを使いこなせない人間は、仕事が遅い」というレベルで収まらなくなった。「AIの方がコスパがいい」とみなされる時代へと変わりつつある。

今後、ITに強い経営者ほど人間ではなく、AIを採用するようになるだろう。このトレンドが続けば、AIを活用できない生産性が低く、儲からない会社で安く働くしか選択肢がなくなっていく。だからこそ、AIを活用できるスキルを獲得するべきなのだ。

これまで取り上げたものは重み付けは同じではない。明確な優先順位が存在する。

最初に手をつけるべきは何と言っても「産業選択」だ。どれほど努力しても、利益率の低い産業では上限が低い。まずは儲かる産業へ移動するべきだ。そして次に「希少性の構築」だ。スキルの掛け合わせによって競合が存在しない領域を意図的に作る。残りも戦略的に揃えることで年収アップに貢献する。

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働き方・キャリア・AI時代の生き方を語る著者・解説者
著書4冊/英語系YouTuber登録者5万人。TBS『THE TIME』など各種メディアで、働き方・キャリア戦略・英語学習・AI時代の社会変化を分かりやすく解説。

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